石見銀山のノスタルジックな町を歩く島根旅

【島根県・石見】石見銀山のノスタルジックな町を歩く島根旅

更新日:2023/06/29

2007年にアジアの鉱山遺跡として初めて世界遺産に登録された島根県にある石見銀山。銀の歴史に触れたり、周辺に広がる大森町のレトロな町並みの中には、センスが光る名店もたくさんあるので、あれこれ巡りながらノスタルジックな散策を楽しんで。

龍源寺間歩
間歩の入口は緑いっぱいの山の中

豊かな森に囲まれた銀山の遺跡を訪ねて

バスを降り町を歩き始めると、まばゆいほどの緑が目に飛び込んできた。木造建築が連なる伝統的な町並みは周囲を山に囲まれ、大きな森に優しく抱かれているように見える。

2007年にアジアの鉱山遺跡として初めて世界遺産に登録された石見銀山。戦国時代後期から江戸時代前期の最盛期には世界の銀の約1割を産出し、国内外の政治経済や文化交流に影響を及ぼしたといわれている。

こうした歴史的な背景に加えて、世界遺産に登録された決め手となったのが、自然と共生した鉱山であったこと。

銀を製錬するには大量の薪が必要だが、石見銀山では木々の伐採と同時に植林も行うことで、環境への負荷の少ない開発がなされたという。

今日に至るまで豊かな森が残されている点が、世界に類を見ない鉱山として評価されているのだ。

龍源寺間歩
全長600mのうち、入口から約160mを公開。壁面には当時ノミで掘り進んだ跡がそのまま残っている

現在、この一帯は銀を採掘していた間歩と呼ばれる坑道跡が点在するエリアと、江戸時代の美しい町並みがそのまま残るエリアとに分かれ、銀の歴史やレトロな町並みに触れながら、散策ができる。

数ある銀山の遺跡の中でも、ぜひ足を運びたいのが龍源寺間歩。現在、石見銀山で唯一通年公開している坑道で、ジブリ映画にも登場しそうな清水谷製錬所跡とともに、往時の銀山の面影を感じることができる。

ちなみに石見銀山では「パーク&ライド」という交通規制が行われていて、龍源寺間歩に行くには3㎞ほど離れたバス停から歩くか、ぎんざんカートと呼ばれる乗合いカートやレンタサイクルで移動する必要がある。

少々面倒に感じるかもしれないが、これも地域の自然環境や暮らしを守るために行われていること。銀山の全盛期からずっと大切にされてきた自然との共生、その考えが今なお生きているのだ。

龍源寺間歩の近くには、香り袋の専門店や山陰地方の地酒を揃えたリカーショップなどユニークなお店もいろいろ。美しい緑や澄んだ空気を味わいながら、散策を楽しんでみて。

龍源寺間歩

りゅうげんじまぶ
TEL.0854-89-0117(管理棟)
住所/島根県大田市大森町ニ183 
時間/9:00~17:00(16:50最終入場)、12~2月~16:00(15:50最終入場)  
定休日/1/1のみ休
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約30分、大森代官所跡下車徒歩45分。または、ぎんざんカートで約25分、龍源寺間歩入口下車すぐ 

あわせて立ち寄りたい石見銀山のおすすめスポット

かおり本舗 中村屋
左/中村屋の香り袋各1000円。香りが弱くなったら金槌などで軽く叩くと蘇る 右上/風情ある店構え 右下/店主で香木師の中村司さん

ここでしか買えない香り袋はお土産にぴったり

龍源寺間歩の出口からすぐ。かつて銀山の坑道に酸素を送る際に香りも送っていたと言われることから、周辺に自生する香木のクロモジと輸入ハーブをブレンドした手作りの香り袋を販売している。この道30年のご主人から石見銀山の昔話を聞くのも旅の醍醐味。

かおり本舗 中村屋

かおりほんぽ なかむらや
TEL.0854-89-0988 
住所/島根県大田市大森町銀山栃畑谷 
営業時間/9:00~17:00  
定休日/不定休
アクセス/龍源寺間歩出口よりすぐ

左/「各々の蔵が個性を大事にしているのが山陰のお酒の魅力」と和田さん  右/左から、無窮天穏「大森」きもと五穀酒3850円、ジュリアン•ピノー「ロッシュ•ブランシュ 2021」4840円、十旭日「癸卯」純米吟醸おりがらみ生1980円 

こだわりの地酒やナチュラルワインが揃う

林道沿いに静かに佇む一軒家。扉を開けると、びっしりと並んだボトルの数に圧倒される。山陰の真摯な酒造りが好きで、東京から移住したという店主の和田雄太郎さん。地酒はもちろん、ナチュラルワインも圧巻の品揃えで、出雲や松江から通う常連客も多いとか。

UN BOIS

アン ボア
TEL.090-2479-9845
住所/島根県大田市大森町ニ144 
営業時間/11:00~18:00頃
定休日/火•水定休、ほか不定休あり
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約30分、大森代官所跡より徒歩40分。または、ぎんざんカートで約20分、新切間歩下車徒歩3分

清水谷製錬所跡
古の城跡を思わせる清水谷製錬所跡

緑に覆われた製錬所の遺跡で歴史を感じて

明治時代に銀生産を再開するべく、巨額を投じて建造された製錬所の遺跡。現在は緑に覆われた城跡のような景観が残されているのみだが、往時は選鉱場など10棟以上の建物が立ち並んでいたという。石見銀山の歴史を知るなら、ぜひ訪れておきたい場所のひとつ。

清水谷製錬所跡

しみずだにせいれんじょあと
TELなし 
住所/島根県大田市大森町
営業時間/見学自由
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約30分、大森代官所跡より徒歩40分。または、ぎんざんカートで約20分、清水寺前駐車場下車徒歩2分

左/江戸時代の古民家を再生した石見銀山 群言堂本店 右上/桜や金木犀などで染めあげた「里山パレット」シリーズ 右下/2Fには木々を眺めながらくつろげる休憩スペースも

「根のある暮らし」を考え、衣食住美を提案

古くから受け継がれてきた日本の暮らしの文化を現代のライフスタイルに合わせて提案する「復古創新」がテーマ。石見銀山周辺に自生する草花で染めあげた「里山パレット」シリーズなど、衣食住美にかかわるこだわりのオリジナル商品を旅の思い出に。

石見銀山 群言堂本店

いわみぎんざん ぐんげんどうほんてん
TEL.0854-89-0077 
住所/島根県大田市大森町ハ183 
営業時間/11:00~17:00(16:30LO) 
定休日/水(祝の場合営業) 
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約27分、大森下車徒歩3分 
※予約不可

左/ベッカライ コンディトライ ヒダカの看板商品といえばブレッツェル172円。ほか、大森の梅花酵母を使った食事パンも人気 右上/木次ミルク、出雲抹茶など山陰の味が楽しめるアイスカフェ ヒダカ。リトルトリプル528円 右下/パンを描いたのれんが目印

ドイツパンとお菓子とジェラートの店

オーナーはともにドイツのマイスター資格を持つ日高晃作・直子さん夫妻。ブレッツェルをはじめとする本格ドイツパンや、大森の恵みを活かしたパンが毎日30~40種類並ぶ。隣接するアイスカフェでは、山陰の旬のフルーツを使ったジェラートも。

ベッカライ コンディトライ ヒダカ

TEL.0854-89-0500 
住所/島根県大田市大森町ハ90-1 
営業時間/10:00~16:00、カフェ11:00~ 
定休日/月~水 ※カフェ月•火休、ほか不定休あり
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約27分、新町下車徒歩3分
※予約不可 

左/ルールブルーで見つけたガラス作家•垣内信哉さんの作品は、水のゆらぎのような表情が魅力 右上/大田市「森山窯」の器も充実 右下/思わず足が止まる瀟洒な店構え 

日常の暮らしを豊かにするセレクトショップ

大森にIターン移住した細山華絵さんが営むセレクトショップ。地元大田市の「森山窯」の器や垣内信哉さんのガラスなどの暮らしの道具や洋服、オーガニック食材が一堂に会す店内は、まるで小さな宝箱のよう。じっくり眺めて、お気に入りを見つけて。

ルールブルー石見銀山

ルールブルーいわみぎんざん
TEL.非公開 
住所/島根県大田市大森町ハ85 
営業時間/11:00~16:00 
定休日/月~水 
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約27分、新町下車徒歩3分 

左/歩き疲れた体に染みわたるZUIENTのカフェシェケラート550円 右/大きなテーブルでゆったりお茶ができる

イタリアンコーヒーとスイーツを

大森町の玄関口でもある代官所前広場にあるコーヒー専門店。イタリアで70年以上の歴史を持つサトルノ社のコーヒーが、白を基調としたモダンな店内で味わえる。リコッタクリームを詰めたカンノーロなど、自家製のイタリアンスイーツも美味。

ZUIENT

ズイエント
TEL.0854-89-0879 
住所/島根県大田市大森町ハ46 
営業時間/13:00~16:30、土•日•祝~ 17:00 
定休日/不定休 
アクセス/大田市駅より大森方面行きバスで約30分、大森代官所跡下車すぐ 
※予約不可

この記事が掲載されているのは、OZmagazine TRIP「日本の世界遺産」特集

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発売日/2023年6月28日(水)
定価/800円
販売場所/全国の書店、コンビニエンスストアなどで発売中!

PHOTO/NORIKO YONEYAMA  WRITING/NAOKO OGAWA
※OZmagazine TRIP(2023年6月28日発売)の情報を転用して掲載しています。掲載情報は、2023年6月16日時点のものです。その後、変更が生じる場合がありますのでご了承ください

※記事は2023年6月29日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります