【春のひとり旅】小さな宿から始まる真鶴の暮らしを訪ねる旅_神奈川県・真鶴町

【春のひとり旅】小さな宿から始まる真鶴の暮らしを訪ねる旅_神奈川県・真鶴町

更新日:2023/03/23

守り継がれた美しい景観が残る港町、真鶴。地域とつながる豊かさを感じられる“泊まれる出版社”を拠点に、背戸道に点在する個性豊かなお店巡る旅。のどかな港町の空気に包まれ、住人気分で町を散策しよう。

上/真鶴出版のリビング。大きなテーブルを中心に、本や暮らしの品を並べたショップを併設している 下/細い背戸道の脇に立つ築60年の民家を改装し、宿に

真鶴旅の拠点は“泊まれる出版社”

「真鶴って熱海に行く途中に必ずそばを通るんですけど、いつも通過しちゃってたんですよね」。取材に同行したフォトグラファーが、ハンドルを握りながらつぶやく。

「美の基準」という独自のまちづくり条例を掲げ、起伏の多い土地に風情ある景観が残る真鶴。熱海や湯河原などの観光地に囲まれながらも、まるでエアポケットのように静かなこの町は、確かに普通の観光目的であれば通り過ぎがちだ。

けれどそんな真鶴に近年、移住者が増え続けているという。そのきっかけのひとつとなったのが2015年に誕生した「真鶴出版」の存在。出版業を通して町の情報を発信し、それを受け取って町にやってきた客人を宿で迎え入れる、いわば“泊まれる出版社”だ。

左/左から、真鶴出版の川口瞬さん、來住友美さんと1歳のげんちゃん、山中美友紀さん 右上/地域に根ざす人々を深掘りした雑誌『日常』など、自社制作物も手に取って読める 右下/宿は現在、1日1組のみの受け入れ。2Fの客室からは周囲の家並みが見える

真鶴出版がユニークなのは、2時間ほどかけて真鶴を案内する「町歩きツアー」が宿泊とセットになっていること。宿を切り盛りする來住友美さんが外国人ゲストの通訳として飲食店を案内したことをきっかけに日本人向けにも始めてみたところ、これが大好評。今では真鶴出版の代名詞にもなった。

二度、三度とリピートするうちに真鶴への愛着が深まり、移住に踏み切った人はこれまでゆうに60人を超えるそう。「自分たちの持っている町とのつながりをおすそ分けしている感覚なんです。私たちのなじみのお店にゲストを連れていくと、町の人たちも喜んでくれる。その瞬間を見られるのが幸せですね」と來住さん。

宿という仕組みを通して、町の人と外からやってきたゲストをつなぐ。真鶴に生きる人たちのリアルな暮らしにふれる体験は、普通の観光では決して味わえないもの。そこには一体どんな出来事が待っているのか。さっそく出かけてみよう。

真鶴出版

まなづるしゅっぱん
TEL.非公開 
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町岩217 
ショップ営業時間/金・土13:00〜17:00  
客室数/2部屋 
宿泊料金/大人1名5500円(軽朝食付き) ※別途、施設利用料1組16500円 
アクセス/真鶴駅より徒歩6分

町の人々に出会える真鶴のおすすめスポット

上/陽射しが降り注ぐサロンスペース 左下/本の選書は松本のセレクト書店「栞日」の菊池さんが担当。髪を整える間に気軽に読めるもの、ローカルや暮らしにまつわる本が多い 右下/駅近の高台に立つ「本と美容室」。ブルーの屋根に、たわわに実った夏みかんが映える 

書店、美容室、カフェが1つの空間に

サロンスペース奥の廊下を進むと、八角形の小屋の壁面いっぱいに目利きが選んだ新刊書が並ぶ。昨年秋にオープンした書店兼美容室の醍醐味は、このワクワク感。週末はカフェも開店し、ゆるやかな真鶴時間が過ごせる。

本と美容室 真鶴店

ほんとびようしつ
TEL.080-4625-9138 
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴338-2 
営業時間/10:00 〜19:30(カット最終受付18:30) 
定休日/火、ほか不定休あり 美容室のみ完全予約制 
アクセス/真鶴駅より徒歩3分

上/旬の魚を使った干物がずらりと並ぶ 左下/仕入れた魚は午前中のうちに捌き、ブラシを使って丁寧に血を洗い流す。このひと手間がおいしさの秘訣 右下/商店街の中でもひときわ趣のある「魚伝」は、五代続く干物の老舗。「ここのサバのみりん干しを食べて、干物の概念が変わったんです」と來住さん 

真鶴の日常に出会う老舗の干物店

創業明治10年。手作業で丁寧に下処理をし、内モンゴル産の天然岩塩で漬け込んだまろやかな甘塩の干物は、大量生産の品にはないおいしさ。フレンチのシェフとコラボした洋風干物「アタラシイヒモノ」にも注目して。

魚伝

うおでん
TEL.0465-68-0467 
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴671 
営業時間/10:00 〜18:00 
定休日/不定休 
アクセス/真鶴駅より徒歩12分

上/近年は移住者が増え、新しい店も続々と誕生している真鶴。真鶴出版からほど近い「珈琲店watermark」もそのひとつ。「真鶴に来てから、友達が増えて嬉しい」と笑う、店主の栗原しをりさん 左下/コーヒー豆各種100g650円〜 右下/近隣の人のために本の貸し出しも行っている 

週3日だけオープンする自家焙煎の珈琲店

倉敷から移住した栗原しをりさんが手回し焙煎機で焙煎したコーヒー豆を販売。真鶴で〈塞の神〉と呼ばれる道祖神のように、日常に根ざした味わいを追求した「sai」など、常時10種類ほどのブレンドやストレートが揃う。

珈琲店watermark

こーひーてんウォーターマーク
TELなし 
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町岩268-8 
営業時間/14:00 〜17:00 
定休日/月〜木(金〜日のみ営業)
アクセス/真鶴駅より徒歩5分

上/真鶴一ディープな社交場「草柳商店」では、店主のしげさんとお母さんのあーちゃん、奥さんの栄子さんが笑顔で迎えてくれる。「ここに来る人は、みなさん草柳家に会いに来るんですよ」と來住さん 左下/「丹沢山」を筆頭に、神奈川の地酒が揃う 右下/昭和を感じさせる懐かしい佇まい

町の人と交わるディープな社交場

真鶴港そばの老舗酒屋で、夜は町の人と外から来た旅行者やアーティストが杯を交わす社交場としてにぎわう。6代目の草柳重成さんことしげさんは、現役のバンドマン。運がよければゲリラライブに遭遇できるかも?

草柳商店

くさやなぎしょうてん
TEL0465-68-1255 
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴610 
営業時間/10:00 〜19:00 
定休日/木
アクセス/真鶴駅より徒歩13分

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この記事が掲載されているのは、OZmagazine TRIP「春のひとり旅」特集

OZmagazine TRIP「春のひとり旅」特集

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PHOTO/MANABU SANO KAZUHITO MIURA WRITING/NAOKO OGAWA
※OZmagazine TRIP(2023年3月22日発売)の情報を転用して掲載しています。掲載情報は、2023年3月8日時点のものです。その後、変更が生じる場合がありますのでご了承ください

※記事は2023年3月23日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります