OZmagazine編集長の「F太郎通信2017」VOL.002

F太郎通信2017

オズマガジン編集長古川が、日々の中で感じたことを、読者のみなさんに手紙を書くようにつづったエッセイのようなものです。

更新日:2017/06/25

F太郎通信2017

日曜日の午後にみなさんに手紙を書きました

 こんにちは。オズマガジン編集長の古川です。

 6月12日にオープンしたオズマガジンの公式サイト「よりみちじかん」に、初日からたくさんの人が遊びに来てくれました。誰も来てくれなかったらどうしようと不安な気持ちでいましたので、本当に嬉しかったです。たくさんのコメントも編集部にとってものすごく励みになっています。編集部を代表してお礼をさせていただきます。ありがとうございました。みなさんとゆっくり仲良くなっていけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。

 本を作ったりウェブサイトを作ることは、ドライな見方をすれば僕たち編集部にとって仕事です。当然そこには「何冊売れたのか?」とか、「何万ページビューがあったのか?」とか、可視可しやすい「数字」が評価としてついてまわります(それが便利なことなのかはわかりませんが、その数字はすぐにわかります)。

 もちろんたくさんの人に本を手に取って読んでいただきたいし、たくさんの人にサイトを見ていただきたいので、それをわたしたちが追求することは当たり前のことです。たくさんの人に届くことは、たくさんの人に見てもらえること。それが大きな喜びであることは疑いようのない事実です。

 でも同時に、僕たちの作ったものは、届いた先に「どのくらい深くまで」届いたのか? 使ってくれた人にとって「満足」と「豊かさ」をきちんと提供できているのか? その目に見えない「信頼関係」のようなものに目を瞑って、それが可視可されないことをいいことにそれを疎かにするようなことをしないように、注意深くモノ作りをしていこうと思います。数字「だけ」を追うと、どうしても数字を生み出すことだけが正義になりがちです。お互いを利用し合う関係になりがちです。

 そしてモノ作りというのは、その可視化されないものの積み重ねのなかにこそ喜びがあることが多いのも事実です。

 10万冊も、10万ページビューも、乱暴な言い方をしてしまえばただの数字です。そこには誰かが1冊のオズマガジンを本屋さんのレジに持っていってくれたシーンが10万回あり、オズマガジンの記事を読んでみようと1人の誰かが思った瞬間が10万回あるということです。そのことを忘れなければ、そのただの数字はわたしたちにとってかけがえのない意味のある数字になる。そのバランスをしっかりと持っていたいと思います。

 何年か前に、印象的なオズマガジンがありました。

「旅をしよう」というタイトルの号で、それは編集部が本当にお勧めしたい旅先を旅して、自ら記事を書き、本にまとめたものでした。その1冊にまとまった本の中の紹介エリアは、お世辞にもアクセスがいいとは言えない場所も多く、知名度もそれほど高くない町が並びました。でも僕たちはその特集で紹介した場所のことが本当に好きだったので、どうにかそれを伝えたいと思い、みんなでいろいろな工夫をして本を作りました。

 しかしそのころの平均部数からみると、その号の売れ部数は平均を大きく下回っていました。「どうして売れなかったのか」「ちゃんと売れなかった理由の分析はできているのか」という強めの忠告や意見を、僕らはしばらくのあいだ受け続けました。もちろん、それに対して言い訳をするつもりも開き直るつもりもありません。いま考えると作り方もまだまだ未熟で、使う人にとっては使いづらかったであろう要素が散見されます。そこで学んだことは、いまでも謙虚に真摯に胸に持ち続けています。

 でも一方で、驚くべきことにこの特集は読者からの反響が異様に多かったのです。アンケート、スタッフや知り合いからの声、編集部に届く手紙。「今回のオズマガジン、本当に良かったよ」という声が通常の号よりもあきらかにたくさんありました。

 たぶんそれは、僕らがその旅の旅先について本当に伝えたいことを伝えようとして、その場所への行きやすさとか便利さよりも「自分たちの熱」を優先して作ったことで、ある一定の人にその「熱」が伝わったということなのだと思います。売れ部数も社内の評価も、数字という世の中の評価も、すべて平均以下というなかで、そのようなコアの部分を「わかりあえた」感覚は、当然大きな勇気になりました。

 繰り返しになりますが、それを「正当化」しているわけではありません。僕が言いたいのは、数字を見るときは、その数字の奥行きを考えるということを忘れないようにしたいということです。大切なのはバランス。遠くまで届くことと、深くまで届くことのバランスです。
 ウェブサイトを作ったことで、オズマガジンを通じた読者の方とのコミュニケーションが「月1回」から「週に数回」に変わっていきそうです。そうなったとしても、僕たちがみなさんと共有したい価値観は変わりません。オズマガジンは、今日もみなさんの便利な「よりみち案内帖」でありたいと思います。誰かの「よりみち」のきっかけになり、誰かのいい1日のそばにいること。それをていねいに作り続けること。

 また近いうちに。時間の細分化された毎日の中で、このように長いコラムを最後まで読んでくださってありがとうございました。

 ふつうに生きているだけで、いろいろあるのが人生です。「よりみち」しながら、ゆっくり生きましょう。

 いい1日を。

雑誌OZmagazineは、日々の小さなよりみち推奨中。今日を少し楽しくする、よりみちのきっかけを配信していきます。

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※記事は2017年6月25日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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