おもしろいこと、この地から。週刊東北! Vol.009  福島の村から、手渡されるバトン

おもしろいこと、この地から。週刊東北! Vol.010

【毎週水曜 16:00更新】
石けんやバスボムをはじめ、かわいらしく人にも優しい自然派コスメを扱う「LUSH」では、2016年より東北を応援するアイテムを展開している。9月に登場した「KNOT WRAP キモノ」は、福島の仮設住宅で暮らすお母さんたちの思いが込められた、キュートな風呂敷だ。

更新日:2016/09/21

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LUSHの商品をKNOT WRAP キモノで包むとこんな感じ。その場で包んでもらえるほか、HPで包み方も紹介

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昔ながらの柄もあれば、モダンなものまで、一枚ずつ色や柄、生地の手触りも違う

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敬老の日までの期間限定で表参道店に飾られていたKNOT WRAP キモノのパッチワーク・タペストリー。これが気になって「なんのお店なの?」と初めてLUSHを訪れた人も

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お気に入りのKNOT WRAP キモノを手にするバイイングの黒澤さん(右)とスタッフの佐藤さん(左)

一つひとつ違う。一つひとつ手作り。
LUSHがつなげるKNOT WRAPというバトン。

「LUSH」が手がける「KNOT WRAP」は、日本の風呂敷をヒントに誕生したアイテム。江戸時代に誕生したといわれる風呂敷は、贈り物を包む道具としても愛用されてきた。贈り物を受け取ったら、風呂敷や容器を空のまま返すのではなく、お菓子などを包んで相手に手渡す――かつての日本では、こんなやりとりが日常的に繰り返されていたという。
 この「KNOT WRAP」には、そんな古き良き日本の文化をいま改めて伝えたい、そしてLUSHのアイテムを包んで、大切な人に贈るときにも活用してもらいたいという願いが込められている。

 そしてこの秋に新しく登場したのが、福島県飯舘村の仮設住宅を拠点に活動する女性グループ「いいたてカーネーションの会」とのコラボレーションによる「KNOT WRAP キモノ」シリーズ。
素材に使われているのは、その名のとおりビンテージの着物。一枚一枚、手作業で糸をほどいて水洗いし、裁断してミシンをかけて――と、ていねいに作られている。ポップな花柄に昔ながらの格子柄など、色とりどりのデザインが揃うが、ほとんどが一点もの。「○○さんはこの柄のイメージかな…。でも、こっちも似合いそう」なんて、贈る相手の顔を思い浮かべながら選ぶのも楽しいひととき。

 すべて手作りのため大量生産するのは難しく、現在はオンラインショップと、原宿表参道店など都内4店舗限定で展開している。


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「いいたてカーネーションの会」のメンバー。
黒澤さんは飯舘村に行くたびにお母さんたちに会えるのが楽しみだそう。お母さんたちも黒澤さんを実の娘のように可愛がってくれていて、帰りがけにはいつもたくさんお菓子を持たせてくれたのだとか。

福島県飯舘村の仮設住宅で暮らす
お母さんたちと一緒に生み出したカタチ。

 LUSHと「いいたてカーネーションの会」の出会いは、2016年の3月に遡る。
「南相馬市で有機栽培されている菜種油を使った石けん「つながるオモイ」の発売をきっかけに、同じ福島で活動をする「いいたてカーネーションの会」の存在を知りました。どんな方が作っているのか知りたくて、まずは皆さんに会いに行ったんです」と飯舘村を訪れたのは、LUSHのアイテムに使う原料をはじめ買付を担当する黒澤千絵実さん。
「テレビなどで仮設住宅を目にしたことはありましたが、実際に足を踏み入れたのは初めてでした。それまで、仮設住宅で生活をされている方達はたくさん苦労されているから、表情も暗いのでは・・・と勝手なイメージを抱いていたのですが、皆さんびっくりするほど笑顔が明るくて。本当のお母さんのように温かく出迎えてくれたんです」

 もともとは、避難生活を送る中で心を閉ざしてしまったおばあちゃんを励ます目的でスタートした「いいたてカーネーションの会」。とある取材をきっかけに活動が注目されるようになり、全国から古い着物が送られてきた。どれも持ち主が大切に着てきたことがわかる上質な着物ばかり。たくさんの人の思い出が詰まった着物を使ってなにかできないか・・・という思いから「までい着」と呼ばれる作業着づくりが始まった。「までい」とは飯舘村の方言で「ていねいに」「心を込めて」などを意味する言葉だ。

 住み慣れた家を失い、不便な暮らしを強いられる中でも「笑ってないと、やってられないからねぇ」と励まし合い、助け合いながら暮らしているお母さんたち。黒澤さんの心は「この人たちと一緒に、ものづくりをしたい!」とすぐに固まった。


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季節ごとに発行されるカタログ。現在配布されているカタログではKNOT WRAPをピックアップ

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定番の「KNOT WRAP」。カラフルでアートなデザインがたくさん

「使うひとの数だけ、思いが広がるといいな」
長く使い込みたい、1枚に出会おう

 最も苦労したのは、風呂敷の大きさをどうするか。着物は幅が限られているため、一着の着物から、LUSHの風呂敷の通常サイズである70cm×70cmの布を取るのは難しいのだという。
「お互いに意見を出し合って、何度も試作をしてもらいました。その中でカーネーションの会の皆さんが「2枚の布を縫い合わせたらどう?」と提案してくれたんです」

 そうしてできあがった風呂敷は50cm×50cmサイズ、ボディクリームなどの小さなアイテムを包むのにちょうどいい。
 バッグでも袋でもなく、風呂敷にこだわった理由を「シンプルな四角い布だからこそ、アイデアしだいでどんな使い方もできますよね。手に取った人が自由に、自分なりの“KNOT WRAP”という作品を仕上げて楽しんでほしいと考えているんです」と黒澤さん。様々なものを包むだけでなく、端と端を結んでエコバッグとして使ったり、ヘアバンドとして楽しむおしゃれ上級者も。
「一つひとつのモノには、野菜やフルーツなど原材料となる素材の作り手さんがいて、それぞれが想いを込めて作っているということ。ストーリーを知ると、モノへの愛着も湧きますよね。
今回の“KNOT WRAP キモノ”を通して私が感じたのは、着物は思いをつなぐバトンなんだなということ。大切に使われてきた着物が、飯舘村のお母さんたちの元へ集められて、形を変えて色んな人へ届けられて・・・今度は私たちLUSHからKNOT WRAPという形で、またたくさんの人に届けられたら」

 着物はとても高価なものだったからこそ、使い古されたら子供用や綿入れ(ちゃんちゃんこ)にリサイズし、さらに座布団や巾着にして・・・と形を替えて大切に受け継がれてきた。
 作り手から使い手へ、使い手からまた次の使い手へ。バトンは長い時間をかけ、でも着実に、たくさんの人の心をつないでいる。


LUSH原宿表参道店

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03-5413-5131
渋谷区神宮前1-13-11大西ビル1階
営業/11:00~21:00
無休
※KNOT WRAP キモノは、このほか、池袋駅前店、新宿駅前店、渋谷駅前店の各店舗およびオンラインでも取扱いあり。限定品のためなくなりしだい終了。

WRITING/MINORI KASAI  PHOTO/MANABU SANO

※記事は2016年9月21日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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