手作りドッグフードにおすすめの食材や注意点は?不足しやすい栄養も

馬肉ドッグフード おすすめ

愛犬に手作りドッグフードをあげたいけれど、どんなことに注意すべきかわからない人も多いのでは。いちから自分で作るからこそ、「栄養バランスが崩れないか」「かえって健康に悪いのではないか」と心配になってしまうかも。そこで今回は、ドッグフードを手作りするメリットやデメリット、おすすめの食材や注意点を解説。不足しやすい栄養素も紹介するため、手作りご飯に興味がある人は参考にして。

更新日:2023/04/20

お話を聞いたのは・・・

「chicoどうぶつ診療所」獣医師 林美彩さん

酪農学園大学獣医学部卒業。大学卒業後、自身が代替療法と出会ったことで、動物の体に優しい治療法や食事・環境の見直し、飼い主の心のケアの大切さ等を伝えていくため、2018年に『chicoどうぶつ診療所』を開業。往診を中心に、精力的に診療を続けている。

<著書>
獣医師が考案した 長生き犬ごはん」(世界文化社)2019/12/18
獣医師が考案した 長生き猫ごはん」(世界文化社)2020/11/13
『獣医師が考案した一汁一菜長生き犬ごはん こだわりの安心レシピ&作り置きOK!』(世界文化社)2022/1/26

<公式サイト・SNS>
chicoどうぶつ診療所HP
Instagram:@chico_ah_323
Amebro:https://ameblo.jp/tinkerbell19850323/

1.手作りドッグフードがおすすめな理由とは?期待できる効果も解説!

手作りドッグフードとは、人間の食事と同じように肉や野菜などで作る犬用のご飯のこと。自分で選んだ食材だけで調理できるため安心感があり、体調管理しやすいという特徴がある。
また、手作りの場合は愛犬のアレルギー食材を排除できるので、アレルギーを軽減、抑制できるのもメリット。栄養バランスや食材の鮮度などを考慮するのが大前提だが、アレルギーなどの体質改善も期待できると言われている。
そのため手作りドッグフードは、「より健康的な食事をあげたい」という飼い主さんを中心に広く支持されている。

2.手作りドッグフードのメリット、デメリット

犬は大切な家族の一員なので、少しでも元気で長生きしてほしいと思うのは愛犬家共通の願い。手作りドッグフードを与えるメリットが大きいのなら、ぜひ与えたいと思う人も少なくないはず。
とはいえ手作りドッグフードにはデメリットもあり、なかなか実践まで踏み切れないことも。作り方次第では犬と飼い主両方に負担がかかる可能性もあるため、メリットとデメリットはしっかりと把握しておこう。

2-1.手作りドッグフードのメリット

まずは手作りドッグフードのメリットを解説。手作りドッグフードには市販のドッグフードにはない魅力的な特徴がたくさんある。

水分が豊富

市販のドライフードが水分量10%以下と低いのに対し、手作りドッグフードには70%程度の水分が含まれている。食事をするだけで自然に水分摂取ができるため、尿路結石症や膀胱炎など泌尿器疾患の予防に役立つ。
普段からあまり水を飲まない犬の食事としてはもちろん、飲水量が低下しがちな冬場や夏場の脱水症対策にもおすすめできる。

犬の嗜好性が高い

手作りドッグフードは犬の嗜好性が高く、「普段よりよく食べてくれた」という声も多い。市販のドライフードと違って食材そのものの風味が残るため、偏食癖のある犬や体調不良の犬にもおすすめ。
実際、動物病院では食欲のない犬に茹でたささみなどを与えることもある。

体調や年齢に合ったものを与えられる

犬の年齢や体型、体質に合わせてレシピを変えられるのは、手作りドッグフードならでは。食材の種類や量、柔らかさなどを自由に調整できるため、いつでもベストな食事を与えられる。
食材の組み合わせや調理方法によって栄養素の吸収をアップさせるなど、食べ合わせを考慮しつつ作れるのも奥が深い。

2-2.手作りドッグフードのデメリット

メリットばかりのように思える手作りドッグフードだが、もちろんデメリットもある。毎食のご飯をいきなり手作りにするのは難しいと感じたら、まずはトッピングから始めてみるのもひとつの手。無理のない範囲で楽しみながらチャレンジしよう。

栄養バランスが偏りやすい

ドッグフードを手作りするなら、摂取カロリーや栄養バランスは自分自身で計算しなければいけない。犬に必要な栄養素のなかには、ビタミンA、鉄、亜鉛、カルシウム、銅のように、食材から十分量摂取するのが難しいものもある。
そのため知識がないと、栄養バランスが偏りやすい面も。適当に作ってしまうと栄養過多や栄養不足を引き起こす可能性があるため、栄養バランスの乱れには注意しよう。

作る手間がかかる

すぐに与えられる市販フードと違い、手作りドッグフードは調理の手間がかかる。必要な栄養素を満たしつつ犬が食べられない食材を避けての調理は、慣れるまで大変と感じる人も少なくない。栄養学の専門知識も必要なため、手作り食や犬の食事について学ぶ時間が取れない人は難しいと感じるかも。

歯垢が付着しやすい

手作りドッグフードのように水分量が多い食事は、ドライフードに比べて食べかすが口腔内に残りやすく、歯垢が付着しやすいと言われている。犬の場合、歯垢から歯石に変わるまでの時間はたった2~3日ほどしかない。

歯周病などの口腔内トラブルを避けるためにも、歯磨きやデンタルガムで日頃から歯をキレイに保つ習慣をつけて。とは言え手作りドッグフードに限らず、どのようなフードを与える場合でもこまめなデンタルケアは必要。

冷蔵や冷凍が必要で長期保存が大変

人間用の食事と同じく、手作りドッグフードは常温での長期保存ができない。長く保存したい場合は冷蔵庫や冷凍庫での保存が必要。ただし添加物や調味料を使っていないぶん、冷蔵なら2日、冷凍なら2週間程度しか保存できない。

また、大量に保管する場合はそれなりの保存スペースもいる。旅行や災害時など外に持ち出す際は保冷バッグに入れないとならず手間がかかるため、ご飯を持参する外出時は面倒かも。

3.犬の手作りご飯で不足しがちな栄養素とは

3-1.犬の手作りご飯で不足しやすい5つの栄養素

犬に手作りご飯を作る際、不足しがちな栄養素は主に5つある。ここでは、それぞれの働きと多く含む食材、不足した場合に起こる問題について解説。十分な栄養を摂取するためにおすすめの方法も紹介する。

体内で酵素となり、活性酸素を除去したり骨や赤血球の形成を助けたりする栄養素。貧血予防や免疫力の維持、成長促進、皮膚の健康維持に必要で、不足すると毛艶が悪くなり、貧血や成長障害を引き起こすことも。主に魚介類や肉類、豆類に多く含まれている。

亜鉛

身体の成長と維持に必要な栄養素。健康な骨や歯の維持、血液凝固などの働きがあり、味覚細胞を作るために欠かせない。不足すると骨格異常や尿路結石症のリスクが高まる。主に魚介類や肉類、ナッツ、穀類などに多く含まれる。

カルシウム

主に骨や歯のもとになり、細胞の分裂や血液凝固、神経の興奮を抑える栄養素。不足すると骨格異常や尿路結石症を引き起こす可能性があり、骨が曲がったり折れたりしやすくなる。乳製品や小魚、大豆製品に多く含まれており、乳製品からの吸収率は特に高い。

脂溶性ビタミンA

眼の健康維持や皮膚、粘膜の免疫力維持に必要な栄養素。高い抗酸化作用があり、不足すると眼疾患や皮膚疾患、感染症のリスクが高まる。豚レバーや鶏レバー、鶏卵など動物性食品に多く含まれているが、にんじんやほうれん草、かぼちゃなどにも多い。

※野菜類に含まれているビタミンAは前駆物質のβカロテン

赤血球の材料になり、全身に酸素を運ぶ役割を担うミネラル。レバー、牛肉、砂肝、まいわし、かつお、まぐろなどに多く含まれている。

3-2.サプリメントも上手に利用して

常に十分な栄養の手作りご飯を作るには、大きな労力と専門知識が必要。そこでおすすめなのが、特定の成分を濃縮して作られたサプリメント。サプリメントを取り入れることで不足しがちな栄養素を補え、栄養バランスを崩すことなく手作りご飯を与えられる。
「毎回栄養バランスを考えながら作るのは負担」「小食や偏食が原因で十分な量を食べてくれない」といった悩みがある場合は、ぜひ活用しよう。

ただし、サプリメントの使用過多は控えて。使用方法を守り、適切に活用することが肝心。

4.手作りドッグフードにおすすめの食材と推奨しない食材

手作りドッグフードの魅力は、使う食材を自由に選べるところ。とはいえ、どんなものでも使っていいというわけではない。なかには、犬にとってよくない食材もあるため、使ってよいものと悪いものは必ず頭に入れておこう。

4-1.おすすめする食材

まずは手作りドッグフードにおすすめの食材を紹介。犬は雑食性の動物で、さまざまな食材を食べることができる。気になるものがあれば少量から与えて、愛犬の好みを探してみよう。

肉、魚

ささみ、胸肉などの鶏肉/豚肉/牛肉/レバー/羊肉/馬肉/マグロ/アジ/鮭/タラ/鯛/サバ/かつお/イワシ/サンマなど

肉や魚は人が食べても問題のないものを選ぶこと。最近では鹿肉やイノシシ肉などのジビエ肉も手に入りやすいが、ものによっては寄生虫や細菌感染が心配。まな板や包丁など調理器具を通して人間に感染する可能性も考えると、手作りドッグフードに使う肉や魚は日頃から扱い慣れているものを選ぶのがおすすめ。

また、牛バラ肉やサーロインなど脂肪分が多い肉は、肥満や急性膵炎のリスクがあるため避けるべき。レバーは手作りご飯で不足しがちなビタミンやミネラルを豊富に含む食材。食中毒を避けるため、必ず十分に加熱してから与えよう。

野菜、果物

キャベツ/かぼちゃ/にんじん/きゅうり/じゃがいも/さつまいも /ブロッコリー/トマト/大根/レタス/白菜/ピーマン/豆/バナナ/りんご/イチゴ/すいか/梨/桃/メロンなど

一部をのぞき、野菜や果物は犬が食べられるものも多い。ただし、食物繊維や水分は多く摂り過ぎると下痢を起こす可能性があるため、与える量には注意しよう。

なお、野菜や果物の皮や芽、種には犬にとって毒性があるものもある。消化にも悪いため犬に与える際は必ず取り除くこと。

その他の食材

白米/玄米/うどん/パスタ/マカロニ/豆乳/米/豆腐/納豆/ごま/オカラ/カツオ節/オリーブオイル/ひじき/わかめ/無糖ヨーグルト/豆腐など

これらの食材は炭水化物源やタンパク質源として使える。腹持ちがよいものも多く、手作りドッグフードに入れると満足感がアップしやすい。特に白米や無糖ヨーグルト、納豆などの食材は犬が好んで食べるため、積極的に活用しよう。

白米や玄米を使う際は、柔らかく炊いてから与えて。ただし、体質によっては合わない犬もいるので、与えたあとに消化器症状などが起こらないか確認が必要。

4-2.おすすめしない食材

続いては、手作りドッグフードの食材としておすすめできないものを紹介。避けるべき食材は大きく分けて、「犬に有害な食材」「犬が消化しづらい食材」「人間用に味付けされた食材」の3つがある。誤って与えると体調不良や病気を引き起こす可能性もあるため注意して。

犬に有害な食材

長ネギ、タマネギ、ニラ/ブドウ、レーズン/チョコレート/コーヒー、ココア/アルコール類/キシリトール入りの食品/生のパン生地/マカダミアナッツ/生の豚肉/アボカドなど

これらの食材は中毒を引き起こす可能性があり、犬にとって有害。特にブドウやレーズン、ネギ類、チョコレート、キシリトール、カフェイン類、アルコール類は犬が摂取すると重篤な状態に陥るケースも少なくない。
人間にとっては日常的に口にするものばかりだけれど、手作りドッグフードには使わないよう注意しよう。

犬が消化しづらい食材

サーロインなど脂が多い肉/イカ、タコ、かに、えびなどの甲殻類/貝類/アーモンド、ピーナッツなどのナッツ類/タケノコ/牛乳/唐辛子やコショウなどの香辛料など

犬が消化しづらい食材も手作りドッグフードにはおすすめできない。消化に時間がかかる食材は胃腸に負担をかけ、下痢や急性膵炎などを引き起こす可能性がある。少し与えたからといって体調を崩すことは少ないが、栄養面でも特段与える必要はない。

人間用に味付けされた食材

ケーキ、クッキーなどのお菓子類/ハム、ソーセージ、ちくわ、かにかまなどの加工品/あんこ/人用チーズ/生クリーム/コンソメなど

基本的に加工品は、手作りドッグフードの食材には使わないほうがよい。人間用に味付けされた食材には、塩分や糖分が大量に含まれている。日常的に与えていると肥満や泌尿器系のトラブルなどを引き起こす可能性があるため注意しよう。

5.手作りドッグフードを作るときの注意点

食材が目に見えてわかり、添加物もいっさい使わない手作りドッグフード。市販のフードにくらべて安心安全なイメージがあるが、作り方や与え方を間違えるとかえって犬の健康を害してしまうかも。
いざ作るときになって「どうすればいいんだろう?」と慌てないためにも、以下3つの注意点は必ず押さえておこう。

5-1.味付けは塩のみ

基本的に手作りドッグフードへの味付けは必要ないものの、完全手作りの場合には塩分が不足しやすいため、少量の塩(生成されていない天然塩)の添加は必要。
ただし、人間の食事のようにしっかり味付けすると塩分や糖分を過剰摂取することになり、病気のリスクが高まる原因にも。嗅覚が優れた犬にとっては、素材そのものの風味が立っているだけで十分おいしく食べられるので問題ない。

5-2.必要な量を把握する

手作りドッグフードのみを与える場合、1回量は「犬の頭の鉢の大きさ」を目安にするのが一般的。
犬の頭の鉢は胃と大体同じ大きさといわれており、食事量を決める際の指標になる。愛犬の耳の付け根から上の部分の大きさを測り、ほどよい量を与えよう。
あわせて、体重ごとに必要な1日の食事量目安もご紹介。ただし、食材の組み合わせ次第で食事量も変わるため、あくまでも目安として。

▼体重ごとに必要な1日の食事量目安
1kg……100g
2kg……150g
3kg……200g
4kg……250g
5kg……300g
6kg……340g
7kg……380g
8kg……420g
9kg……460g
10kg……500g

5-3.食材は細かく刻んで加熱する

誤嚥や消化不良を起こさないよう、食材は必ず食べやすい大きさにカットしよう。特に小型犬は口が小さく胃腸もデリケートなため、食材が大きいと食べ疲れてしまったり、お腹を壊しやすくなったりすることも。便をチェックして食材がそのまま残っているようであれば、次回はより細かく刻んで調理するのがおすすめ。

また寄生虫感染のリスクを考えて、しっかり加熱調理することも大切。ただし、犬は熱すぎる食事はあまり好まない。できあがってすぐ与えると舌を火傷する可能性があるため、加熱後は人肌程度に冷ましてからあげよう。

6.手作りドッグフードに関するQ&A

ドッグフードと手作りご飯を混ぜる場合、おすすめの割合は?

ドッグフードと手作りご飯を混ぜるなら、「ドッグフード7~9割:手作りご飯1~3割」程度に調整しましょう。
手作りご飯は嗜好性が高いため「もっとほしい」と催促する犬も多いですが、あげすぎるとドッグフードの栄養バランスが崩れてしまいます。カロリーオーバーを防ぐためにも、手作りご飯は犬の1日の最適カロリーの10~20%以内にしてください。

子犬にも手作りドッグフードを与えていい?

子犬の場合にはエネルギーのほか、体を作るうえで必要な栄養素をしっかりと摂取させなければならないため、完全手作りはあまりおすすめできません。完全手作りではないにしても、手作りご飯を与える場合には、必ず専門の獣医師などに相談してから作るようにしてください。

老犬用の手作りドッグフードで気をつけることは?

歯や内臓機能が弱った老犬には、消化にやさしく柔らかい食事を与えましょう。老犬期は唾液の分泌量が減り、飲み込む力も弱くなります。豆腐やヨーグルトなどとろみがあるものを混ぜると食べやすくなるため、食欲がないときにもおすすめです。

なお、現在治療中の病気があったり内臓機能が低下したりしている場合は、食事制限が必要なこともあります。食材のなかには与えてはいけないものもあるため、自己判断で与えるのは避けましょう。持病がある愛犬に手作りドッグフードを与えたいときは、事前に獣医師へ相談してください。

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※記事は2023年4月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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