関東 日帰り 出会い旅 Vol.005 /自然を体で感じる旅(神奈川県相模原市緑区・旧藤野町)【前編】
【毎週土曜 6:00 更新】
東京から90分以内の日帰り圏内。その円を広げてみると、そこにはとても豊かな自然や、新鮮な景色が広がっています。身近なようでまだ知らない「関東の田舎」で、地元を愛するみなさんと触れ合いながらの、楽しい週末旅はいかが? 今回は自然の息づく場所・神奈川県の旧藤野町へ。旅人は編集者/プランニングディレクターの磯木淳寛さん!
更新日:2016/08/20
■今回出向いた町/神奈川県相模原市緑区(旧藤野町)
新宿駅から電車で約80分。すぐそばにある登山客数世界一の山、高尾山の影に隠れているものの、そのわずか先にある旧藤野町エリアも開放感を求めるハイキング客には人気の場所。また、都心に通える距離感と豊かな緑は多くの移住者も惹きつけてきた。訪れてみると、そこには自然と調和して暮らす人々の姿がある
■会いに行った人/平川 友紀(ひらかわ ゆき)さん
ストーリーライター。 1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごす。体調を崩したことをきっかけにマクロビオティックを学び、持続可能なライフスタイルを模索し始める。2006年に神奈川県の里山のまち、神奈川県相模原市(旧藤野町)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らし、コミュニティを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。
綿は種から、羊毛は羊から。衣を自給自足するワークショップ『暮らしの手仕事~くらして~』
磯木:まんぼう、おはよう!都内から西に向かうほどに自然が多くなるのが電車の中でも感じられたけど、このあたりは本当に気持ちがいいね。
まんぼう:なんといっても空気がきれいでしょ?ほとんど山の中で、その合間に集落があって人が住んでいるような所なんだよね。
磯木:まんぼうは都内から旧藤野町に引っ越してきて今年で10年目だっけ?最近も旧藤野町界隈のパンフレットやフリーペーパーをライターとして次々に作っているよね。
まんぼう:そう!すっかりここが気に入ってしまってね。というのもそれだけ面白い人がたくさん住んでいるから。仕事を通じて藤野の人や町の魅力を届けたいなと思ってるよ。
磯木:いいね。今日もどんな人を紹介してくれるのか楽しみ。
まんぼう:いわゆる普通の観光じゃないところに連れて行くね(笑)
(車を走らせること約10分)
まんぼう:着きました。紹介します。衣の自給自足をテーマに『暮らしの手仕事~くらして~』というワークショップを主宰している、おおわまゆみさんです。
まゆみさん:こんにちは。
磯木:はじめまして。よろしくお願いします!早速ですが、ここはどんなところ?畑にたくさんの小さな芽が見えます
まゆみさん:ここは、綿を植えている畑です。畑で育てた綿から衣類を作るワークショップを行っていて、参加者と一緒に5月に綿の種まきをするところから始めます。秋には収穫した綿から紡いだ糸を織ったり編んだりして洋服やストールに仕立てていきます。ここで一緒に育てている藍で染めたりもしますよ。
磯木:まず畑での種まきから始めるんですか!まさに“衣の自給自足”ですね。相当やりがいがありそうです。
まゆみさん:そう、じっくり時間をかけて作るのってすごく楽しいですよ。いろんなものが自然の恵みからできちゃうってことも実感できます。1年前からは綿だけでなく、羊毛を取れるようにと羊も飼い始めましたよ。羊も見ていきます?
磯木:ぜひ!
(車で数分。羊の放牧場へ)
羊:メエエエエ!(駆けてくる)
磯木:おお、こっちに来た!よく懐いているんですね。触ってみるとフッカフカ!性格もすごく穏やかでかわいらしいなあ。羊は何頭いるんですか?
まゆみさん:最初は4頭だったんですけど、赤ちゃんが生まれて全部で6頭になりました。3家庭でシェアして飼っています。
磯木:それぞれの名前は?
まゆみさん:一応あるんですけど、全部にはつけてない(笑)。というのも、純粋なペットなのではなくて、命をちゃんと頂くっていうことも考えているから。情が移ってしまうとそれが難しくなってしまうでしょ? 私は「衣食住を自分でやってみる」ということをテーマにしているんですけど、羊は羊毛を衣類にできるし、食べられるし、住という意味では羊毛から絨毯を作ることもできちゃうんですよ。
磯木:まゆみさんのワークショップでは、綿や羊と関わることで自然との関わりだったり、命だったり、いろんなことが学べそうですね。
器械を使っての糸紡ぎ体験
綿畑と羊の放牧場という、糸や毛の元になる場所を見たあと、一行はまゆみさんがいつもワークショップを行っているという工房へ。建物に着くと1階の中華料理屋からはちょうど昼時を前にしておいしそうな匂いが漂っていた。
磯木:工房は中華料理屋さんの2Fなんですね。
まんぼう:うん。まゆみさんの旦那さんは以前都内でお店をやっていたんだけど、約10年前にこっちにきて、去年念願叶ってオープンしのがこの「大和家(やまとや)」なんだよね。
磯木:へえ~。そうなんだ。1Fと2Fのそれぞれがご夫婦の活動拠点というのは素敵ですね。
まゆみさん:ありがとうございます。どうぞあがってくださいね
まゆみさん:ちょっと糸紡ぎをやってみせますね。(綿が少しづつ糸になっていく)
磯木:おぉ。はじめて見ました。こうやって糸になっていくんですね。
まゆみさん:もしよかったらやってみます?
磯木:わあ、できるかなあ…。やってみます!器械や器具もいろいろありますね。
まゆみさん:綿繰り器を回しながらほぐした綿を入れていってください。
磯木:おお~、出てきた出てきた!これ、楽しい!
まゆみさん:でしょう?まんぼうもやってみて。こっちは羊毛の繊維を紡ぐ器械。
まんぼう:おおー、毛がだんだん糸状になっていく!めっちゃおもしろーい!これは夢中になるね。
磯木:糸紡ぎは誰でもうまくできるようになるものですか?
まゆみさん:ワークショップに参加した人はみんなすぐに上手くなりますよ。そしてこちらが完成品です。
磯木:こうやって丁寧に服や小物を作ったら、やっぱり愛着が湧いて大事に使おうと思いますよね。触れてみると肌触わりもいいし、やわらかくて暖かくて…、なんだかこう、お母さんの優しさを思い出します。
まんぼう:奥さんじゃないんだ。
磯木:この優しさはやっぱりお母さんだね(笑)
■今回訪れた場所/人
●暮らしの手仕事~くらして~
季節を感じながら、暮らしに役立つ手仕事の提案をしてくれる「手仕事会」を開催。
TEL.090-9360-9936(おおわまゆみ)
神奈川県相模原市緑区日連68-1 2F
開館/10:00~15:00
料金/1日5000円 ※日程は要問合せ
●餃子+創作中華料理 大和家
TEL.042-684-9707
神奈川県相模原市緑区日連68-1-1F
木曜定休
■著者/磯木淳寛(いそき あつひろ)さん
食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター
自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに雑誌媒体などに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催。石巻復興まちづくり情報交流館コンテンツ編集デスク。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。近刊予定として『房総いすみ~地方で実現する生き方としての小商い(仮題)』(2016年初秋発刊予定)。