関東 日帰り 出会い旅 Vol.014 /衣食住を考える旅(群馬県前橋市)【人物編 後編】
【毎週土曜 6:00 更新】
東京から90分以内の日帰り圏内。その円を広げてみると、そこにはとても豊かな自然や、新鮮な景色が広がっています。身近なようでまだ知らない「関東の田舎」で、地元を愛するみなさんと触れ合いながらの、楽しい週末旅はいかが? 今回のナビゲーターは群馬県・前橋市、『アーツ前橋』学芸員の辻瑞生さん。辻さん自身に町との関わりを聞いてみると、前橋のことがもっとよく見えてきました。
更新日:2016/10/29
■出向いた町/群馬県前橋市
東京駅から新幹線に乗って80分。自然との距離が近く、町を見守る赤城山には手が届きそうなほど。また、明治時代から国内有数の生糸の生産地として栄え、現在は群馬県の県庁所在地でもある。詩人の萩原朔太郎が生まれた地としても有名。
■会いに行った人/辻 瑞生(つじ みずき)さん
アーツ前橋学芸員。2010年からアーツ前橋開館準備に携わり、展覧会企画と教育普及を担当している。主な展覧会に「服の記憶 私の服は誰のもの?」展(2014年)、「田中青坪 永遠のモダンボーイ」展(2016年)など。食をテーマにした「フードスケープ 私たちは食べものでできている」展を担当したことにより、日々の食生活を見直し中。趣味はキモノとスポーツジム通い。
新聞記者から学芸員へ
磯木:辻さんはもともと前橋出身?
辻さん:出身は群馬県内の桐生市というところです。前橋との関わりは、『アーツ前橋』の学芸員の仕事に就く前に、2年間前橋で新聞記者をやったのが最初ですね。その時は市政担当だったので、町ネタや議会や選挙を取材していました。
磯木:当時から町に関わっていたんですね。そこからどういう流れで『アーツ前橋』へ?
辻さん:記者として地域取材をしていたら、やっぱり私は地域の歴史や文化のことを知るのが好きだなってことに改めて気づいて。それで大学まで勉強していた着物の紋様とか歴史について、もう一度勉強したいなと思って大学院に進んだんですね。
磯木:なにより、大学に進む時点で着物について学ぼうと考えたというのがすごいです。
辻さん:実は実家が着物屋なので(笑)。大学院では日本の江戸から近代までの美術史も勉強して、そのあと高崎市の美術館で日本美術の学芸員として7年。そこできっちり、日本美術、日本画のこと、作品の扱い方、展覧会のつくり方、広報の仕方を学ばせていただきましたね。そのあと今の『アーツ前橋』に来ました。立ち上げからの学芸員を募集していたので、チャレンジしてみようと。
磯木:結構トントン拍子にまっすぐ歩んで来られた印象ですね。
辻さん:そうですかね??でも、まあなんとか運良くやってこられました。
磯木:はい、「まち」や「美術」をテーマにして、一本筋が通っているというか。ぼくはいろいろとバタバタしていたので(笑)
辻さん:いやいや、私も似たようなものです(笑)。新卒で前橋の新聞社に入ってますけど、その前にはいろいろ受けてなかなか採用してもらえなかったり。あの時もし東京に就職していたら今頃は全然違った生活だったかもしれないし、縁って大事ですね。そのおかげで今ここにいていろいろなことをさせてもらってるので、ありがたいです。
前橋は、アートと自然に触れられる町
磯木:正直なところ、前橋って東京から近いのに、あんまり東京から遊びに来るというイメージがないですよね。
辻さん:うんうん、わかります。私たちからすると前橋から東京ってすぐそこっていう認識で、なにか行きたいイベントとかあったらすぐに行ってしまう感覚なんですけどね。東京の人からはなかなか遠いイメージがあるのかも。群馬には赤城温泉郷とか、ほかにも秘湯と言われそうなところもいくつかあるんですけど、なかなか…、知られてないですかねえ(笑)
磯木:実際に来てみると、距離的には小旅行気分で本当にちょうどいいです。
辻さん:ですよね。この10月から展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』も行われるので、『アーツ前橋』に来て、そのあとに赤城山に行ったりとかもいいですよ(笑)
磯木:(笑)。赤城山では山から山への縦走もできるらしいですね。しかもそんなにきつくないらしくて楽しそう。
辻さん:はい。実は私、登ったことはないんですけど…。でも、私、いつも桜と柳の道を通勤してるんですけど、そんな普通の道も綺麗で好きですね。少しずつ若葉が芽吹いてくるのを見たり、季節が変わるのを感じたり。そういう自然の変化も楽しいです。
■今回訪れた場所
●『アーツ前橋』
2013年10月にオープンした前橋の新しい芸術文化の発信拠点。展覧会、イベント、地域アートプロジェクトを行う。
TEL.027-230-1144
群馬県前橋市千代田町5-1-16
開館時間/11:00~19:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館 水曜
2013年10月にオープンした前橋の新しい芸術文化の発信拠点。展覧会、イベント、地域アートプロジェクトを行う。
・展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』
「服の記憶-私の服は誰のもの?」(2014年)、「ここに棲む-地域社会へのまなざし」(2015年)に続く、「衣食住」をテーマとした展覧会の第3弾。食べることの未来をアーティストの表現を通じて一緒に考える展覧会。
会期:2016年10月21日(金)~2017年1月17日(火)
開館時間:11時~19時(入場は18時30分まで)
休館日:水曜日(11/23は開館、11/24休館)、年末年始(12/28~1/4)
観覧料:一般600円/学生・65歳以上・団体(10名以上)400円/高校生以下無料
■著者/磯木淳寛(いそき あつひろ)さん
食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター
自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに雑誌媒体などに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催。石巻復興町づくり情報交流館コンテンツ編集デスク。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。近刊予定として『「小商い」で自由にくらす~房総いすみのDIYな働き方』(2016年秋発刊予定)。