日々ロケハンに出かけたり、個人的に旅をしたりしているOZの編集部にとっては、毎日が新しい発見や出会いに満ちた小さな旅。ページには載らない裏話やエピソードをお届けします。今回は旅担当になって間もない編集0が初めて訪れる島根県の松江・出雲の旅から、松江と茶の湯文化編
古都・松江は、茶の湯文化が根付く町として知られています。お茶といえば、関東では煎茶やほうじ茶などを思い浮かべますが、ここ松江では抹茶がスタンダード。朝や3時のお茶にも、カジュアルに抹茶を楽しみます。町を歩くと、色とりどりの茶菓子が並ぶ和菓子店が多く、喫茶店でもメニューに抹茶があるほど、暮らしの中に茶の湯文化が息づいています。
そんな松江の茶の湯文化のルーツは、松江藩松平家七代藩主、松平不昧公(1751~1818)です。十代の頃から茶の湯や禅学を熱心に学んで、のちに不昧公の好みが色濃く反映され、今に伝わっています。
今年は、その不昧公没後200年にあたり、「不昧公200年祭」を開催中。期間限定イベント体験や不昧公ゆかりのスポット、茶器、菓子など茶の湯文化に触れてきました。
茶の湯の祖、不昧公が愛した美しき松江城
まずは、不昧公ゆかりの松江城へ。築城時期を特定できる祈祷札が見つかったことから3年前の2015年に国宝に指定され、70年以上かけて国宝指定を受けたとあって、一大ニュースになったのも記憶に新しいはず。
江戸時代から残る現存天守は12で、かつ国宝は、松江城に加えて、松本城、犬山城、彦根城、姫路城の5城のみというから、一度は訪れてみたかった城のひとつでした。4層5階地下1階の造りで、姫路城の次に大きいという壮大さにも圧倒される。
汗ばみながら登った天守も、29畳と広々。眼下には、城の周りにはりめぐらされた掘、遠方には宍道湖などを一望できる。不昧公も見たであろうこの景色を見ながら、松江藩 400年の歴史に思いを馳せて。
松江城
TEL.0852-21-4030(松江城山管理事務所)
住所:島根県松江市殿町1-5
登閣時間:8:30~18:30(4/1~9/30) 8:30~17:00(10/1~3/31) ※最終受付は30分前まで
本丸解放時間:7:00~19:30(4/1~9/30) 8:30~17:00(10/1~3/31)
定休日:無休
料金(登閣料):大人670円 小人280円(小・中学生)
抹茶とお菓子をいただきながら堀川めぐり
松江城を囲む堀は、1611年の一部築城と同時に造られたもの。江戸時代と同じ姿の堀を船で巡れるのは全国でも数少ないそう。約50分の小船での遊覧では、苔むした石垣や松江城を見上げながら、船に揺られてゆったり。今回は不昧公200年祭の特別な茶の湯体験も。船上で抹茶を自分で点てて、おいしい菓子とともにいただきました。作法は気にせず、カジュアルに抹茶を味わう楽しさを満喫するいい機会に。
ぐるっと松江堀川めぐり
TEL.0852-27-0417(堀川遊覧船管理事務所)
住所:島根県松江市黒田町507-1
営業時間:9:00~17:00(3/1~6/30・8/16~10/10) 9:00~18:00(7/1~8/15) 9:00~16:00(10/11~2月末)
定休日:無休
料金:大人1230円(中学生以上) 小人610円(小学生)
※茶の湯堀川遊覧船の詳細は下記HPより
貴重な資料がいっぱい、松江歴史館
次は10分ほど歩いて松江歴史館へ。ここでは、松江藩の歴史400年と城下町の暮らしと文化に触れることができます。松江城で話を聞いたばかりの、国宝指定された時の重要な資料、城の完成時期を確認できる証(祈祷札)のレプリカが見られてちょっと感動。他にも、美術工芸の振興も図った不昧公が育てた陶芸や漆芸、木工芸などの名工たちの作品から茶の湯文化も紹介されている。
さらにこちらの喫茶きはるでは、現代の名工、伊丹二夫さんの芸術的な上生菓子が抹茶といただける上、店内の一角で伊丹さんが上生菓子を作る、鮮やかな職人技も間近にみることができます。歴史館で歴史を学んだあとは、美しいお菓子と抹茶でちょっと休憩を!
松江歴史館
TEL.0852-32-1607
住所:島根県松江市殿町279
開館時間:展示室4月~9月8:30~18:30 10月~3月8:30~17:00(※最終入場は閉館30分前) 喫茶 きはる9:00~17:00
定休日:第3木
観覧料:510円 小・中学生250円
松江城を望む、茶室・明々庵で一服
かつて大名屋敷があった趣ある街並みを歩いて、次に訪れたのは明々庵。松江城を望む、小高い赤山の上にある、不昧公筆の「明々庵」の額を掲げた茶室です。もともとは松江市内にあった、家臣の有澤家本邸に建てさせたもので、その昔、不昧公もしばしば臨まれた席であるそう。まずは敷地内の百草亭で、目の前に明々庵を眺めながら、抹茶と不昧公好みと言われる菓子をいただきます。支配人の森山俊男さんから、茶室や菓子などの話をお聞きしました。
茶室には、定石にとらわれない不昧好みが随所に。炉が切られる場所や中柱がないなど、よくある茶室とは異なる質素で軽快な茶室は、客人に少しでも広く快適な空間を提供したいという配慮がなされているそう。銘菓の「菜種の里」は、菜の花畑に蝶が舞う様を表現したお菓子。こちらは不昧公が名もなかったお菓子に和歌「寿々菜さく 野辺の朝風そよ吹けは とひかう蝶の 袖そかすそふ」を詠んで名をつけたこと、緑色の「若草」は、新緑から濃い緑へ季節に合わせて緑色を変えて楽しんでいたなど、お菓子それぞれに物語がありました。
明々庵
TEL.0852-21-9863
住所:島根県松江市北堀町278
営業時間:4/1~9/30観覧8:30~18:30 お抹茶時間9:50~17:00
10/1~3/31観覧8:30~17:00 お抹茶時間9:50~16:30
※受付終了は、観覧は20分前、お抹茶時間は30分前
定休日:無休
料金:観覧料大人410円 小人200円(小・中学生) 抹茶一服410円
不昧公が眠る、山陰の紫陽花寺
初夏には約3万本の紫陽花が美しく咲き誇る月照寺は、初代から9代までの松平家のお殿様が眠る、松江藩主松平家の菩堤寺。緑で鬱蒼とした境内を歩いて行くと、見事な木工で飾られた廟門の先に不昧公の墓所が見えます。階段を登った少し高い位置にある墓所からは松江城が! 不昧公がここから、今も変わらず、松江城をそして松江の町を見守っているかのように感じられました。
月照寺
TEL.0852-21-6056
住所:松江市外中原町179
拝観料:大人500円、高・中生300円、小学生250円
不昧公好みの鯛めしでご当地ランチ
昼食は、宍道湖の湖畔に佇む庭園茶寮みな美へ。地元の人も折々に訪れる、創業120年余の名店の名物は鯛めしで、不昧公が好まれた献立などの聞き伝えを元に創業時に考案されたという。地元産の仁多米の上に、鯛のそぼろ、玉子の白身と黄身、おろし大根、海苔などを載せ、特製の出汁をたっぷりかけていただきます。上品な出汁と具の組み合わせがなんとも豊かな味わい。松江に来たら外せないご当地グルメのひとつなので、要チェックです。
初めての松江の旅では、不昧公が基礎をつくって現代へ続く、抹茶や菓子をカジュアルに楽しむ松江の茶文化を知ることができたことがいちばんの収穫。明日からの暮らしに簡単に取り入れられる気軽さも嬉しい。そんな魅力いっぱいの松江は、今、不昧公200年祭が開催されているので、この機会に松江ならではの茶の湯文化を体験しに出かけてみませんか?
不昧公200年祭
- 松江の町で茶の旅が楽しめる、美しい菓子や茶会、企画展などの数々の期間限定イベントが開かれる「不昧公200年祭」。ほか不昧公も愛した地元グルメや工芸品、縁結びスポットの紹介など、旅のアイデア満載!
- ホームページ
- 不昧公200年祭HP