【MISIAインタビュー】アフリカへの想いを込めた絵画展を東京・新丸ビルで開催!

更新日:2022/08/29

魂を揺さぶる歌声で多くの音楽ファンから支持され、アジアを代表する歌手として活躍するMISIAさん。音楽活動のかたわら、長い間、社会貢献活動にも熱心に取り組んでいる。2022年8月27、28日、チュニジアでの「TICAD8」開催に合わせ、東京・新丸ビルで「mudef× junior artists MISIA HEART FOR AFRICA 『子ども絵画展“わたしの大切なモノ”』」を開催中。本展覧会への想いやアフリカの魅力について伺いました。

左:©︎リズメディア、右:一般財団法人mudef(提供)

MISIAさんザンビアのメヘバ難民キャンプへ

「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」名誉大使として訪れたザンビア難民キャンプでMISIAさんが気づいたこと

MISIAさんの取り組んでいる社会貢献活動のなかでもとくに、子供たちの未来を支える活動をはじめとしたアフリカとの関わりは深く、2019年には「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」名誉大使に着任。同年、ザンビアのメヘバ難民キャンプを訪問するなど、積極的に活動を続けています。

――開催中の「mudef×junior artists“MISIA HEART FOR AFRICA” 『子ども絵画展“わたしの大切なモノ”』」(以下、本絵画展)には、「TICAD7」の名誉大使として訪れたザンビアのメヘバ難民キャンプ内の学校に通う子どもたちが描いた絵が100枚近くあるそうですね。難民キャンプを訪れた印象や、子どもたちとの交流で心に残ったことを教えていただけますか?

「まず、ザンビアについてですが、アフリカ大陸南部にある内陸国で、8ヵ国に囲まれています。ザンビア自体は、独立後に大きな内戦などはなく治安は安定しています。ただ、これまでに隣接する国々で内戦や革命などが起こり、その都度、ザンビアに多くの難民がやってくる・・・を、1960年代後半から繰り返してきました。

そのため、ザンビアにはたどり着いたばかりの難民から、もう何年も暮らしている人、さらには難民の2世、3世までいます。そうした方々が身を寄せる難民キャンプへ行きましたが、たどり着いたばかりのご家族には、ほとんど持ち物がありませんでした。0から生活をスタートさせるご苦労やお仕事の悩み、親がいる子どもと亡くなってしまった子供など状況もさまざまでした。

難民キャンプには、大きな学校もあり、何ヵ国もの難民の子どもたちが通っていましたし、地元のザンビアの子供たちも一緒に授業を受けていたことに驚きました。せっかくなので、授業に参加させてもらったのですが、JICA海外協力隊の方も授業を担当されていて直接お話を聞けたりしました。

授業の途中、生徒さんが私の歌を日本語で歌って披露してくださる場面も。いくつかある候補から『つつみ込むように』を選んでくれました。歌の後、ぜひ私とやりたいことがあると生徒さんたちが踊り出し、私も輪の中に誘われ一緒に踊りました(笑)。音楽の力は本当に凄いもので、この時間のあと一気に皆との距離が縮まりました」

MISIAさんザンビア難民キャンプへ

――MISIAさんならではの温かな交流ですね。

「ありがとうございます。授業中、『僕たちは争うためにここに来たんじゃない。仲良くするためにここにいるんだ。共に学び合おう』という趣旨の言葉を、大きな声で言い合っていることが印象的でした。難民として違う国に来た子どもたち・・・。だからこそ、学校では『逆境に負けず、この学校で自分とは違ういろんな人と仲良くなる方法を学んでほしい。それがより良い未来を作ることにつながるはず』という想いを込めて教育をしているのだと思いました。

と同時に、子どもの頃から、他国の人とどうすれば仲良く暮らせるのかを学び、考えていることは凄いことだと感銘を受けました。日本では、難民の方に会うことはほとんどありませんから、意識してこういう視点をもち、子どもたちが世界のことに触れる機会を大人は提供しないといけないのかもしれないな、という気付きもいただきました」

MISIAさんがケニア「マゴススクール」へ

ココロに負った傷を癒す助けになる可能性を秘めた“アート”という言葉以外のコミュニケーション

――本展覧会では、MISIAさんが長年サポートを続けるケニア「マゴソスクール」の子どもたちの絵もたくさんあります。同校では、以前にもアート関連のクラスが行われたそうですが、アートは子どもにどのような影響を与えるのでしょうか?

「私たちは、言葉意外にも物事や気持ちを語る・話すのに役立ついろんな方法を持っていると思うのです。瞳や表情、涙、声の調子、身振り手振り、そして音楽や踊りなど。そのなかに、絵を描く、なにかを創造することも含まれるのかなと。
言葉にできない想いは大人にもありますよね。きっと子どもも・・・、なかでも心に傷を持っている子どもは、なおさら言葉にすることが難しいときがあることを私は知りました。そんなとき、アートは、その子の表現を助けるのです。

実は、こんな話を聞いたのです。ある幼い少年は、両親を感染症で亡くし、死後は差別を受けたそうです。以来、人を避けて森で暮らすようになりましたが、ある日、保護されました。怖い記憶から、人を見て卒倒してしまうこともあったとか。そんな少年が好きだった絵を描くことを通して、少しずつ心を開き、言葉も話してくれるようになったといいます。

心に傷がある時、その痛みを誰かに伝えることで乗り越えられることがあります。少年の場合は、言葉にできなかった想いを絵に替えた。アートが、次に進む力をくれたのかもしれませんね。その少年は大人になり、今では子どもたちに絵を教えることもあるそうです。
どんなことを感じているのか、見ているのかを絵で教えてほしいと言われたとき、子供たちの絵はとても饒舌になります。アートは心の表現に影響を与えているとも言えますし、アートは心に未来を描く力をくれるとも言えるのではないでしょうか」

多様でカラフルな魅力を備えた絵画の中から選び出すのに苦労した「MISIA賞」

――本絵画展のテーマは「わたしの大切なモノ」だそうですね。子供たちの作品を見たときの感想、印象をお聞かせください。

「ケニアとザンビアの難民と元難民という、3つの地域で描いてもらったのですが、それぞれ描かれている“大切なモノ”の傾向が違い、興味深かったですね。
ケニアのマゴソスクールは、授業で絵を描くこともあるので多様な絵が並んでいます。子どもたちが伝えたいことと、周りの大人が子どもたちから知りたいことと、お互いに絵を描きながらコミュニケーションを取っているような印象を受けました。

また、ザンビアの難民が多い学校では、お父さんやお母さんのように“人”を描く子が多いのかなと。一方、元難民が住む再定住地域で描いてもらうと家や車が多かったりする。元難民の皆さんは、自分たちで土地を整備して、ようやく家を建てることができました。ですから、その家への思い入れが強いのかなと。ひとつのテーマから、色々なことが感じ取れますね」


――本絵画展では「MISIA賞」も設けられています。選ばれたポイントや、選考でご苦労されたことは?

「どれも魅力的で、とてもとても迷いました。中には、何を描いたか説明のない絵もありましたが、それがまた『何を描いたのかな』『どうして描いたのだろう』と、すごく興味が湧いてしまって。最終的に各学校5作品ほどに絞り、あとは直感に任せて『これだ!』と選びました(笑)。絵は、それぞれの方の視点や好みに大きく左右されるものでもありますので…よろしければ、ぜひご覧になって『あなたの賞』を決めてみてくださいね」


――MISIAさんが、本絵画展の子供たちのように「大切なモノは何ですか」と尋ねられたらどうお答えになりますか?

「平和です。貧困問題や紛争問題、環境問題などは、全てが繋がり合っていると考えています。これらの多くの社会的な問題が全て解決された先にあるものは何かといえば、私は世界平和だと思っているのです」

TICADを契機に50か国以上が集まるアフリカの多種多様な魅力にもっと気づいてほしい

――本絵画展は「TICAD8」パートナー事業に認定されています。これまでに「TICAD7」名誉大使なども務められてこられたMISIAさんが思う、TICADの役割について改めて教えてください。

「TICAD、アフリカ開発会議は、1993年に始まりました。日本政府が主導し、国連や国連開発計画、世界銀行およびアフリカ連合委員会と共同で開催しています。
この“開発”が、そこに住む人にとって幸せなものであって欲しいと願っています。そして、他国の人にとってもその開発が幸せなものになるなら、それはそれで有難いこと。是非たくさん知識を持ち寄ってほしいですよね。SDGs(持続可能な開発目標)に基づいた開発が話し合われ、会議がより良い方向にいくよう、このTICADを多くの方に知っていただけたらと思っています」


――MISIAさんのように、アフリカの方々の目線に立って考えることが大事なのですね?

「アフリカと聞いて、ざっくりとしたアフリカ全体のイメージを浮かべる人はまだ多いのかなと思います。ですが、アフリカには50ヵ国以上の国があり、これまで私自身、ケニマやマラウイ、マリ、南アフリカ、ナミビア、セネガル、ザンビア…と訪れましたが、1つとして同じような国はありませんでした。本当に多種多様で魅力的なのです。それぞれの国、その地域の人たちに合った関係性が結ばれてほしいですし、それはまた、平和の基盤にもなっていくと思うのです」

ファッションや音楽で世界から注目されるクリエイターから、10円玉硬貨まで!アフリカと日本の意外な繋がり

――長年、アフリカの方々と交流を続け、アフリカに関する絵本「ハートのレオナ」を執筆されるなどしてきたMISIAさんから見たアフリカの魅力とは?

「アフリカ発のミュージシャンはどんどんグローバルに活躍していますし、アフリカ出身のデザイナーもパリコレに出展し始めています。魅力は尽きませんし、ますます注目されるのではないでしょうか。カルチャー分野での魅力だけでも尽きることはありません。

身近なところでは、カカオやコーヒーのほかに、日本で食べられるタコの6割以上はアフリカからの輸入です。ルイボスティは南アフリカでしか栽培できない植物ですし、近年、コスメにも使われるシアバターもアフリカの国々からやってきているものです。さらには、10円玉硬貨の原材料・銅の多くはザンビアから、大ブームになったタピオカの原料であるキャッサバはアフリカでも栽培されています。スイカやオクラの原産もアフリカ・・・と、私たちは知らずにアフリカの魅力に触れているかもしれませんね。
 

――今後、日本とアフリカの繋がりにどんな未来を期待していますか?

「国も人も、それぞれに良いところも違いますし、ゆえに、学び合えることはたくさんあると思います。抱えている問題もありますが、協力できることは協力し、私たちもそこから学ばせてもらう気持ちを忘れずに手を携えて取り組めば、互いによりよく発展できるのではないのかなと期待しています」

「mudef× junior artists MISIA HEART FOR AFRICA 『子ども絵画展“わたしの大切なモノ”』」見どころ

――では、最後に、本絵画展の見どころや、どんなところを意識するとより深く楽しめるかアドバイスをお願いします。

「絵画展でもHPでも説明されていますが、ぜひ、子どもたちの背景を知って、その絵を見ていただきたいですね。そうすると違ったものが見えたり、感じるのではないでしょうか。
また、ご覧になる前に、あなたにとって『大切なモノ』を想像しておいていただくのもいいですね。同じなのか、まったく違うのか・・・、その違いを楽しむこともできますし、絵からは子供たち一人ひとりの生活も垣間見えます。人が描かれてる絵なら、服装や人物の動きの違いが楽しめますし、植物を描いたものにはダイナミックなものが多くエネルギーを感じます。カラフルで心惹かれる色使いも注目してみてください。絵を通して、ぜひ子どもたちの心に触れて欲しいですね」

PROFILE

イベント名
mudef× junior artists MISIA HEART FOR AFRICA 「子ども絵画展“わたしの大切なモノ”」
開催場所
新丸ビル 7F 丸の内ハウス ライブラリー (東京都千代田区丸の内 1-5-1)
開催日程
2022年8月8日(月)〜2022年9月30日(金) (開催時間は丸の内ハウスの営業時間に準じます)
展示内容
子どもたちの絵の原画 249 点、MISIA メッセージパネル、 子どもたちの紹介パネル、現地活動写真など
会場協力
丸の内ハウス 〈https://www.marunouchi-house.com/〉

WRITING/YUKO KITSUKAWA、PHOTO/一般財団法人mudef(提供)

※記事は2022年8月29日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります