関東 日帰り 出会い旅 Vol.006 /自然を体で感じる旅(神奈川県相模原市緑区・旧藤野町)【後編】

関東 日帰り 出会い旅

【毎週土曜 6:00 更新】
東京から90分以内の日帰り圏内。その円を広げてみると、そこにはとても豊かな自然や、新鮮な景色が広がっています。身近なようでまだ知らない「関東の田舎」で、地元を愛するみなさんと触れ合いながらの、楽しい週末旅はいかが? 今回は自然の息づく場所・神奈川県の旧藤野町へ。旅人は編集者/プランニングディレクターの磯木淳寛さん!

更新日:2016/08/27

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■今回出向いた町/神奈川県相模原市(旧藤野町)

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新宿駅から電車で約80分。すぐそばにある登山客世界一の山、高尾山の影に隠れているものの、そのわずか先にある旧藤野町エリアも開放感を求めるハイキング客には人気の場所。また、都心に通える距離感と豊かな緑は多くの移住者も惹きつけてきた。訪れてみると、そこには自然と調和して暮らす人々の姿があった

■会いに行った人/平川 友紀(ひらかわ ゆき)さん

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ストーリーライター。1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごす。体調を崩したことをきっかけにマクロビオティックを学び、持続可能なライフスタイルを模索し始める。2006年に神奈川県の里山のまち、神奈川県相模原市(旧藤野町)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らし、コミュニティを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。

健康な森を守っていくための間伐とツリーハウス

お昼を頂いたあと、まんぼうが案内してくれたのはさらに山深いエリア。そこには、山を間伐することで手入れし、さらにその間伐材でツリーハウスを作ってしまった人がいた。この山は「Mossrock山(もすろっくやま)」と名付けられている。

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まんぼう:「Mossrock山」の代表、モンゴルさん(石毛了一さん)です。

モンゴル:こんにちは。

磯木:旧藤野町はニックネームが個性的ですね(笑)。「Mossrock山」はどんなところなんですか?

モンゴル:一言で言うと、森の中のツリーハウスに泊まれて、間伐体験ができる場所です。

磯木:この山の中にツリーハウスがあるんだ!夏は涼しそうだし、最高でしょうね。間伐体験はどういうものですか?

モンゴル:日本の森って杉などが植えられた人工林が多いんですけど、その後外国の安い木材が多く流通したことでほとんど手入れされなくなってしまった現状があります。そんな森では木々がひしめき合って、木はやせ細っていくし、水分を維持できなくなったりと、森自体が不健康な状態になるんですよ。

磯木:なるほど。そこで、木を適切に伐っていくことが必要ってわけだ。

モンゴル:そう。それが間伐です。間伐すると森に光と風が入るようになるので、植物がどんどん新しく生まれ変わります。さっそく森に入ってみますかね。

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ずんずん森に分け行っていくモンゴルさん。

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最初に作ったというツリーハウス。ここは見晴台として使われている。

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宿泊できるツリーハウス。ここはワークショップ形式で仲間や参加者らと約1年半かけて作ったそう。

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ツリーハウスの中。8畳~10畳くらいの広さがある。

モンゴル:こちらが泊まれるツリーハウスです。

磯木:わー、想像してたより全然大きいし広い!しっかり木の上に浮いてますね!これ、中もおしゃれですごくかわいいですよ。ここに泊まりにくるお客さんはどんな人が多いですか?

モンゴル:圧倒的に女性が多いですね。つい先日も女性3人組が来てました。こんなところなんですけど、近くに温泉もあるし、おいしいごはんを食べられるところもあるからかな。そうそう、このツリーハウスもここの間伐材で作りましたよ。

磯木:なんでもできちゃうんですね。間伐材をちゃんと生かしていて、活動そのものをツリーハウスを通じて伝えているというのが素晴らしいです。

モンゴル:ええ、それがここに来た当初からやりたいことでしたから。泊りに来ていただいたお客さんは間伐体験もできちゃいます。もしよければちょっとやってみます?

皮むき間伐「きらめ樹」を体験!

皮むき間伐「きらめ樹」を体験!

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木々が生い茂ると森が暗くなってしまうので、間伐が必要になる。

モンゴル:ぼくがやっているのは、木の皮をむいて、そのまま放置することで木を自然と立ち枯れさせるという間伐方法です。

磯木:木は芯ではなく外側の部分で水分を土から吸い上げるので、皮をむくだけで枯れていくんですよね。

モンゴル:そうですそうです。

磯木:でも、普通はチェーンソーで木を倒すものだと思うんですけど、あえて皮むき間伐をするメリットって?

モンゴル:ずばり、誰でも簡単にできるってことです。ウチでは今までで一番小さかった参加者は3歳でした。なんといっても、木の表皮に鎌で傷をつけて、竹べらでむいた皮を引っ張るだけだから。

磯木:へえ~。

モンゴル:その約1年半後には木が枯れた状態になるので、それをぼくがチェーンソーで伐って運ぶんですけど、木の水分が抜けているからすごく軽くなっています。通常は間伐しても木を運び出すのが重くて大変ということで誰も山を手入れしなくなって、結果、荒れ果てているというのが現状ですからね。皮むき間伐をすると、2mくらいにカットすれば人力でも運べちゃいます。ではさっそくやりますか!

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鎌を使って杉の木の表面をむく。あまり強い力を入れている様子もありません。

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竹ベラを使って、傷をつけたところから根の部分まで下向きに皮をむく。

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「せーの!」の掛け声とともに、一気に上に向かって皮をむいていく。

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ペリペリーっと音を立てて、こんなに上部まで皮がむけました!

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磯木&まんぼう:すっごい楽しい!しかもこれ、鎌で皮をむいてから最後までで15分くらいですよね?あっという間。モンゴルさんが言ってたようにこんなに簡単に間伐作業ができちゃうのは驚きです。肉体労働でもないし、これは森遊びの一環としてもいいなあ。女性や子どもでもできるのも納得です。

まんぼう:皮をむいた木ってこうなってるんだねえ。この状態、はじめて見た!表面が水分でツルッツルで、なんだか爽やかな匂いもするよ!?

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思わず指で撫でてみたり、匂いを嗅いでみたり。

磯木:うん、すごくきれい。触りたくなるよね。

モンゴル:ですよね。このきれいさから、皮むき間伐は「きらめ樹(きらめき)間伐」とも呼ばれてるんです。みんな楽しんでくれるし、森にとってもいいことなので、これからはほかの山でも「きらめ樹間伐」をしていきたいですね。もちろんツリーハウスも増やして、気軽に遊びにきてもらって、森を守っていく活動をたくさんの人に知ってもらいたいなって思ってます。

磯木:それはいいですね。ぜひ広めてください!

【磯木さんの「旅を終えて」】

どこに行っても目に飛び込んでくるのはきらきらとした緑。旧藤野町は美しい町でした。
『暮らしの手仕事~くらして~』では女性的な糸紡ぎ体験を、『mossrock山』では男性的な間伐体験をさせてもらい、「自然は誰にとっても遊び場になるんだ」という懐の深さも実感。自然は季節ごとに違う楽しみ方があるはずだから、きっとここは年中遊べる所なのは間違いなさそう。ああ、だから彼らはここに暮らしているんだ。まんぼうにそう聞くと、やはり“旧藤野町の魅力はまだまだこんなものじゃないからね”と。町を愛する人たちの姿もまた美しい。

■今回訪れた場所/人

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・Mossrock山
予約・お問い合わせ:090-6198-2172(石毛了一さん)
神奈川県相模原市牧野10126-1
ツリーハウス宿泊&きらめ樹間伐体験 1泊2日 大人5000円。土日のみ。
皮むき間伐体験は4月~8月、切り下ろし体験は9月~3月の期間で可能。
山菜摘み、川遊び、焚き火など、季節ごとの自然体験イベントも随時開催中。

■著者/磯木淳寛(いそき あつひろ)さん

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食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター
自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに雑誌媒体などに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催。石巻復興まちづくり情報交流館コンテンツ編集デスク。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。近刊予定として『房総いすみ~地方で実現する生き方としての小商い(仮題)』(2016年初秋発刊予定)。

※記事は2016年8月27日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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