『明日、どこへ歩いてく?』Vol.010 写真家・かくたみほさん/フィンランド
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【毎週火曜 16:00 更新】
古くヨーロッパには、「靴は行きたいところに連れて行ってくれる」ということわざがあります。
オズモールを作るクリエイターの原点となる、地元の大切な場所を、お気に入りの靴とともに教えてもらいました。
地元で暮らし、大切にする原点。その土地への思い――。読者のみなさんと、シェアしていきます。
第10回は、写真家・かくたみほさんが通い続ける「フィンランド」のお話です
更新日:2016/10/04
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フィンランドに縁ができたのは、10年前のこと。
自然の風景に魅せられました。
フィンランドは10年前の秋、閑散とした時期に仕事で初めて訪れました。
(日本とはスピードが違い、10月末から雪が降るのでもう冬です)
でも、ガイドブックで見た美しい写真と全然違って、がっかりして・・・
その時、現地の人が6月が夏で綺麗だからまたおいでと言ってくれたので、翌年、プライベートで行きました。
すると、陽が長く、涼しくて人々ものんびりしていて、とても雰囲気がよかった。
治安もいいので、カメラをぶら下げたまま歩けるし、夏は夜まで明るいのでたくさん写真が撮れる。
この土地は、ほぼ植林の森なので、風通しのよい明るい森ばかり。(山は数個しかない。)
湖、島も本土も岩盤層という景色が好き。鳥がたくさんいて、ウサギやハリネズミ、リスが居て、まるで絵本の中のよう。島やラップランドなどは、ムーミン谷の中のような風景の世界。
首都ヘルシンキから数分で、自然だらけの島やハイキングができるような国定公園、無数の湖が楽しめます。
夏は夜まで明るく、ずっと写真も撮れます。
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(上)ロバニエミから長距離バスで北上し、イナリ湖の南のほうで泊まったコテージからの風景。(中)トナカイファームの庭にあるサウナ小屋の近くに出没。トナカイは全て放牧されているので野生はいない。(下)森を歩いて水辺を発見した時に太陽が見えて嬉しかったときの1枚。
真夏の太陽と白夜が撮りたくて、水平線や地平線が開けたイナリ湖へ。
イナリの中心部は何度か行ったので、今年の夏、はじめて少し離れた宿を拠点に作品撮りをしました。
地図を見て太陽の方向を考えて、泊まる場所を選びます。
夏は白夜なので、夜中~明け方の光がきれいな時間に撮りに出歩くため、宿のロケーションは重要。
トナカイファームの広大な敷地内に大小の池が4個ぐらいあり、裏が大きな湖になっていました。
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(上)23時ぐらいの太陽。この真夜中の太陽を撮るために今回、ラップランド地方に作品撮りに訪れた。水面が鏡面になる凪いだ状態と、朝もやが水面から沸き立って幻想的。(下)22時~翌朝4時まで歩き続けて出合った枯れ木がハート形に見えて、撮影。
季節によって、いろんな色のマジックタイムに出会えます。
イナリの中心部から離れた、地図でみると森と湖しかない、ひっそりとした自然が満喫できるエリア。
この場所では、人間になかなか会わないほどです。でもそんな場所で便利さよりも自然を愛する人々が普通に暮らしています。
冬は雪深く厳しいけれど、極夜で3~4時間の明るい間は太陽がずっと低いので、空がブルーで雲がピンクになって、撮影用語でいうところのマジックタイムがずっと続いて美しいです。
また、夏は”沈まぬ太陽”となり、夜中じゅう西陽の状態がずっと続き、やはり光が美しい。
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晴れていても履いている、「日本野鳥の会」の長靴。
私のよく行く湿地は5~10cmぐらいの田んぼのような、ぬかるみ。水苔がふかふかしててなんとも気持ち良いです。
夏のイナリは朝晩、10度ぐらいで寒くなるので、少し大きめのサイズを選び、毛糸の靴下など厚手のものを履いて暖かくして使っています。折りたためるので旅行には便利ですし、筒部分が薄いので、他の長靴よりも軽量なんです。
【 I LOVE MY TOWN & PLACE! 】 フィンランド
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フィンランド・・・首都ヘルシンキまで直行便で9時間の”一番近いヨーロッパ”。
「洗練されて長く使えるデザインのものが多いので、クリスマスプレゼントにアンティークショップで見つけたものをプレゼントしたりと、物を大切にされています。
一方で、旅など体験することにお金を使っていたりする、消費社会ではないところに惹かれています」とかくたさん。
※10/8(土)13:30~15:00、原宿 SO-SPACEで開催の「ココハナ*フォトフェス」にてフィンランドの写真についてのトークを開催(有料、2000円)。
かくたみほ 写真家
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1977年三重県鈴鹿市生まれ。スタジオLOFTスタジオマンを経て、写真家小林幹幸に師事後独立。株式会社オフィスカクタ設立。