今回の「長崎のふつうは世間のふしぎ」という旅のテーマを聞いたとき、正直ピンとこなかったわたしたち。出島など教科書内の知識しかなくて、現在の長崎といえばグラバー亭などのレトロな洋館、カステラ、ちゃんぽんと程度。でも、実際に町を歩いてみると、想像以上に不思議でおもしろい「長崎のふつう=日常」がありました。
「長崎のふつう」とは、地元の人々の日常のこと。1577年の開港から1635年の鎖国、翌年の出島完成経て、長らく海外との文化・交流の唯一の窓口となった長崎は、オランダ(蘭)、中国(漢)の文化を多く取り入れて日本の文化と融合。それが「和華蘭文化」とよばれ、長崎独特の生活様式や祭りなどを育んできました。今でも町中でみる洋館、中華寺院などの建物から、カステラ、ちゃんぽんなどの食といったさまざまなモノコトにその文化が息づき、長崎ならではの日常を形成しています。
次は、初心者向けの「長崎のふつうを訪ねる旅」の体験レポートをみてみよう。白い鉄火巻、花火屋など、知らなかった長崎の魅力を再発見できるはず。
【眼鏡橋・出島エリア】1DAYモデルコース
長崎初心者に!眼鏡橋から出島、のんびり町さんぽ1日観光
09:00 眼鏡橋エリアでのんびりさんぽ
路面電車が走る市街地は、歩いて15分以内でどこでも行けるコンパクトさ。眼鏡橋~出島エリアも十分に歩ける範囲なので、スニーカーで足元を固めてから出発!
まずは、長崎市内の代表的なスポット・眼鏡橋へ。江戸初期の1634年に架けられた、重厚感ある石造りの眼鏡橋と両岸の涼しげな柳が情緒たっぷりで気分が盛り上がります。中島川の川面に映りこむ橋がまるで眼鏡のようにみえて必見なので、お見逃しなく。
写真撮影を楽しんだあと、このエリアには伝統工芸やカステラなど長崎らしいお店がたくさんあると聞いて、レトロな雰囲気を味わいながらのんびり町を歩いてみました。
09:30 黄色の建物が目印のニューヨーク堂で名物のカステラアイスをテイクアウト
さらに、店内では注文するとその場で作りたてが味わえるという店舗限定のもカステラアイス(350円)。早速注文して実食。バニラのソフトクリームの濃厚さにカステラも負けていない。時折感じるザラメの触感もいいアクセントに。
10:00 400年続く長崎の縁起物・凧をお土産に
江戸時代から続く伝統工芸品・凧(はた)。そもそもの由来はオランダ船に乗ってきたインドネシア人から伝わったそう。紋様は、赤・白・青を基調にしたオランダ国旗や信号旗などに、コウモリ、千鳥などの長崎の人々の意匠などがミックス。だから、デザインはモダンでおしゃれ。インテリアのアクセントしてお土産にひとつ購入!
大守屋
TEL.095-824-2618
長崎県長崎市古川町4-2
10:30 カステラ屋の茶房でカステラとそのぎ茶のマリアージュを堪能
眼鏡橋周辺のたもとで見つけたカステラ屋、匠寛堂(しょうかんどう)併設の茶房 玉響(たまゆら)へ。茶房でしか味わえないスペシャルなカステラがあると聞き、カステラ好きとしては興味津々、早速のれんをくぐりました。
テーブルにつくと、緑茶のウェルカムティーに続いて、3種から1種選べるカステラ+銘茶がセットになった「たまゆらセット」(1000円~)が登場。選んだのは茶房限定の「煌(きら)かすていら」。その日にお店で焼き上げたというだけあって、ほんのりあたたか。甘さも口当たりも軽めのふわふわカステラで、うまみのある玉響オリジナルの「東そのぎ産の蒸し製 玉緑茶」とよく合います。カステラと長崎の緑茶とのマリアージュ、この地ならではのプレゼンテーションに感動。
11:00 精霊流し花火セットの迫力がすごい!花火専門店の⽴岩商店
中島川の遊歩道を歩きながら地元のふつう談義で盛り上がる。眼鏡橋周辺では夏には精霊流し、冬はランタンフェスティバルが行われて地元民も盛り上がるそう。長崎の精霊流しは、中華圏の祭りで行われるように爆竹を鳴らす、耳栓必携という話も。お墓参りでも爆竹を鳴らすから、花火専門店があるとか。中国と日本の風習が融合して根付いている驚きの長崎文化です。
そこで、近くにある花火専門店を訪ねてみました。どどんと看板に、大きく花火とうたった「立岩商店」。創業1917年というから優に100年超えの老舗。店に入ると所狭しと花火が陳列されて、爆竹、打ち上げ、ロケット600種以上。店舗オリジナルの花火から純国産品の花火まで豊富にそろいます。
ちょうど、精霊流しを控えた7月だったので、店舗いちばんいいところに精霊流し花火セットコーナーがありました。一例でいうと、爆竹300個、打ち上げ花火21本、噴水花火44個、手持ち花火20本で定価の約60%OFFの7万円弱。ちょうどお店にお買い物に来た地元の方は、この7万弱のセットに、爆竹と花火を追加して10万弱をお買い上げ。この数の爆竹と花火をどのように消費するのか、まったくイメージがわきませんが、これが長崎の人のふつうなんですって。
立岩商店
TEL.095-822-1305
長崎県長崎市賑町7-1
13:00 地元の人が足しげく通う老舗中華料理店で昼食
中華街のメイン通りから少し外れたところにある福建料理の「中華菜館 福壽」。地元の人に愛される創業70年の老舗店らしく、昼食時には行列ができていました。期待に胸が膨らみます。
関東ではあまりちゃんぽん、皿うどんはみませんが、長崎では中華料理店にちゃんぽん、皿うどんは当たり前。福壽では、ちゃんぽん、皿うどん(太麺、細麺)、チャーハン、エビのすり身を使った郷土料理のハトシを注文。@_mugi_photo_さんは、ちゃんぽん推し。とろみのついた鶏ガラスープが絡んだ麺を、たっぷりのシャキシャキ野菜とともに味わえていいと絶賛。編集Oは、細麺と太麺から選べる皿うどん推し。初めて食べた太麺タイプ、モチッとしていておいしい!
14:30 長崎の和華蘭文化の源流を学べる出島へ
かつては海に囲まれていましたが今では周囲を埋め立てられ、高層ビルとともにみられる現代の出島は、長崎文化を知る上で外せないスポットです。江戸初期の1636年に築造されて以降、218年間の間、西欧との唯一の窓口となったこともあって、出島内の展示・資料を見ていると、長崎らしいオランダ(蘭)文化とのミックスカルチャーの背景が見えてきます。また、コーヒー、ビール、チョコレートなど、ここ出島にいたオランダ人から広まったと考えると市内でよくみられる「◯◯発祥の地」「日本初の◯◯」の文字も納得できますね。
さらに、敷地内の洋館などの建物を見てまわるだけでも楽しい。@photoさんが、カピタンの部屋や葡萄棚など、非常に映えるスポットがたくさんあって、長崎女子旅をするなら絶対に外せない場所と断言。次回は、施設内でレンタルできる、レトロな着物を着て歩いてみたいと再訪希望を語っていました。
15:30 レトロな洋館でミルクセーキを飲んでひと休み
出島内にある旧長崎内外クラブの建物を利用したレトロな趣のレストラン。長崎の食をテーマに、地元食材を活かしたフレンチや、ミルクセーキ、トルコライスなどを提供しています。
こちらには、出島見学後のひと休みで訪れま、いちばん人気の長崎ミルクセーキ700円を味わいました。飲み物と思っていましたが、実はかき氷のようなもの。シャクシャクの氷を口に含むと、優しいミルクの豊かな風味が口に広がります。ほどよい甘さで、さっぱりいただけて、疲れも一気に解消!
18:00 白い鉄火巻を味わいに寿司店へ
鉄火巻といえば、マグロの赤身が入った海苔巻きですが、ここ長崎では白身の魚が入った「白鉄火」、いわゆる「白い鉄火巻」が定番といいます。それを検証しに長崎近海の魚介を味わえる「鮨場いぶき地」へ。
今日の「白鉄火」の具材は、身の締まったヒラス(ヒラマサ)。季節によって、ブリやハマチなどに変わります。ウニも濃厚!
料理は、刺身の盛り合わせ。シマアジ、地だこ、ヒラス(ヒラマサ)、クジラの顎の下、キビナゴの5種と、まさに長崎の旬の味覚を堪能。いずれもプリプリ、コリコリの歯応えが抜群で、鮮度の高さがうかがえます。カマスの焼物も美味。身の厚さとうまみにびっくり。淡泊な味わいの魚という印象が変わりした。長崎の海街力も侮れません。
長崎旅の拠点はこちら「hotel&cafe ksnowki」
市街地から徒歩圏内。キッチン付きで暮らすように滞在できる居心地のいい宿
路面電車の崇福寺駅から数分、繁華街の思案橋も徒歩圏内の閑静な住宅地にたたずむ、2022年3月にオープンした3室のみの小さなホテル&カフェ。オーナーの松尾綾さんが、祖父母が暮らしていた家をリノベーションし、祖母と一緒に運営しています。ホテルの名前は、数軒先にかつて高祖父が経営していた銭湯「楠湯」からとったもので、この土地と祖父母への愛を感じられます。
3室ある客室は、白が基調。綿100%のもの、通常廃棄されてしまう規格外の柑橘類を使ったソープなどできるだけナチュラルなものを配した、穏やかで居心地のいい空間。キッチンもついていて、まさに暮らすように滞在できます。
部屋の片隅に設置されたキッチンには、カップやお皿も備わっていて、お部屋でテイクアウトしてきた料理を食べたり、コーヒーを飲んだりが気ままにできるのが嬉しい。
地元の菓子店のお菓子やロースタリーのコーヒーに加えて、冷蔵庫には豆乳も完備。
大きく窓がとられた1階のカフェは、陽射しが差し込む明るい空間。ここで、地産食材を使った手作りの朝食をいただけます。スープ2種とおにぎりから選べ、キャロットラペなどの野菜の副菜が一皿付いて750円。おすすめはスープ。長崎出身の料理家さんが考案したという蒸し煮という調理法で作られたスープは、素材のうまみが引き出されてとても美味。パンは向かいにある天然酵母を使ったパン屋さんのもので素朴な味わい。
ソープからリネン、お部屋のスイーツやコーヒー、朝食まで、華美ではないけれど心地いい滞在に。この宿で、忙しない日常から離れて、数日でもゆっくり、のんきに暮らしてみれば、長崎の旅がもっと豊かに、長崎がもっと好きになるはず。
旅マエにお役立ち!長崎のふつうを訪ねる旅ならこのWEBをチェック
- 「長崎のふしぎは世間のふしぎ」と題して長崎独特の文化や観光スポットなどを読み物を中心に紹介する長崎国際観光コンベンション協会が手掛けるWEBサイト。長崎市街地のほか、外海・琴海、茂木・戸石、伊王島・野母崎のご案内も。
- ホームページ
- 長崎のふしぎは世間のふしぎHP
PHOTO/@_mugi_photo_(オズレポーターズ)