グレインフリーのドッグフードとキャットフードのデメリットは?注意点もご紹介

ペットフードを選ぶ際に気になる「グレインフリー」の表示。「グレインフリーは体によい」となんとなく思っている飼い主さんもいるかも。でも、グレインとはなにを指すのか、デメリットはないのかなど、詳しくは知らない人も多いのでは。実は、グレインフリーのペットフートには知っておくべきデメリットが。今回はグレインフリーペットフードのデメリットやメリット、注意点、選び方をご紹介する。

更新日:2023/06/01

お話を聞いたのは・・・

「chicoどうぶつ診療所」獣医師 林美彩さん

酪農学園大学獣医学部卒業。大学卒業後、自身が代替療法と出会ったことで、動物の体に優しい治療法や食事・環境の見直し、飼い主の心のケアの大切さ等を伝えていくため、2018年に『chicoどうぶつ診療所』を開業。往診を中心に、精力的に診療を続けている。

<著書>
獣医師が考案した 長生き犬ごはん」(世界文化社)2019/12/18
獣医師が考案した 長生き猫ごはん」(世界文化社)2020/11/13
『獣医師が考案した一汁一菜長生き犬ごはん こだわりの安心レシピ&作り置きOK!』(世界文化社)2022/1/26

<公式サイト・SNS>
chicoどうぶつ診療所HP
Instagram:@chico_ah_323
Amebro:https://ameblo.jp/tinkerbell19850323/

1.グレインフリーってなに?

グレインフリーの「グレイン(grain)」は穀物のこと。つまり、グレインフリーとは穀物不使用という意味。
穀物の定義は諸説あり、大きく以下の3種類に分けられる。

禾穀(かこく)類:大麦や小麦、米など
菽穀(しゅくこく)類:大豆や小豆、落花生など
疑穀類:蕎麦やキヌアなどその他の双子葉植物

一般的に、ペットフードにおけるグレインフリーは禾穀類(主にイネ科の種子)が含まれていないものを指す。穀類を一切使用していないものはもちろんだけれど、大豆やキヌアなどが含まれていてもグレインフリーフードと呼ぶことがあるみたい。メーカーによって解釈が異なる場合があるから、購入する際は注意してみて。

2.グレインフリーペットフードのデメリット

2-1.肝臓や腎臓への負担が増えやすい

グレインフリーフードは小麦や米などの穀類の代わりに豆類や肉類を使用するため、結果として高タンパクになる場合がある。
タンパク質は消化の過程でアンモニアへと変化。有害なアンモニアは肝臓で尿素に変化し、腎臓で尿として体外へ排出する仕組みのため、高タンパクになると肝臓や腎臓に負担がかかってしまう。

そのため、肝臓や腎臓の機能が低下しているペットに、グレインフリーのフードはおすすめできない。心配な場合は獣医師に相談するのがよさそう。
また、高齢のペットに与える際も気をつけて。人間と同じように、高齢のペットにも高タンパクな食事はあまり好ましくない。高齢になると運動量も減り、腎臓の病気にかかるリスクも高まってしまう。

2-2.軟便や下痢になる可能性がある

グレインフリーのペットフードに変えると、しばらくの間軟便や下痢が続く場合がある。穀物に多く含まれる不溶性食物繊維には、便を固めたり量を増やしたりする効果がある。穀物がなくなることで不溶性食物繊維の摂取量も減ると、便が軟らかくなりやすい。

2-3.一般的なペットフードよりも価格が高い

穀物が入っていないグレインフリーフードは、一般的なペットフードよりも価格が高い傾向にある。小麦や米などの穀物は一度に大量栽培でき、価格を比較的抑えられる。しかし、穀物の代わりに用いられることが多い豆類やじゃがいもなどは、穀物に比べて値段がかさみやすい。

グレインフリーフードは添加物やほかの原材料にこだわったものも多く、穀物でかさ増しもできないことから、一般的なペットフードに比べると価格を上げざるを得ないよう。

3.グレインフリーペットフードのメリット

3-1.穀物アレルギーの犬でも食べられる

穀物アレルギーを持つペットにとって、グレインフリーは大きなメリット。実際に穀物アレルギー、なかでもグルテンを含む小麦にアレルギーを持つペットは多い。

アレルギーのあるペットに穀物が入ったフードをあげてしまうと、嘔吐や下痢、皮膚炎などの症状を引き起こすことがある。獣医師と相談のうえで活用を検討してみて。
また、グレインフリーはアレルギーを持つペットへのメリットになるが、アレルギーの「予防」になるわけではないので注意が必要。

3-2.消化によくお腹のトラブルを減らせる

犬はもともと肉食寄りの雑食だけれど、穀物を消化できないわけではないことがわかっている。
しかし、肉食動物である猫にとって、穀類は消化吸収しやすいものではない。食べられないわけではないものの、食べた穀物の3~4割しかエネルギーとして活用できないうえ、草食動物や雑食動物に比べて消化に時間がかかりやすい。

猫は大腸があまり発達しておらず、腸が短い。肉や魚などタンパク質や脂肪の消化吸収は得意だけれど、食物繊維は効率よく消化吸収しにくい構造。穀物には不溶性食物繊維が多く含まれるため、消化器官に負担がかかり、便秘や消化不良の原因になることも。その点、グレインフリーフードは穀物を使用していないため、消化によいと言える。

4.グレインフリーのペットフードを選ぶべきなのはどんな人?

グレインフリーのペットフードがおすすめなのは、穀物アレルギーを持っている犬や猫。小麦やとうもろこしなどアレルゲンになりやすい穀物を使用していないため、症状の発症を防げる。

そのほか、動物性タンパク質の多い食事にしたい場合にもグレインフリーがおすすめ。基本的に犬と猫には、動物性タンパク質量が多い食事が望ましい。なかでも、特に運動量が多い子は、運動量が一般的な子と比較し、筋肉をしっかりと維持するために動物性タンパク質量が多い食事がよい。
グレインフリーのフードは肉や魚などの配合率が高い傾向にあり、動物性タンパク質を効率よく摂取できる。

5.グレインフリーのドッグフード、キャットフードを選ぶポイント

5-1.不要な添加物が使われていないものを選ぶ

グレインフリーのペットフードは価格が高い傾向にあるけれど、安い商品を選ぶのはおすすめしない。あまりにも安いものには、不要な添加物や有害性のある添加物が使われている場合もある。
口にしたからといってすぐに体に悪影響が出るものではないけれど、毎日与えるフードだからこそ気をつけたい。特に以下の添加物には注意してみて。

エトキシキン、BHA、BHT(酸化防止剤)
赤色3号、赤色40号、赤色102号、青色2号、青色102号(着色料)
ソルビン酸カリウム、亜硝酸ナトリウム(保存料)

5-2.良質なタンパク質を含むものを選ぶ

穀物が含まれない分、原材料は安全性の高い肉類や魚類の割合が多いものを選びたい。価格の安いペットフードのなかには、質の悪い材料が使われている場合がある。
できるだけ安全性の高いペットフードを選ぶには、鶏肉、ラム肉、牛肉といった肉の種類がはっきり記載されているものに注目するとよい。また、人間でも食べられるような品質「ヒューマングレード」の表示があるものもおすすめ。

5-3.栄養バランスを考えて選ぶ

結局のところ、グレインフリーかどうかでペットフードの良し悪しは判断できない。だからこそ栄養バランスを見て判断することが重要。
おすすめなのは、肉類や野菜、果物などがバランスよく配合されたペットフード。持病がある、体調がよくないなどのペットは獣医師の指示に従う必要があるものの、健康なペットには人間の食事と同じように栄養パランスが大事だと言える。

6.グレインフリーとグルテンフリーの違いは?

グレインフリーと一見似たものに「グルテンフリー」がある。グレインフリーとグルテンフリーはよく間違われやすい。ペットフード選びにおいては、これらの違いを知っておくことも大切。

グレインフリー:グレイン(穀物)を使用していない
グルテンフリー:グルテン(麦類のタンパク質の一種)を使用していない

グルテンフリーは穀物の中でも「麦類のタンパク質不使用」と限定的。グレインフリーはグルテンを含む穀物を使用していないため、グルテンフリーでもあると言える。

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※記事は2023年6月1日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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