編集部の「いい1日」リポート VOL.002
この連載では、編集部員が見つけた「いい1日」のヒントをご紹介していきます。特集のためのリサーチから、個人的な趣味の散歩、その他もろもろ、よりみちで出会ったことや感じたことをつづります。第2回目は、タキセが「10年(以上)続くカフェ」を訪れるシリーズです。
更新日:2017/06/16
10年続くカフェは、ほぼミラクル?
はじめまして。編集部のタキセです。自他ともに認めるオズマガジン編集部一の「カフェマニア」です。
私タキセの担当回では、10年以上続くカフェの色あせない魅力を探っていきたいと思います。
何度も通うおなじみの1軒から、久しぶりの再訪、10年ごしの初訪問となる1軒まで、さまざまなカフェが登場予定です。そのいずれもが、10年前もすばらしく、10年後もまた訪れたくなるカフェばかり。
日常では、新しい情報を追いかけることが公私ともに多い私。心惹かれた新しいカフェの情報は、「1日1カフェ」というネタ帳にストックすることを日課にしていますが、滞ったことがありません。少なくとも単純計算で「1年365カフェ以上」、新しいカフェが生まれていることになります。
しかしたくさんの新しいカフェが生まれる一方で、残念ながらサヨナラを迎えるカフェもそれと同じくらいある、と感じます(取材でたくさんのカフェオーナーさんとお話しした経験と、マニアの肌感覚でしかありませんが)。
10年たてば、店も人も環境も変化します。ひとつのカフェが10年にわたって期待に応え続けることは、もはやミラクルの域かもしれません。(もちろん、誕生したばかりでも、短期間の営業でも、すばらしいカフェをいくつも挙げられることも付け加えておきます)
私の場合、そもそも訪れる数が多いので、どんなに素敵な1軒に出会っても、1軒だけに通い続けることがかないません。それでも、いつかまたそのカフェを訪れたいと想う気持ちはいつも温めています。雨の日も雪の日も、今日もオーナーさんはコーヒーを淹れているんだろうなとか、明日も明後日も10年後も待ってくれているんだろうなとか、想像するだけで、あったかい気持ちになります。
17歳、まぶしすぎるオープンテラス
「いちばん好きなカフェは?」とよく聞かれますが、比べることは難しくてなかなか答えられません。でも、「どこがきっかけでカフェを好きになったの?」は、すぐに答えられます。渋谷のファイヤー通りから渋谷区役所に向かう坂の途中にあった、「カフェ・マディ 渋谷店」です。
元ガラス工場をリノベーションした高い天井、グレイッシュブルーの柱、籐のイスにマーブルのカフェテーブル、きびきび働くギャルソン、そしてオープンテラスでおしゃべりする小粋な大人たち…。その光景は、夢にまで見たパリそのものでした。フレッシュネスバーガーのオニオンリングが最高におしゃれなごちそうだと信じていた17歳の私には、まぶしすぎてショックを受けました。その後、大学生になって初めて訪れた時に食べた、つやつやとしたイチゴのタルトのことは忘れられません。デートの相手よりも、そのおいしさやカフェ・マディのイスに座れることにうっとりしていたほどです。
数年後、ふと訪れた時には、同じ建物のままアパレルのショップになっていました。Tシャツを選ぶふりをして未練がましく天井を眺めました。そして現在は建物自体がなくなり、マンションになっています。
カフェの扉は、今日も開く
渋谷店はもうありませんが、カフェ・マディでケーキは食べられます。1994年に開店した「カフェ・マディ 青山店」は、23年たった今も健在。渋谷店同様、本場パリさながらのオーラを放ち続けています。私はこちらに寄らせていただくのも久しぶりでした。ずいぶん大人になった今でも、カフェ・マディのイスに座るとやっぱりうっとりしてしまいます。
勝手に思い出に浸りながらケーキに向かう私もいれば、昼からビールで乾杯するカップルも、井戸端トークを続けるマダムのグループもいます。カフェ・マディの扉は、今日も、どんなお客さんにも開かれています。10年後もきっと。
あなたが10年後も通っていたい、10年後もまた行きたい、と思うカフェはどこですか?
さて、次の更新は、来週の金曜日。編集部スドウよりお届けする予定ですので、どうぞお楽しみに。
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