拝啓、メディア様。Vol.009「拝啓、民泊様。」MBS
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テレビ、ラジオ、Webに雑誌・・・旅ゴコロをいざなう番組の作り手に編集部が会いにいき、制作中のエピソードや思いをシェアするこの連載。今回は、10月23日(TBSは25日)スタートの民泊を題材にした新ドラマ「拝啓、民泊様。」を手掛ける谷内田彰久監督が登場します。
更新日:2016/10/27
どうして民泊を題材に?
ドラマ誕生の背景は?
「会社をリストラされた主人公の寛太(新井浩文)が、なにも知らずにノリで民泊を始めることで、たくさんのトラブルに巻き込まれていく深夜ドラマ。この民泊に外国人のゲストが訪れることで、寛太が本当の“おもてなし”とかは何かを見出していきます。
このドラマのひとつ前に撮ったのが、『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』という映画で、SNSサービスのFacebookと恋愛と旅行をテーマにした台湾の話でして。これを作り終えた時、旅をもっと深堀りしたいと思ったし、民泊の物件を投資物件だと騙されている人が続出しているっていうニュースが話題で。だから、次回は旅をテーマにホテルのようなものを題材にしたいと思ったんです。
それにドラマの企画段階の時期は、2020年の東京オリンピックに向けての宿泊施設不足から、民家に宿泊できる“民泊”や、宿泊施設を貸し借りできるアメリカ発のインターネットサービス“Airbnb(エアビーアンドビー)”も話題になっていて。それでドラマ制作のために民泊をやっている方に取材をしていくうちに、現在の民泊の法制度は日本が独自で作ったもので、“Airbnb(エアビーアンドビー)”とも旅館業とも違い、ただカギを渡して部屋を貸すだけになってしまっているとわかって。これでは外国人旅行客は満足できない。こうした法制度が生み出した考えのズレや問題点をドラマにしたらおもしろいだろうと考えたわけです。」
撮影中のエピソードを
こっそり教えてください。
「実はスケジュールなどなどの関係で、撮影期間は12日間しかなかったんです・・・(苦笑)。撮影スタートまでに脚本がどんどん変わっていったし、5日間の徹夜をするほど時間的にも余裕がなくて。しかも短期間で演者の黒木メイサさんと新井浩文さんには、本物の夫婦の空気感を出してもらわないといけない・・・。だけど、新井さんが『何、突然どうしたの?』という最初のセリフで、一気に空気が変わりました。例えば、身内に会ったときって、体の緊張感がほぐれる瞬間があるじゃないですか。僕はこれを“破顔する”と言っていますけど、人の体は緊張感から解放された時に位置が少し下がるんです。その瞬間を新井さんがたった一言のセリフで作りあげてくださった。本当にプロだなって思いましたね。ご本人にも伝えたら、『だってプロだもん』と(笑)。さすがですよね。
民泊は、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業の場合、旅館業法上の許可が必要なんですけど、“特区民泊”が認められている東京都大田区では、この規制が緩和されています。僕らもこの大田区に実際にある民泊を使って撮影しましたが、脚本があがった8月から撮影し終わった後の9月までの間に、利用者の最低宿泊日数が“6泊7日以上”から“2泊3日以上”といったように法律が変わったんです。だから、法律も理解しないまま民泊を始めた寛太(新井浩文)がそのことに気づかされるシーンでは、セリフをアフレコで差し替えたりと対応に追われました。でもそれくらい“生もの”を扱っているということ。社会的な問題を扱うドラマを作りたかったので、これはこれでいいかなとも思ってます。」
社会的なテーマを扱うドラマで
何を伝えていきたいですか?
「民泊を行う上で、泊まれればいい、不自由なことがなければいいっていうだけではもったいない。ホテルじゃなくて民泊を選ぶ外国人旅行客たちは、一緒にどこかに観光したり、日本の文化に触れたり、いつもの旅行以上の体験を求めていると思うんです。だからドラマでは、民泊のリアルな問題や現状、その民泊を始めて困難に直面する夫婦をしっかりと描くことで、日本人の持つ“おもてなしの心”を問いかけられたら。」
今週の旅番組・・・「拝啓、民泊様。」
2020年のオリンピックに向けて問題となっている“民泊”を題材に、黒木メイサと新井浩文がダブル主演で夫婦役を務める新ドラマ。会社をリストラされた山下寛太(新井浩文)が、妻の沙織(黒木メイサ)に言い出せないまま民泊ビジネスをスタートするが、さまざまな問題に巻き込まれていく。
MBS
10月23日スタート
毎週日曜 深夜0:50~
TBS
10月25日スタート
毎週火曜 深夜1:28~
出演:黒木メイサ、新井浩文、中野裕太、今野杏南、韓英恵、鈴木正幸、村上淳ほか
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TEXT/MAKI FUNABASHI