関東 日帰り 出会い旅 Vol.016 /野菜と大地に触れる旅(埼玉県比企郡小川町)【中編】
【毎週土曜 6:00 更新】
東京から90分以内の日帰り圏内。その円を広げてみると、そこにはとても豊かな自然や、新鮮な景色が広がっています。身近なようでまだ知らない「関東の田舎」で、地元を愛するみなさんと触れ合いながらの、楽しい週末旅はいかが? 今回は、美味しい有機野菜の有名な埼玉県の小川町へ。旅人は編集者/プランニングディレクターの磯木淳寛さん!
更新日:2016/11/12
■出向いた町/埼玉県比企郡小川町
池袋駅から東武東上線に乗って70分。埼玉県の西側に位置する小川町は、周囲を緑豊かな外秩父の山々に囲まれ、古くから小川和紙や小川絹、酒造などの伝統産業で栄えた町。最近では登山客やサイクリング客も多く、また、有機農業が大変さかんなことでも知られている。
■会いに行った人/八田 さと子(はった さとこ)さん
茨城県出身。女子栄養大学卒業後、有機農産物の流通会社に勤務。国際青年環境NGO A SEEDJAPANにて事務局長を務めた後、2008年よりオーガニックビジネスプランナーとして活動を開始。有機農業のご縁で小川町に移住して7年目。夫/子どもと半農半xの暮らしを模索中。Xは地域コーディネート、プランニング。小川町を拠点に埼玉西部エリアで食・農・環境・女性・起業をテーマに活動中。小川町移住サポートセンタースタッフ、女子栄養大学非常勤講師。
野菜に会うために、毎週末の日帰り旅
磯木:こんにちは、どちらからここに来られてるんですか?
畑を耕していた利用者:東京の板橋です。板橋からだとそんなにストレスなく通えるし、今月はサツマイモが豊作すぎたこともあって、毎週末に来てましたね。
磯木:毎週、日帰り旅をしているわけですね。でも正直なところ、この農園がもっと自宅のそばにあったらいいなって思ったりします?
利用者:いや、実は一度、自宅の近所で貸し農園を借りたことがあったんですけど、民家がすぐ隣で景色も良くなくて、やめちゃったんですよね。あと、家からほどよく距離があるくらいが、移動時間に日常とのオンオフが切り替えられていいなって改めて気づきました。
磯木:なるほど。それは非常に説得力があります。畑だけあればいいわけじゃないんですね。自分の家の隣に畑があってもスイッチは切り変わらないし、非日常感を得るというか。
利用者:そうそう!それが往復の時間をかけてでも来る価値のひとつですね。それでいて通いなれているのでホームタウンというような愛着もあるし、農家の先生もいて、顔なじみの友達と会うのも楽しいし。自分の居場所がある感覚ですよね。
磯木:受け入れられてるって感じるのはうれしいものですよね。
利用者:はい。それにここはNPOのみなさんが運営していて、私たちは畑で野菜を育みつつ、NPOは町を育んでいるというか。それもひっくるめて〝仲間″のような感覚で気持ちいいんです。
磯木:これだけ景色のいいところで言われると、もう、うなずくしかないですね(笑)。
磯木:ところで今はなにをしているところですか?
利用者:冬に向けてにんにくを植えようと思って、畑を整えていたところです。ちょっとやってみます?
磯木:え、いいんですか?どうやったらいいんでしょう?
利用者:ここをこうして…(レクチャータイム)。私にも初めて弟子ができました(笑)。
磯木:師匠、さすがです!にんにくは小さいし、そのまま植えるだけなので、鉢植えでも全然できますね。
利用者:そうですね。いいと思います。そうやって身近なところから畑に目覚めていく人も多いです。芽が出たら単純に楽しいし、かわいいですもん。
■今回訪れた場所
●『しもざと桜ファーム』
TEL.0493-72-0429、080-6633-9981 (NPO法人霜里学校 有機野菜塾事務局 担当:安藤さん)
埼玉県比企郡小川町下里824
1区画あたり3メートル×5メートル。利用料金は夏期4000円、冬期2000円。申込みは随時受付中。
■著者/磯木淳寛(いそき あつひろ)さん
食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター
自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに雑誌媒体などに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催。石巻復興町づくり情報交流館コンテンツ編集デスク。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。近刊予定として『「小商い」で自由にくらす~房総いすみのDIYな働き方』(2016年秋発刊予定)。