町に着いたら、本屋をめざそう。Vol.002/BOOK MARUTE(香川県高松市)
【毎週水曜 21:00 更新】
知らない町に迷い込むのと、本屋さんで心を遊ばせるのは、どこか似ている気がする。そして、旅先で出会った本の一節はなぜか、いつも以上に心に残ったりもする――。全国の町の味わい深い本屋さんが、旅のお供におすすめの1冊を教えてくれる、リレー連載の第2回。静岡県浜松市の「BOOKS AND PRINTS」さんがご紹介くださったのは、高松のこちらです
更新日:2016/07/21
高松の海辺の古い倉庫街・北浜アリーの中に
「BOOK MARUTE」はあります
昭和初期に建てられた古い倉庫群をリノベーションした「北浜アリー」は、瀬戸内海に面した高松を代表する観光スポットのひとつ。今回紹介する「BOOK MARUTE」は、この味のある倉庫街の中に、2013年にオープンしたお店。こぢんまりとしているけれど、コーヒーや紅茶が飲めるカフェスペースもある。
「毎日、海に沈む夕陽やフェリーが見えるんですよ。それだけでも贅沢な感じがして」と教えてくれたスタッフの佐藤友理さんは東北生まれ。旅行で訪れた高松の魅力に惚れ込んで移住を決めたという。
うどんだけじゃない、香川の魅力を伝える
香川県民にも読んでほしい一冊
佐藤さんがおすすめしてくれた「ぼくの香川案内」は、編集者の岡本仁さんが香川の街を紹介するガイドブック。街のいたる所にあるうどん屋さんはもちろん、猪熊源一郎やイサムノグチなど、世界的な建築家による建築物が当たり前のように佇んでいる光景など、この街で暮らす人の“いつもの風景”が独自の視点で切り取られている。
実は、この本を書くために香川県を訪れた岡本さんの案内人となったのは、MARUTEのオーナーである小笠原哲也さんなんだとか。
「本当にオーナーが書いたからおすすめしているわけではないんですが…(笑)。観光客の方はもちろん、香川県民の方も、改めて自分が暮らしている街に誇りを持てる本だと思います」と佐藤さんは胸を張る。
(お気に入りの一節)
『自分の暮らしている場所を愛して止まない人たちと出会うと、その場所の魅力は何倍にも輝いて見えるようになる。ぼくが繰り返して訪れる土地には必ずそういう人たちが居るし、その愛して止まない様子がいろいろな形であちこちに点在している。
もちろん、こちらが勝手にそれを感知しているだけで、当の本人たちにとっては普通の普段の暮らしでしかないかもしれない』
――ぼくの香川案内より
「へぇ、香川ってこんなところだったんだ
帰る頃には香川愛が深まっているはず
国内外の様々な写真集に加えて、香川の歴史が綴られた古い本、香川を拠点に活躍する建築家やアーティストに関連する本、佐藤さんと同じように他県から香川に移住した人の著書――MARUTEには、香川にまつわる本も数多く並んでいる。ページをめくるたびにこの街のことをもっと知りたくなり、もっと好きになっていく本ばかり。
「高松って、海があって、小豆島や直島など島がたくさんあって、アートに触れる機会もたくさんあって。この街やこのお店をきっかけに、香川の豊かさに触れてもらえたら嬉しいです」
2016年3月には、MARUTEから歩いて10分ほどの場所に「ゲストハウスまどか」がオープン。こちらも古い建物で、かつてはお遍路さんが利用する旅館だったのだとか。この場所を拠点に、高松や瀬戸内の島めぐりをするのも楽しそう。
【今週の町と本屋さん】香川県高松市・BOOK MARUTE
TEL:090-1322-5834
香川県高松市北浜町3-2北浜alley-j
営業時間:平日13:00~20:00、土日祝11:00~20:00
定休日:火・水・木
●佐藤友理さんおすすめの1冊
ぼくの香川案内(岡本仁・著)
●佐藤友理さんの好きな喫茶店
珈琲と本と音楽 半空(なかそら)
TEL:なし
香川県高松市瓦町1-10-18 北原ビル2F
営業時間:13:00~翌3:00
定休日:日
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WRITING/MINORI KASAI PHOTO/BOOK MARUTE