町に着いたら、本屋をめざそう。Vol.007 weekend books(静岡県沼津市)
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【毎週水曜 16:00 更新】
知らない町に迷い込むのと、本屋さんで心を遊ばせるのは、どこか似ている気がする。
そして、旅先で出会った本の一節はなぜか、いつも以上に心に残ったりもする――。
全国の町の味わい深い本屋さんが、旅のお供におすすめの1冊を教えてくれる、リレー連載。群馬県吾妻郡(北軽井沢)の「麦小舎」の藤野麻子さんがご紹介くださったのは、静岡県沼津市のこちらです
更新日:2016/08/18
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お気に入りの本を手にして、
書き手の心の内側へと、旅をしてみる。
静岡県沼津市にある古書店『weekend books』の蔵書数は約2000冊。絵本や小説、詩集に写真集など、店に並ぶ本はどれも、店主・高松美和子さんのお気に入りだ。
「いろんな本を扱っていますが、エッセイや随筆が多いかもしれません。料理や旅などいろんなテーマを通して、書き手の心の内側に触れられることが楽しくて」と高松さん。
weekend booksのはじまりは2004年。もともとは、オンライン専門でスタートしたが、イベントなどに出展する内に、本を直接手渡したいという気持ちが高まり、2010年に実店舗をオープン。週末のほんのひととき、忙しい日常から離れて、本を読みながらゆっくり流れる時間を楽しんでほしい――店名には、そんな想いが込められている。
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本は、時代や世代を超えて届けられる
“永遠のラブレター”なんです
「本には色んなことが書いてあるでしょう? 言ってしまえば“紙の束”なんだけれど、開くとそこには、宇宙のことや世界中のこと、隣で起きているような身近なこと……。読んでいるとドキドキしたり、ときには悲しくなったり、いろんな想いや出来事がぎゅっと詰まっているから、ワクワクするんです」
今回、おすすめいただいた池澤夏樹さんの「きみが住む星」も、ページをめくるたびに胸が踊る一冊。
長い旅に出た主人公は、行く先々で恋人を想い、旅先で見た美しい風景写真とともに手紙を送る。高松さんにとってこの本は、大切な人を思い出す一冊でもあり、手紙に綴られた素直で温かな言葉は、お店を訪れてくれる人に向けて贈りたいラブレターでもある。
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とにかくお菓子がおいしい!と高松さんが大絶賛する「irodori」。季節のフルーツを使ったケーキを楽しみに、何度でも通いたくなる/クレマチスの丘には、緑いっぱいの敷地の中に3つの美術館や文学館、レストランなどが集結。クレマチスのほか、一年を通して色んな花が咲き誇る/明治~昭和の半ばまで保養地として使われていた「沼津御用邸」。現在は資料館となっている
子どもの頃に本を通して味わった
あのワクワクをもう一度
現在、敷地の2/3は古書を販売するスペース、残る1/3は展示室(ギャラリー)として定期的に企画展を行っている。参加するのは、絵画やお菓子、ドライフラワーなどさまざまな分野でものづくりに携わる個性豊かなクリエイター達。地元で活躍する人をはじめ、InstagramなどSNSを通して出会い、高松さんが直接ラブコールを送った人も。
「本を読むときのような胸が躍る感覚を、企画展からも感じてもらえたら嬉しいです」と高松さん。
なぜだか、たくさん本を読むほどえらいという風潮があるけれど、本を読むことはあくまでも娯楽のひとつ。この場所が、子どものような無邪気な心を取り戻したり、本と過ごす時間を楽しむきっかけになれたらと願う。
【今週の町と本屋さん】
静岡県沼津市/weekend books
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9月18日~28日、17名の作家によるさまざまな素材・手法を用いたブローチが並ぶ、今年3回目の企画展「ブローチ!ブローチ!ブローチ!3 -あなたの胸にそっと灯るちいさなひかりー」を開催。(詳しくは下記HP内「日記」「写真」より確認を)
TEL.055-951-4102
静岡県沼津市大岡509-1
営業/11:00~18:00
木・金定休
おすすめの一冊
『きみが住む星』
著:池澤 夏樹
写真: エルンスト・ハース
おすすめのお店
irodori
TEL.055-970-1666
静岡県田方郡 函南町仁田195
10:00~18:00(17:00LO)
木、第1、3水定休
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WRITING/MINORI KASAI