ドッグフードの原材料一覧と表示の読み方まとめ!危険な原材料はある?

今与えているドッグフードには、どんな原材料が使われているのだろう。大切な愛犬が口にするものだからこそ、フードの安全性が気になる人も多いのでは。ドッグフードは商品によってさまざまな原材料が使われており、品質や加工方法も異なる。この記事では、ドッグフードの原材料を細かく分類し、各分類の定義や主な食材をご紹介。原材料欄の読み方や、ドッグフードを選ぶ際にチェックしたいポイントも解説するので参考にして。

更新日:2023/06/10

お話を聞いたのは・・・

「chicoどうぶつ診療所」獣医師 林美彩さん

酪農学園大学獣医学部卒業。大学卒業後、自身が代替療法と出会ったことで、動物の体に優しい治療法や食事・環境の見直し、飼い主の心のケアの大切さ等を伝えていくため、2018年に『chicoどうぶつ診療所』を開業。往診を中心に、精力的に診療を続けている。

<著書>
獣医師が考案した 長生き犬ごはん」(世界文化社)2019/12/18
獣医師が考案した 長生き猫ごはん」(世界文化社)2020/11/13
『獣医師が考案した一汁一菜長生き犬ごはん こだわりの安心レシピ&作り置きOK!』(世界文化社)2022/1/26

<公式サイト・SNS>
chicoどうぶつ診療所HP
Instagram:@chico_ah_323
Amebro:https://ameblo.jp/tinkerbell19850323/

1.まずは知っておこう!ドッグフードの原材料一覧

ドッグフードには多くの原材料が使用されている。ここでは、ドッグフードの原材料を「ペットフード安全法」の分類カテゴリ別に一覧で解説する。各分類のうち、主にドッグフードに使用される食材についても記載しているため、原材料をチェックする際の参考にして。

1-1.動物性原料

動物性原料とは、ドッグフードの主なタンパク源になるもの。肉食寄りの雑食である犬にとって、動物性原料は消化しやすく嗜好性が高い食材。より細かく分類すると、肉類、魚介類、卵類、乳類の4種類がある。

肉類

肉類とは、哺乳動物や鳥の肉、内臓と体の一部から生じるすべての副生物のこと。動物の肉を使用したものはすべて肉類に分類される。多くのドッグフードでは主原料に肉類を配合しており、フードを作るうえで欠かせない原料といえる。

主に配合される食材
チキン/ターキー/ビーフ/ポーク/馬肉/ラム/ウサギ/カエル/カンガルー/ダック/チキンエキス/ビーフパウダー/ミートミールなど

魚介類

魚介類とは、魚類、貝類、甲殻類、軟体動物とその加工物および加工副産物のこと。魚介類を主原料にしたドッグフードは低脂質なものが多く、体重管理が必要な犬や、肉類にアレルギーがある犬用として好まれやすい。

主に配合される食材
サーモン/オーシャンフィッシュ/サバ/タラ(白身魚)/マグロ/カツオ/フィッシュミール/フィッシュエキスなど

卵類

卵類とは、鳥類の卵および加工物、加工副生物のこと。鶏卵は完全栄養食の代表的な食材であり、タンパク質やミネラル、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでいる。
ドッグフードには主に鶏卵が使用されるものの、鶉やアヒルの卵、ブランド卵を配合しているものもある。

乳類

乳類とは、生乳およびその加工物と加工副生物のこと。乳類はタンパク質やカルシウムが豊富で、犬の嗜好性も高い食材。ドッグフードには主に牛の乳が使用される。

主に配合される食材
脱脂粉乳/ホエイパウダー/チーズ/ミルクカルシウム/ミルクカゼイン/全脂乳/ホエーなど

1-2.植物性原料

植物性原料は、ドッグフードの炭水化物源や繊維源として配合される。安価ながらビタミンやミネラルが豊富で、食材のバリエーションも多い。タンパク源として使用されることもあるが、ドライフードにおいてはつなぎ役として配合されることが多い。

穀類

穀類とは、穀類の穀粒(大きな粒)、挽き割り(中くらいの粒)、穀粉(小さな粒)およびその加工物のこと。犬の体内では主にエネルギー源として働く。なお、ドッグフードに使用される穀類は消化しやすいようアルファ化されており、適量であれば問題なく消化できる。

主に配合される食材
トウモロコシ/マイロ/小麦/大麦/玄米/エン麦/小麦粉/パン粉/米粉/コーンフラワー/オートミールなど

豆類

豆類とは、豆そのものやその加工物、および加工する際に出た副生物のこと。炭水化物をはじめ、タンパク質や食物繊維も豊富で、植物性原料のなかでも栄養価が高い。ドッグフードでは穀物不使用のグレインフリーフードの原料としてよく使用される。

主に配合される食材
エンドウマメ/ソラマメ/大豆/大豆ミール/脱脂大豆/きなこ/大豆粉/おから/小豆など

イモ類

イモ類とは、根菜類の一部であるイモ類に分類されるものやその加工物、および加工時に生まれた副生物のこと。食欲繊維が豊富で腹持ちもよく、ドッグフードでは主に炭水化物源として使用される。

主に配合される食材
ジャガイモ/サツマイモ/タピオカなど

野菜類

野菜類とは、食用となる草本植物やその加工物全般のこと。食べる部位によって「果菜類」「葉菜類」「根菜類」の3つに分類され、食物繊維源やビタミン、ミネラルが豊富。動物性原料にはない栄養素を摂取する際に役立つ。

主に配合される食材
カボチャ/トマト/ショウガ/ニンジン/ブロッコリー/アスパラガス/ホウレン草など

でん粉類

でん粉類とは、原料植物の種実、幹、塊茎、塊根に含まれる貯蔵でん粉を精製したもののこと。体内では主に糖に分解され、エネルギー源として働く。ドッグフードではコーンスターチやポテトスターチ、タピオカでん粉を主に使用する。

種実、果実類

種実とは、植物の固い殻で覆われた堅果(けんか)や種子のこと。ドッグフードに使用される食材としては、アーモンドやゴマ、落花生、チアシード、カボチャの種などがある。

一方、果実類とは果実とその加工物を指す。ラズベリーやブルーベリー、リンゴ、バナナなどはドッグフードにもよく使用されており、栄養価や犬の嗜好性が高い。

そのほか(藻類、キノコ類)

藻類とは、海藻とその加工物のこと。ドッグフードには昆布、ワカメ、ひじき、クロレラ、寒天、カラギーナンなどが主に使用される。

キノコ類は、子実体(しじつたい)を有する菌類全般を指す。ドッグフードの原料としてはシイタケ、マイタケ、エノキ、シメジ、マッシュルームなどが使用されることが多い。

1-3.糖類

糖類とは、栄養学的に「糖質(炭水化物)」と呼ばれるもの全般のこと。具体的には、ぶどう糖(グルコース)や果糖(フルクトース)、オリゴ糖類、水飴などがある。

1-4.油脂類

油脂類とは、植物から取れる油および動物から取れる脂、または加工油脂のこと。油脂の抗生物質である脂肪酸なども油脂類に含まれており、エネルギーの供給源となるほか、皮膚の健康維持や嗜好性アップなどに役立つ。

主に使用される原料
牛脂/魚油/ココナッツオイル/サーモンオイル/鶏脂肪/大豆油など

1-5.添加物

添加物とは、ドッグフードの製造過程または加工や保存の目的で使用されるもの。ドッグフードの添加物はペットフード安全法によって含有量の上限が決められており、規定に従って製造された商品であれば危険性はないといわれている。
ここでは添加物を目的ごとに3つに分類し、それぞれをご紹介。

栄養の補強を目的としたもの

食材では補え切れない栄養素を補完するために使用するもので、栄養添加物と呼ばれる。総合栄養食のほとんどに配合されており、安全性が高いのが特徴。無添加のドッグフードにも配合されていることが多い。

主な添加物の名称
ビタミンC(アスコルビン酸)/MSM/Lカルニチン/塩化カリウム/塩化コリン/グルコサミン/コンドロイチン/タウリン/乳酸菌など

品質の保持を目的としたもの

ドッグフードの鮮度や風味など、品質が落ちるのを防ぐ目的で使用されるもので、合成添加物と天然添加物がある。PH調整剤や保存料、酸化防止剤などの添加物がこれに当たり、天然添加物はより安全性が高いといわれている。

主な添加物の名称
ソルビン酸/BHT/BHA/没食子酸プロピル/ローズマリー抽出物/トコフェロールなど

見栄え、食感の向上を目的としたもの

ドッグフードの見た目や食感、食いつきを高める目的で配合されるもの。着色料や増粘安定剤、膨張剤、調味料、香料などの添加物が分類される。

主な添加物の名称
赤色2号、亜硝酸ナトリウム/グリシリジン・アンモニエート/ソルビトール/トレハロースなど

2.なるべく避けたいドッグフードの原材料

日本にはペットフードの安全性を確保するための法律「ペットフード安全法」がある。日本国内で流通しているドッグフードは、製造方法、表示基準、成分規格について法律に定められた規定を満たしている。使用できる添加物の種類や量も決められていて、それを超えたものは販売できない。

過剰に摂取した場合は発がん性や体調トラブルなどを引き起こすと報告されている添加物もある。また、安全性が高い原材料であっても、犬の体質によっては体調不良を起こす可能性もゼロではないので注意しておきたい。ここでは、摂取をなるべく避けたいドッグフードの原材料を4つ紹介する。

2-1.副産物(副生物)

副産物とは動物の体のうち「内臓など肉と定義された部分以外」のことで、副生物は家畜の原皮を除いた部分を指す。副産物と副生物自体はさまざまな栄養素が含まれる原材料であるものの、具体的にどんな動物の副産物(副生物)かわからないのは不安。

愛犬に食物アレルギーが疑われる症状が出た場合、避けるべき食材がわからず迷ってしまう可能性もある。食物アレルギーはどんな犬にも発症する可能性があるだけに、原材料欄に「副産物(副生物)」とだけ記載されているドッグフードは避けたほうが安心。

2-2.発色剤

発色剤とは、主に肉類の色を赤く鮮やかに見せるための人工添加物。例えば、主な発色剤である「亜硝酸ナトリウム」は人用のソーセージやハムにも使用されている一方で、発がん性との関係が疑われている。
犬は赤色を認識できないとされるため、発色剤は不要な添加物といえる。将来のリスクを考えると可能な限り摂取を避けたほうが無難。

2-3.一部の着色料

着色料とはドッグフードに色を付ける目的で使用される添加物で、天然由来のものから人工的なものまで複数の種類が存在する。このうち、人工添加物である「赤色○号」「青色○号」「黄色○号」「二酸化チタン」など一部の着色料は安全性が低いといわれており、犬の健康を害する可能性も考えられる。

着色料を使用したフードやおやつを与える際は、「ビートレッド」や「カラメル1」など、天然由来の添加物を配合したものを選びたい。

2-4.一部の保存料、酸化防止剤

保存料と酸化防止剤はどちらもドッグフードの品質を保持する目的で使用されており、人工のものと天然由来のものがある。
人工的に作られた保存料、酸化防止剤のうち、「安息香酸ナトリウム」や「亜硫酸ナトリウム」「エトキシキン」「BHA」「BHT」など一部の物質は体への負担や病気リスクなどが示唆されているため、できる限り摂取は避けたい。

一方、「クエン酸」や「ローズマリー抽出物」など天然由来の保存料、酸化防止剤であれば安全性は高いと言われている。ドッグフードを探すときは、なるべく天然由来の保存料および酸化防止剤が使用されたものから選ぶのがおすすめ。

3.ドッグフードの原材料を見るときに知っておきたいこと

ドッグフードのパッケージには、情報をきちんと表示しなければならないという決まりがある。愛犬にとってよりよい食事を選ぶためにも、ドッグフードの原材料欄について正しい知識を持っておこう。

3-1.重量の割合が多い原材料ほど前に表示される

ドッグフードの原材料欄において、公正競争規約では「原材料に占める重量の割合の多い順に記載すること」というルールが定められている。つまりドッグフードの原材料欄をみれば、どの食材が最も多く含まれているのか確認できるということ。

ただし、原材料の重量には水分も含まれるため、原材料欄の先頭に記載されているからといって必ずしもいちばん量が多いというわけではない。肉でいうと、生肉を使用しているか乾燥肉を使用しているかによっても重量は変わるため注意しよう。

3-2.表記の表現に決まりはない

原材料の表記が法律で定められているアメリカと違って、日本では原材料表記の表現に決まりがない。同じ鶏肉を配合しているドッグフードであっても、パッケージへの表記は「チキン正肉」や「フレッシュチキン」など、メーカーごとに異なる。ドッグフードを選ぶときは、どんな食材をどのように加工しているのか確認して。

3-3.添加物以外の原材料は分類名で表示しても構わない

日本の法律では、添加物以外の原材料は分類名で表示してもよいとされている。例えば鶏肉と牛肉を使用したドッグフードは、パッケージに詳細を書かず「肉類」と表示しても問題はない。
各原材料の配合量が少なくても、分類名で表示すれば原材料欄で前に記載しやすくなる点は覚えておいて。仮に「チキン、ビーフ、畜肉副産物」を含んでいる場合でも、まとめて「肉類」と表示することで含有量が多くなり、前のほうに表示できるようになる。

3-4.仕入原材料の添加物については表示義務がない

チキンエキスなどの加工原料をはじめ、仕入原材料の添加物についてはパッケージへの表示義務がない。仕入原材料に添加物が使用されていたとしても、必ずしも記載する必要はなく、「添加物不使用」などと表記できる。
できるだけ添加物を避けたい場合は、仕入原材料の添加物についても公表しているドッグフードを選ぼう。

4.原材料表示をチェック!高品質なドッグフードの選び方

ここでは、高品質なドッグフードを選ぶうえでチェックしたいポイントを解説。原材料表示を見てわかることをまとめているため、フード選びの参考にしてみて。

4-1.アレルギー食材は入っていないか

まずは、愛犬のアレルギー食材が使用されていないか確認しよう。「肉類」や「穀類」など分類名で表示されているドッグフードの場合、具体的にどんな食材が入っているかわからない。思わぬ体調不良を防ぐためにも、愛犬にアレルギーがある場合は必ずフードの原材料欄を確認し、アレルゲンが含まれていないかチェックすることが大切。

4-2.使用原材料がはっきり明記されているか

原材料表記の表現に決まりがない日本において、不明瞭な表記のドッグフードには低品質なものも少なくない。
将来的な病気のリスクを避けるためには、「家禽類」や「動物性脂肪」などあいまいに記載されている商品は避けるとよい。「鶏肉」「ラム肉」「牛脂」「鶏脂肪」など、できるだけ具体的に書かれているものを選ぼう。

4-3.犬の健康に不要な添加物が使われていないか

ドッグフードの見栄えをよくする着色料や発色剤などの添加物は、犬の健康上不要といえる。このほか人工香料や人工調味料などの添加物も、なるべくなら摂取は避けたい。犬によっては添加物が体に合わず、胃腸に負担がかかったり体調を崩したりすることもあるため、可能な限り避けるのがおすすめ。

5.ドッグフードの原材料に関するQ&A

アレルギーを起こしやすい原材料はある?

牛肉、乳製品、鶏肉、小麦は犬のアレルゲンになりやすい食材といわれています。特にアレルギーのリスクが高いのは牛肉で、ついで乳製品、鶏肉、小麦の順番にアレルギー性が高いといえるでしょう。
ただし、どの食材に反応するかは犬によって異なるため、愛犬の様子を見て判断することが大切です。

安いドッグフードは原材料の質が低いの?

安いドッグフードだからといって、必ずしも低品質な原材料を使っているわけではありません。ドッグフードの値段は原材料の質のほか、使用原料や加工方法、パッケージデザインや輸送コストなどによって変わります。原材料の質を下げない分、肉などコストがかかる原材料の配合量を少なくして価格を抑えているドッグフードもあるため、値段は参考程度に確認してください。

グレインフリーとグルテンフリーの違いって?

グレインフリーとは、米や小麦、大麦、トウモロコシなどの穀物を全般的に使用していないという意味で使われます。対してグルテンフリーは小麦を使用していないという意味で、米や大麦などの配合有無は問いません。愛犬に小麦アレルギーがある場合はグルテンフリー、穀物全体にアレルギーがある場合はグレインフリーのドッグフードを選びましょう。

○○ミールはよくないって本当?

ペットフードに使用される「○○ミール」はペットフード安全法で一定の基準が設けられており、危険性のある食材ではありません。しかし、なかには品質が低いものもあるため、公式サイトなどで安全性や品質について説明している商品を選ぶことをおすすめします。

なお、ミールとは生肉を乾燥させた肉粉のことで、パッケージには主にチキンミールやフィッシュミールなどの名称で記載されています。これらの原材料は生肉に比べてタンパク質含有比率が高く、栄養成分値にムラが少ないのが特徴です。

ちなみに、「チキンミールには鳥のとさか、くちばし、羽などが入っているのでは?」という意見も聞かれます。日本のドッグフードメーカーの多くが参考にしているAAFCO(米国飼料検査官協会)の定義によると、これらは「鶏副産物ミール(Chicken By-Product Meal)」と言われています。チキンミールにはとさか、くちばし、羽などは使われていません。

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※記事は2023年6月10日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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