お出かけ気分が高まる季節。週末は日常を忘れてちょっと遠出してみたい。そこで11月から12月にかけて京都で期間限定のイベント「京都 秋の特別公開」に注目。参道を覆う紅葉が美しい浄住寺をはじめ全6箇所で、通常非公開の文化財を見学できるというから必見! 秋色に染まる見事な名庭とともに貴重な絵画や仏像、建造物を楽しめば、五感が刺激されること間違いなし。この秋は京都を訪れて、充実の休日を過ごしてみては。
苔むす庭に優雅な枝ぶりのモミジが映える皇女ゆかりの尼門跡、宝鏡寺
宮中から贈られた雛人形や御所人形などを伝えることから「人形の寺」として知られ、「百々御所(どどごしょ)」という名を持つ尼門跡寺院。本堂では「上段の間」が特別公開されるほか、江戸時代の画家・狩野探幽(かのうたんゆう)筆と伝わる「秋草図」、日本画家・河股幸和(かわまたゆきかず)筆の現代の襖絵が同時に鑑賞できる。本堂前庭では見事な枝ぶりのイロハモミジの紅葉が、さらに皇女・和宮(かずのみや)が幼い頃に遊んだ「鶴亀の庭」でも紅葉が楽しめる。一面に広がる苔の緑に紅葉の赤が映える美しさに、しばし時を忘れてしまいそう。
11/1~30■宝鏡寺
住所:京都市上京区寺之内通堀川東入百々町547
開催日時:2018年11月1日(木)~30日(金) 10:00~16:00(15:30受付終了)
拝観料:大人600円/小中学生300円(20名以上は1割引)
重要文化財・旧三井家下鴨別邸の庭園を2階から眺められる貴重な機会に
豪商・旧三井家の別邸は下鴨神社の南に位置し、ひっそりとした住宅街に佇む静かな隠れ家的スポットといえる。近代京都の名建築といわれるそのつくりは、主屋、玄関棟、茶室の3棟からなり、主屋の南に深く広がる庭園とあいまって趣ある空間。通常公開されているのは玄関棟と主屋1階、庭園のみだけれど、今回特別に主屋2階が公開となる。2階の縁側からは、ひょうたん型の池とそのほとりでしだれるように赤く色づくカエデ、苔むす庭園を間近に見下ろすことができる。心静かにしみじみと秋を味わえるのは邸宅ならでは。
11/15〜12/4■旧三井家下鴨別邸<主屋二階>
住所:京都市左京区下鴨宮河町58-2
開催日時:2018年11月15日(木)~12月4日(火) 9:00~17:00(16:30受付終了)
見学料:一般600円、中高生400円、小学生300円 (20名以上は1割引) ※通常見学料を含む。
参道の石段を覆う紅葉が美しい浄住寺は知る人ぞ知る紅葉の名所
苔寺や鈴虫寺、地蔵院「竹の寺」にほど近い浄住寺は、およそ1200年前の弘仁元年(810年)に嵯峨天皇の勅願寺として開かれた寺院。門を抜けると、早速鮮やかな紅葉のトンネルに迎えられる。そんな参道の石段を上れば、そこは本堂。本堂後方には位牌堂、開山堂、寿塔(じゅとう)など、中国風の諸堂が階段状に一列に並び、黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院ならではの光景が広がる。さらに、今回特別公開される、仙台藩4代藩主・伊達綱村が幼少期を過ごした屋敷を移築したといわれる「方丈」、紅葉が美しい池庭庭園、狩野永岳筆の衝立「雲龍図(うんりゅうず)」と見どころ満載。
11/17〜12/2■浄住寺
住所:京都市西京区山田開キ町9
開催日時:2018年11月17日(土)~12月2日(日) 9:00~16:30(16:00受付終了)
拝観料:大人600円/小学生300円(15名以上1割引)
庭園も初公開!昭和初期の豪商の贅沢な暮らしぶりが垣間見える和洋折衷の名建築
現在ノートルダム女学院中学高等学校の施設となっている和中庵は、元々昭和初期に近江商人・藤井彦四郎の邸宅として建てられた名建築。通常は一般公開されていないスポットで、東山の中腹に位置し、広大な庭園には小川が流れる自然豊かな好環境に佇む。装飾が施された漆喰の天井に寄木細工の床、アーチ型の窓、大理石の階段など、洋館の随所に散りばめられた造形美へのこだわりは注目すべきポイント。また、洋館2階と和館1階が渡り廊下でつながれ山の傾斜を活かしたつくりで、和館から一望する庭園の紅葉が魅力。
11/23〜12/2■ノートルダム女学院中学高等学校 和中庵
住所:京都市左京区鹿ヶ谷桜谷町
開催日時:2018年11月23日(金・祝)~12月2日(日) 10:00~16:30(16:00受付終了)
見学料:大人600円(15名以上は1割引)※中学生以下無料。
金戒光明寺には紅葉の庭園から絶景の山門楼上まで見どころがいっぱい!
1175年、比叡山の黒谷を下りた法然上人が草庵を結んだことを発祥とする浄土宗の大本山で、幕末の会津藩や新選組ゆかりの地としても知られている寺院。こちらでまず押さえておきたいのが山門。通常非公開の楼上に上がれるのはこの期間だけ。正面の釈迦三尊像、その両脇の十六羅漢像、天井のダイナミックな「蟠龍図」が目に飛び込み、瞬時にその荘厳な世界観に圧倒される。さらに、楼上からの眺望も絶景で、晴れた日には京都市内のみならず大阪のあべのハルカスまで見渡せるそう。
御影堂では、日本を代表する仏師・運慶作と伝わる「文殊菩薩」や遣唐使・吉備真備(きびのまきび)が唐より持ち帰った「吉備観音」を間近で見ることができる。また大方丈では、同寺院に本陣を置いた会津藩主・松平容保(まつだいらかたもり)の「謁見の間」のほか、「虎の間」の仕掛けがある虎の襖絵、伊藤若冲の「群鶏図押絵貼屏風」を鑑賞。さらに、白砂と杉苔の枯山水の「紫雲の庭」や鮮やかな紅葉と池が見事に調和した回遊式庭園も! いずれもこの時季だけの特別公開なので、じっくり楽しんで。
11/9〜12/2■金戒光明寺
住所:京都市左京区黒谷町121
開催日時:2018年11月9日(金)~12月2日(日) 9:00~16:30(16:00受付終了)
拝観料:A)御影堂・大方丈・庭園=大人600円/小学生300円(15名以上は1割引)、B)山門=大人800円/小学生400円(15名以上は1割引)、A+Bセット=大人1200円/小学生600円(団体割引なし) ※セット券での拝観は15:30までにお入りください。
哲学の道からほど近い霊鑑寺で樹齢350年を超えるタカオカエデと回遊式庭園を満喫
代々皇女が入寺されたことから「谷の御所」と呼ばれた尼門跡寺院で、通常非公開の寺院。御所人形など貴重な寺宝からは、尼宮たちの雅な暮らしがうかがえる。後西天皇の院御所の御殿を移築したという書院では、狩野派の作と伝わる「四季花鳥図」などの華麗な障壁画を公開。山裾に広がる回遊式庭園では、見上げれば青空を背景に色づく紅葉の自然美を体感できる。樹齢350年を超えるタカオカエデの紅葉の美しさはもちろん、広がる苔の緑と色とりどりの紅葉、日の光がつくり出す陰影が絶妙。日常にはない景観に身も心もリフレッシュできそう。
11/17〜12/2■霊鑑寺
住所:京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町
開催日時:2018年11月17日(土)~12月2日(日) 10:00~16:30(16:00受付終了)
拝観料:大人600円/小学生300円(15名以上は1割引)
この時季だけの特別公開を巡りながら、趣のある食事処や素敵なカフェでひと息つくのも京都歩きの楽しいところ。市内の観光案内所や主要駅などで配布されているパンフレットや「地下鉄・バス二日券」(1700円)など、便利アイテムのチェックもお忘れなく。この秋は京都まで足を伸ばして、いつもと違う週末を楽しむのもよし!
秋の特別公開をとことん楽しむ!1泊2日おすすめコース
1泊2日のコースは、ホテルが立ち並ぶエリア、四条烏丸駅周辺に宿泊して、秋の特別公開スポットをめぐるイチオシコースです。
■1日目(11;00スタート)
JR「京都駅」→地下鉄「今出川駅」→(2番出口から徒歩10分)→【宝鏡寺】→(徒歩6分)→市バス「堀川今出川」停留所→「河原町今出川」停留所(周辺のダイニングでランチ)→(徒歩5分)→【旧三井家下鴨別邸】→(徒歩3分)→京阪「出町柳駅」→京阪「祇園四条駅」→(徒歩5分)→阪急「河原町駅」→「桂駅」→「上桂駅」→(徒歩15分)→【浄住寺】
※浄住寺の拝観後、時間に余裕があるなら、近隣の地蔵院や鈴虫寺、松尾大社を散策するのもおすすめ。松尾大社からは市バスを利用し四条河原町方面に出れば夜の市街地も満喫できる。
■2日目(9:30スタート)
地下鉄「烏丸駅」→「丸太町駅」→(市バス)→「岡崎神社前」停留所→(徒歩5分)→【金戒光明寺】→(徒歩20分)→【和中庵】→(徒歩1分)→【霊鑑寺】→(徒歩8分)→市バス「真如堂前」停留所→「烏丸丸太町」停留所→(徒歩3分)→地下鉄「丸太町駅」→「京都駅」
※霊鑑寺拝観後、遅めのランチをとって帰路へ。時間に余裕があるなら徒歩15分圏内の「銀閣寺」を訪れ、近隣のおしゃれなカフェでひと息入れるのもおすすめ。
イベントDATA
- イベント名
- 京都 秋の特別公開
- 開催場所
- 秋の紅葉シーズンが始まる11月1日(木)から京都市内の全6箇所で、寺院や名建築、仏像や障壁画など、通常非公開の文化財の数々が特別に公開される。各施設、庭園ごとに違う紅葉の美しさを体感したり、通常お目にかかれないお宝を鑑賞したり、この秋だけの特別な体験ができる。
- 開催日程
- 2018年12月4日(火)まで
※拝観・見学には料金がかかります。
- 公開スポット
- 宝鏡寺、金戒光明寺、浄住寺、霊鑑寺、ノートルダム女学院中学高等学校 和中庵、旧三井家下鴨別邸
※公開スポットにより、日程と時間、料金等が異なります
- お問い合わせ
- 京都市観光協会 TEL.075-213-1717(10:00~18:00)
※旧三井家下鴨別邸は、TEL.075-366-4321へお問い合わせください
- ホームページ
- 京都 秋の特別公開
WRITING/KAZU SASAKI