守り継がれた美しい景観が残る港町、真鶴。地域とつながる豊かさを感じられる“泊まれる出版社”を拠点に、背戸道に点在する個性豊かなお店巡る旅。のどかな港町の空気に包まれ、住人気分で町を散策しよう。
真鶴旅の拠点は“泊まれる出版社”
「真鶴って熱海に行く途中に必ずそばを通るんですけど、いつも通過しちゃってたんですよね」。取材に同行したフォトグラファーが、ハンドルを握りながらつぶやく。
「美の基準」という独自のまちづくり条例を掲げ、起伏の多い土地に風情ある景観が残る真鶴。熱海や湯河原などの観光地に囲まれながらも、まるでエアポケットのように静かなこの町は、確かに普通の観光目的であれば通り過ぎがちだ。
けれどそんな真鶴に近年、移住者が増え続けているという。そのきっかけのひとつとなったのが2015年に誕生した「真鶴出版」の存在。出版業を通して町の情報を発信し、それを受け取って町にやってきた客人を宿で迎え入れる、いわば“泊まれる出版社”だ。
真鶴出版がユニークなのは、2時間ほどかけて真鶴を案内する「町歩きツアー」が宿泊とセットになっていること。宿を切り盛りする來住友美さんが外国人ゲストの通訳として飲食店を案内したことをきっかけに日本人向けにも始めてみたところ、これが大好評。今では真鶴出版の代名詞にもなった。
二度、三度とリピートするうちに真鶴への愛着が深まり、移住に踏み切った人はこれまでゆうに60人を超えるそう。「自分たちの持っている町とのつながりをおすそ分けしている感覚なんです。私たちのなじみのお店にゲストを連れていくと、町の人たちも喜んでくれる。その瞬間を見られるのが幸せですね」と來住さん。
宿という仕組みを通して、町の人と外からやってきたゲストをつなぐ。真鶴に生きる人たちのリアルな暮らしにふれる体験は、普通の観光では決して味わえないもの。そこには一体どんな出来事が待っているのか。さっそく出かけてみよう。
真鶴出版
まなづるしゅっぱん
TEL.非公開
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町岩217
ショップ営業時間/金・土13:00〜17:00
客室数/2部屋
宿泊料金/大人1名5500円(軽朝食付き) ※別途、施設利用料1組16500円
アクセス/真鶴駅より徒歩6分
町の人々に出会える真鶴のおすすめスポット
書店、美容室、カフェが1つの空間に
サロンスペース奥の廊下を進むと、八角形の小屋の壁面いっぱいに目利きが選んだ新刊書が並ぶ。昨年秋にオープンした書店兼美容室の醍醐味は、このワクワク感。週末はカフェも開店し、ゆるやかな真鶴時間が過ごせる。
本と美容室 真鶴店
ほんとびようしつ
TEL.080-4625-9138
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴338-2
営業時間/10:00 〜19:30(カット最終受付18:30)
定休日/火、ほか不定休あり 美容室のみ完全予約制
アクセス/真鶴駅より徒歩3分
真鶴の日常に出会う老舗の干物店
創業明治10年。手作業で丁寧に下処理をし、内モンゴル産の天然岩塩で漬け込んだまろやかな甘塩の干物は、大量生産の品にはないおいしさ。フレンチのシェフとコラボした洋風干物「アタラシイヒモノ」にも注目して。
週3日だけオープンする自家焙煎の珈琲店
倉敷から移住した栗原しをりさんが手回し焙煎機で焙煎したコーヒー豆を販売。真鶴で〈塞の神〉と呼ばれる道祖神のように、日常に根ざした味わいを追求した「sai」など、常時10種類ほどのブレンドやストレートが揃う。
珈琲店watermark
こーひーてんウォーターマーク
TELなし
住所/神奈川県足柄下郡真鶴町岩268-8
営業時間/14:00 〜17:00
定休日/月〜木(金〜日のみ営業)
アクセス/真鶴駅より徒歩5分
町の人と交わるディープな社交場
真鶴港そばの老舗酒屋で、夜は町の人と外から来た旅行者やアーティストが杯を交わす社交場としてにぎわう。6代目の草柳重成さんことしげさんは、現役のバンドマン。運がよければゲリラライブに遭遇できるかも?
OZmallからのお願い
新型コロナウイルスの影響により、イベントの中止・変更、ならびに施設の休業、営業時間の変更、提供内容の変更が発生しております。日々状況が変化しておりますので、ご不明点がございましたら各施設・店舗へお問い合わせください。
外出時は、各施設の3密対策・ソーシャルディスタンス確保などの衛生対策にご協力のうえ、思いやりを持った行動をお願いします。
この記事が掲載されているのは、OZmagazine TRIP「春のひとり旅」特集
地産地消の食事だったり、伝統や文化を守り継ぐ姿勢だったり。旅先で出会うモノ・コトに、影響を受けることってありますよね。生き方や暮らし方について考えることが多い今だからこそ、行っていただきたい場所、会ってほしい人を今号ではご紹介しています。
※新型コロナウイルスの状況により、施設や店舗の休業や営業時間・業態の変更、交通機関の減便や運行時間の変更などが発生する場合があります。お出かけの際は、最新の情報をご確認ください。
発売日/2023年3月22日(水)
定価/800円
販売場所/全国の書店、コンビニエンスストアなどで発売中!
ひとり旅の関連記事を見る
PHOTO/MANABU SANO KAZUHITO MIURA WRITING/NAOKO OGAWA
※OZmagazine TRIP(2023年3月22日発売)の情報を転用して掲載しています。掲載情報は、2023年3月8日時点のものです。その後、変更が生じる場合がありますのでご了承ください