おもしろいこと、この地から。週 刊 東 北! Vol.015/川島小鳥さん撮影の「気仙沼漁師カレンダー2017」
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【毎週水曜 16:00 更新】
日本有数の漁場である港町・宮城県気仙沼。地元が誇る漁師たちの姿をおさめた「気仙沼漁師カレンダー2017」が11月1日(火)に発売に。撮影を担当したのは、オズマガジンの表紙撮影やオズモールで連載中の、写真家の川島小鳥さん。プロデューサーの竹内順平さんに、制作への思いや背景を聞きました。
更新日:2016/11/02
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休憩中にお団子を食べていたり、銭湯で漁の疲れを癒していたり。川島小鳥さんならではの、ほのぼのするカットが印象的。1600枚もの中から厳選した写真を使っている。(写真は「気仙沼漁師カレンダー2017」制作途中に使用した色校正)
「漁師は力強くてかっこいい。」
気仙沼の“宝”を伝えるべく生まれたカレンダー
2014年版から始まり、今回で3作目となる気仙沼漁師カレンダーを企画したのは、地元の女将たちが集う「気仙沼つばき会」。
「常に自然と向き合いながら、五感を使って全身全霊で生きる漁師たちは、気仙沼の宝物。その尊いほどの力強い姿を、少しでも多くの人に知ってもらいたくてカレンダーを作り始めました」と、つばき会の中心メンバーである斉藤和枝さんは言う。2作目である2016年版から、つばき会と親交のあった竹内順平さんがプロデューサーとして制作にかかわっている。
「このカレンダーは毎年、違う写真家さんにお願いしています。最初の年が藤井保さん、次が浅田政志さん、そして今回が川島小鳥さん。それぞれの視点で切り取られる漁師の姿はまさに三者三様で、その違いのおもしろさが気仙沼漁師カレンダーの特徴のひとつです」と竹内さん。
2017年版を撮影する写真家が小鳥さんに決まったのは、本人の申し出がきっかけだったそう。
「小鳥さんが別の仕事で気仙沼に行ったときに、つばき会の人に“僕もやりたい”と言ってくださって。小鳥さんの写真のかわいらしいテイストが、つばき会さんの漁師像とマッチするか未知数なところもありました。でも、積極的に関わろうとしてくれる人がいるのは気仙沼にとって幸せなこと。新たな魅力を持ったカレンダーになればという期待も込めて、小鳥さんと一緒にやらせていただくことになったんです」
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(上)川島小鳥さん(手前)。表紙の撮影風景/浅田政志さん撮影の2016年版(左)、藤井保さん撮影の2014年版(右)
小鳥さんのまなざしが引き出すやさしい写真に
気仙沼の人も、私たちも和まされる。
今回のカレンダーの撮影期間は、トータルで1週間ほど。自然相手に生活する漁師のアポを取るのに苦労しながらの撮影だったが、うれしい偶然がいくつも重なり、さまざまなカットがたくさん撮れたと、竹内さんは振り返る。
「漁師さんのお宅におじゃまできたり、貴重な女性の漁師さんと会えたり、銭湯に入っているところまで撮らせてもらえて(笑)。小鳥さんが出会いを引き寄せているような感じがしました」
2017年版に登場する漁師さんたちは、やさしそうだったりちょっとおとぼけだったり、なんだかみんなかわいらしい。見ていると心がゆるんでいくような、心地よい体温が写真に宿っている。
「たくましいだけではない、漁師さんの穏やかで愛らしいような部分も小鳥さんが引き出してくれました。写真を見たつばき会の和枝さんが、“みんないい表情で、震災なんかなかったみたいに見えるね”と言ってくれたのがすごく印象的で。
僕は震災以降の数年間、仕事で何度も気仙沼に来ていますが、5年経った町の状況が地元の人の理想に追いつかない部分もあって、みんなが少し疲れているように見えることもあったんです。だから、漁師の魅力を発信しながら、地元の人にも喜んでもらえるものを作るのが僕のテーマだった。気仙沼の人たちがカレンダーを見て、ホッとしたりやさしい気持ちになってくれたらうれしいですね。
それに、漁師さんたちの温かい表情は、カレンダーを手にとる方々の心も和ませてくれる気がします。小鳥さんにお願いできてよかったなと、心から思っています」
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出港する漁船を盛大に見送る「出船送り」や、女性漁師さんの笑顔まで・・・ 撮影中にはたくさんの出会いが!
地元を愛する気仙沼の人たちが
自慢できるようなカレンダーを10年は続けたい。
気仙沼の港には、北海道、富山、高知、宮崎など全国からさまざまな漁船がやってきて水揚げする。つばき会をはじめ町の人たちは、各地からやってくる漁師たちを厚くもてなし、出港時には心を込めて送り出す。そして、漁師たちはその恩義に応えるためにまた気仙沼に戻ってくるのだという。
「漁師カレンダーに出てくれている方々もそうですが、気仙沼の港に集う漁師は実は県外の人がとても多いんです。町の人は地元の漁師と同じように県外の漁師を大切にして、その人たちも気仙沼を第二の故郷として大切に思っている。いろんな人が出入りする港町だからこそ、人を受け入れてもてなす土壌があるんだと思います。
それに、気仙沼の人は地元を愛しているから「また来てね」っていう思いがとても強くて。漁師カレンダーを手に取ってくれた人たちにも、ぜひ気仙沼に遊びに行ってほしいです。おいしいものをいっぱい食べながら、町の人の温かさを味わってもらえたら」
この取材の3日後、2018年版の撮影をしにサンマ船に乗り込んだ竹内さん。
「きっと過酷な撮影になりますね。無事に帰ってこられるかな」。そう言ってちょっと心配そうに笑いながら、目線は次のカレンダーとさらに先を見据えていた。
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笑顔が素敵な竹内順平さん。糸井重里さんが率いる「ほぼ日刊イトイ新聞」でアルバイトした後に独立し、今はBambooCutとして、梅干しを広める活動もしている。カレンダーには、漁師さんやつばき会のコメントも掲載。(写真は「気仙沼漁師カレンダー2017」制作途中に使用した色校正)
【今月出会える、東北の素敵な風景】気仙沼 漁師カレンダー 2017
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「地元愛の強い気仙沼の人たちが自慢できるようなカレンダーをこれからも作り続けたい。そうそうたる方々に撮っていただいているから、10年後くらいには写真集にまとめられたら。それが今後の目標ですね」
漁師カレンダー/1冊 1620円
予約、注文は下記サイトまたはLoppiから。
■11/12、13(日)の中目黒村マルシェ で、竹内さんによる販売も。
■11/23(祝)と27日(日)、「ほぼ日刊イトイ新聞」のイベントスペースTOBICHI②で「漁師って、かっこいい!展」を開催。
WRITING/ASAMI KUMASAKA PHOTO/KATSUMI SATO (Calendar)