パティシエに教わる、オレンジの皮を使ったお菓子「オランジェット」づくり【第3回SDGsイベントレポート】
捨ててしまいがちなオレンジの皮も、アイデアひとつで絶品スイーツに。食品ロス削減に取り組む「セルリアンタワー東京ホテル」が、そんな“もったいない”から取り組んでいるスイーツ「オランジェット」が話題を集めている。今回は12月に開催されたレシピ料理教室の模様と、ホテルの取り組みを紹介します。
更新日:2021/01/15
いつもは捨ててしまう果物の皮を、スイーツに再生
近頃、耳にする機会が多い“食品ロス”。まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物が、日本では年間約612万トン(※)、国民ひとり当たりに換算すると、毎日お茶腕約1杯分(約139g)のごはんが毎日捨てられているという。
ホテル業界でも食品ロス対策は課題になっており、渋谷の『セルリアンタワー東急ホテル』では、“食品ロス”を少しでも減らそうと、 ジュースを絞った後に捨ててしまうオレンジの皮を、フランス菓子「オランジェット」に生まれ変わらせている。
もともとは福田順彦総料理長のアイデアから生まれたもので、毎日約8kgのオレンジの皮を大鍋で柔らかく煮た後、 3回に渡ってコンベクションオーブンで加熱し、チョコレートでコーティングするという手の込んだお菓子。ホテル内のレストランやバーで提供されるほか、ギフトセットとしても販売している。
今回は、このオランジェットのレシピを、パティシエの吉田純さんが家庭でも手軽に作れるように改良し、実際に作っている動画を見ながらポイントなどをレクチャーした。
(※)農林水産省及び環境省「平成29年度推計」より
“もったいない”から生まれた、オランジェットづくりに挑戦!
オランジェットの材料はオレンジの皮、グラニュー糖、チョコレートのみ。まずはオレンジの皮を下茹でからスタート。一度ざるに空け、再度きれいな水で茹でる理由は、皮から出た苦味やアクを取り除くほか、オレンジの皮についたワックスを落とす効果もあるという。
「皮をカットすることで、中まで浸透した農薬も落ちやすくなるんですよ」と吉田さん。
柔らかく茹でた皮を細く刻んだら、シロップで煮る工程へ。ポイントは、弱火で煮続けることと、グラニュー糖を15分おきに、3回に分けて入れること。
「一度に砂糖を入れると、砂糖が食材の水分を引き出して仕上がりが硬くなってしまいます。煮ている間はタイマーをかけながら、ほかの作業をしていても大丈夫ですよ」
皮に透明感が出てきたら火を止め、網を敷いたバットに並べて室温で1晩乾燥させる。翌日はいよいよ、チョコレートコーティングで仕上げ。市販の板チョコを湯煎で溶かしたら、オレンジの皮を1本ずつチョコレートにくぐらせ、クッキングシートに並べる。
「チョコレートを湯煎するときは、お湯がチョコレートの中に入らないようにすることと、温度を上げすぎないように気をつけましょう。温度計を見ながら40~45度を維持するのが理想ですが、温度計がない場合は、下唇に触れてちょっと熱いかな、と感じるくらいの温度が目安です」
チョコレートが乾く前にナッツをまぶしたり、乾き切ってからチョコペンでデコレーションしてもかわいい。ちょっと時間はかかるけれど、材料も工程もシンプルだから、失敗は少なそう。
グリーンコインに街の清掃。ホテルが実践している、SDGsの取り組みについて
改めて、セルリアンタワー東急ホテルのSDGsへの取り組みについて、広報の齋藤さやかさんに教えてもらった。
“街に優しいホテル”を目指すこちらのホテルでは、客室の歯ブラシやカミソリなどのアメニティを使用しなかった場合、相当金額を森林保全活動に寄付する「グリーンコイン制度」や、連泊する際にベッドリネンやタオル類を交換しない「グリーンカード制度」、ホテル内すべての飲食店でプラスチック製ストローの廃止など、さまざまな活動を行っている。
また、食品ロス削減の観点では、開業20周年の節目に、食べ残しが出ないように盛り付けや皿数などを工夫した婚礼メニューを開発。ホテル内にある各レストランの厨房スタッフは、ひとつの食材を無駄なく使い切ることを意識しながらメニューを考えているという。
「中でも、渋谷の街の清掃はホテル開業から約20年間欠かさず行っていて、渋谷区主催の清掃活動にも参加しています。毎週、各部門のスタッフが交代で集まって参加しているんですよ。こうした日々の取り組みは、小さなことに感じるかもしれませんが、ホテル全体で考えると大きな数字になりますので、積み重ねていくことが大切だと思っています」
お菓子作りや食品ロスに関する疑問を教えていただきました
Q.今回のオレンジ以外におすすめの組み合わせ、意外だけどおいしい組み合わせを教えてください
A.レモンや柚子、甘夏など他の柑橘類でもおいしく作れます。皮を煮る際にできるシロップも風味が変わるため、二度楽しめますよ。
Q.本格的なクーベルチュールチョコレートなどではなく、市販のチョコレートでもおいしくできますか?
A.今回のレシピはご家庭で気軽に作れるようアレンジするため、スーパーやコンビニなどで手に入る板チョコのビターを使用しました。湯煎に少しコツがいりますが、レモンや柚子などにはホワイトチョコレートを合わせるのもオススメです。
Q.お菓子づくりが苦手なので好きになるポイントなどがあれば教えてください
A.プリンやババロアなど、少ない材料で簡単に作れるおやつからトライしてみると失敗が少なく、楽しめると思います。ホットケーキミックスなど、市販の万能アイテムの力を借りるのも手です。
Q.卵の白身が残った場合の保存方法や使い道を教えてください
A.ラップと輪ゴムで茶巾絞りのように包み、冷凍保存が可能です。自然解凍して、ハンバーグのつなぎやスープの具として活用できます。
Q.食べられるのに普段捨ててしまう食材で、お菓子を作れるものがあれば知りたいです
A.煮物などで厚めに剥いたサツマイモの皮は、揚げ焼きにしてみつを絡めれば、大学芋風のおやつとして楽しめます。皮の方が栄養豊富とも言われているので、捨ててしまうのはもったいないですね。
参加したユーザーの声
・ゴミにしていたオレンジの皮を使うことをスタートに、他の皮なども再利用できないか?をまず捨てる前に考えるくせをつけたいと思いました(45歳・女性)
・オレンジの皮を使って素敵なスイーツが時間があれば手軽に作れるので、自粛でおうち時間が増えた時期にピッタリのイベントだと思いました(50歳・女性)
・食品ロスは前から気になっていたのでより意識しました(35歳・女性)
・普段より無駄なことは省くよう心がけています。でもまだまだ野菜クズや果物の皮は捨ててしまいます。できることから始めたいと思います(52歳・女性)
・食品ロスやSDGsは、知っているだけでなく行動していくことが大切であることを改めて感じました(27歳・女性)
・今までオレンジの皮を捨てるのがもったいないと思っており、お菓子作りに利用したかったが、方法がよく分からなかったので、それを分かりやすく教えていただけて良かったです(41歳・女性)
今日からできること
【捨てる前に、ひと工夫】
「私たちが常に考えているのは、どうしたら食材を捨てずに使い切ることができるかということ。例えば、コース料理のデザートに、丸くくり抜いたメロンを使うフルーツポンチがあるのですが、くり抜いたあとのメロンはピュレにしてソースや別のデザートを作ったり。今回のオランジェットのように、ちょっとした工夫やアイデアから新しいメニューが生まれることもあるので、皆さんもご家庭でお料理やお菓子を作るときに、ぜひ意識してみてください」と吉田さん。
今回の講師
セルリアンタワー東急ホテル パティシエ 吉田純さん
2008年にセルリアンタワー東急ホテルに入社。
ガルトマンジェ(冷製担当部門)、レストランのデザート担当部門を経験後ペストリー・ベーカーに異動。
現在はウェディングケーキやテイクアウトスイーツなど、ホテル内の全デザートを製作しながら、若手パティシエの育成にも奔走中。
OZmallと一緒にSDGsを知って・考えて・行動してみませんか?
今日から始める小さな一歩
世界とミライとわたし
最近よく耳にするようになった“SDGs”という言葉。
「社会課題の解決」と言われても、ピンとこないけれど、自分の小さな選択と行動が、いつか誰かの笑顔につながるかもしれないから。
その小さな一歩で、私と世界がつながって、きっと昨日よりもちょっといい、大切な人のミライを創れるはず。
この特集をきっかけに、一緒に考えて、今日からなにか行動を始めてみませんか。
PHOTO/MANABU SANO WRITING/MINORI KASAI