おもしろいこと、この地から。週 刊 東 北! Vol.008/東京で、東北の海と人を感じる「漁師酒場」【後編】

おもしろいこと、この地から。週 刊 東 北!

【毎週水曜 16:00更新】
東京・中野にある〈宮城漁師酒場 魚谷屋〉。宮城の旬の魚介が味わえるこの店には、「おいしい」を介した温かなコミュニケーションを求めて、夜な夜な人が訪れる。ある日の魚谷屋の、扉を開けて出会えた光景は?

更新日:2016/09/17

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自家製のホヤの塩辛をナムルとからめ、コチュジャンソースでいただく「ホヤのビビンパ」。ホヤ漁師の渥美さんが考案した/魚の絵がかわいいキッチンの壁は、宮城の牡鹿半島のカキの殻を混ぜた漆喰塗りに。地元の木材を使ったカウンターやテーブルなど、店にはあちこちに宮城がちりばめられている

「どうしてここに来たの? 何を味わって、何を話したの?」

8/25、石巻よりホヤ漁師の渥美貴幸さんが来店。彼の獲ったホヤを味わうイベント「ほやリンピック」が開かれた。
この日、集まったみなさんに、「どこから、どうしてここに来たの?」と今の思いを聞いてみました。





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一ノ蔵や平孝酒造など、魚谷屋で扱う宮城県の日本酒の酒蔵マップ/食の担い手の育成にも力を入れていくという店長の魚谷さん

「おいしいホヤが食べられると聞いて来ました!」
田山圭子さん・笹田優さん(お客さん)

笹田さん「ホヤが大好きで、同僚の田山さんに誘われて初めて来ました。ホヤ刺身、ホヤ酢、ホヤ塩辛、ホヤビビンパ…、ホヤ尽くしの料理を味わっています。全部本当においしくて大感動。「ほやリンピック」、最高のイベントですね! 作っている渥美さんに会えたこともすごくうれしかったです。今日でますますホヤが好きになりました」

田山さん「魚谷屋さんに来るのは3回目です。私はホヤによる東北の振興を目指す「ほやほや学会」の会長をしていて、このイベントも楽しみにしていました。魚谷屋さんの一番の価値は、1次産業の漁師さんたちと会って、お話しして、「おいしい魚を食べてほしい!」というアツい気持ちにじかに触れられるところ。ここは「東北の海と東京をつなげてくれる貴重な場」だと思います」

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ホヤ尽くしを楽しんだ田山さん(左)と笹田さん(中)。ホヤのオブジェをかぶり、作り手の渥美さんとパチリ

宮城漁師酒場 魚谷屋

田山さん(前列左端)がほやほや学会企画の「ほやツアー」で訪れた、宮城県牡鹿郡女川町・あがいんステーションにて。ピースの代わりに、みんなで”ホヤサイン”で記念撮影

「みなさんの笑顔が僕の励みになります」
渥美貴幸さん(ホヤ漁師)

渥美さん「今日は僕の育てたホヤをみなさんに楽しんでいただく『ほやリンピック』のために、人生初の東京出張です。基本的に僕ら漁師は、水揚げして出荷したら終わり。消費者と交流することはほとんどありません。だから、たくさんの人が集まって、しかも東京の人がみんなで僕のホヤを食べている光景がなんだか不思議で(笑)。

みなさんの笑顔や『おいしかった!』というダイレクトな反応が、自分にとって何よりの力になると実感しました。漁師を続けてきて本当によかったなあと。

魚谷屋がなかったら、こんな素敵な体験と出会うことはできなかった。僕らの気持ちを汲んで、この場を作ってくれた魚谷さんの熱い思いが、とてもうれしいです。一緒にこの店を盛り上げて成功させたいです!」

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この日の主役である渥美さん。イベントなどを通じてファンが多く、渥美さんに会いに大勢が来店した

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石巻にて。ホヤ漁に出る渥美さん/photo by Funny!!平井慶祐

「これからも漁師と消費者をつなげます!」
長谷川琢也さん(Yahoo! JAPAN)

長谷川さん「渥美君と一緒に石巻から来ました。僕はフィッシャーマン・ジャパンの一員としてプロモーションや企画などをしていて、魚谷屋の立ち上げから関わってやってきました。

魚谷屋は『生産者である漁師と消費者をつなげたい』という思いから始まったお店。島国が誇る漁業や漁師について発信する拠点を東京に持てたことは、とても意味があると思っています。今日のように自分がお店に立つときは、漁師の思いや魚のウンチク、石巻の状況などを、とにかくお客さんに伝えます。人は“脳みそで食べる”とも言われているから、その食材の背景を想像できることは大事なんです。それは漁師も同じで、消費者の顔が思い浮かぶと励みになるんですよね。

この店で漁師を応援する人同士がつながって新しいことが始まることもあって、そういう場面を見ると僕もやる気が出ます!」

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関東出身の長谷川さん。震災ボランティアをきっかけに、東北でさまざまな活動を続けている

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長谷川さん(前列左端)と、「フィッシャーマン・ジャパン」の若手漁師たち。photo by Funny!!平井慶祐

「生産者の気持ちに、自分なりの仕事で応えたい」
西村謙一さん&大場彩香さん(料理人&スタッフ)

西村さん「魚谷さんとは「素材の味を最大限にいかす」という食への思いが一致していたので、ぜひ一緒にお店をやりたいと思いました。

魚谷屋の食材は、自分より若い世代の漁師さんたちが一生懸命生産したもの。彼らひとりひとりの思いに、おいしい料理で応えたいと思っています。今日も、最高のホヤをみなさんにおいしく味わっていただくことに集中して料理しました。自分は口ベタなので、魚についての詳しい説明は魚谷さんにお任せしています(笑)」

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(上)向かって左が、和食の道30年の西村さん(中)魚谷さんや若手の料理人が共に、最高の味をめざす(下)元気な笑顔の大場さん

大場さん「以前は別の飲食店で働いていたのですが、故郷である宮城の食材を扱っていることと魚谷さんの人柄に惹かれて、ここに来ました。魚谷屋には、生産者の方々の“気持ち”ごと食材が送られてきます。それをきちんと受け取り、丁寧にお客様に説明してお伝えしていくことが、私たちの役割だと思っています。

これからは、お米や野菜、郷土料理なども含めて、宮城らしさをもっと出していきたいですね。宮城の食べ物で、ここに来てくれた方の食を少しでも豊かにできたらうれしいです」



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魚谷さん(右端)が石巻で、地元のお母さんや仲間と触れ合った際のひとコマ

いろいろな人が集まって
おいしさも倍になる

秋にはサンマやブリ、11月になれば三陸特産のカキがお目見えするという魚谷屋。宮城の海から届く旬の魚介が、生産者とその仲間の思いをのせて、日々ここから発信されていく。
今日も明日もきっと、さまざまな場所から人が訪れて、楽しい夜が繰り広げられるはず!

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【今週出会った、東北の素敵な場所】宮城漁師酒場 魚谷屋

宮城漁師酒場 魚谷屋

カウンター席と一体になったような「オープンすぎるキッチン」で、料理人の包丁さばきを楽しめるのもウリ!

TEL.03-6304-8455
東京都中野区中野2-12-9高田ビルB1F
17:00~24:00(23:00ラストオーダー)
日・祝定休
アクセス/中野駅より徒歩3分

WRITING/ASAMI KUMASAKA  PHOTO/YUKO CHIBA

※記事は2016年9月17日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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