オフィスビルが立ち並ぶ西新宿から、都会の真ん中にある代々木公園周辺エリアには、おうちパン時間を楽しくする旬なパン屋さんが続々オープン。そこで今回は、こだわりの自家培養酵母だけで作られたパンや、薪窯で焼いたパンと出会えるお店、パンに合うデリや自家焙煎コーヒーなどが充実する3店をご紹介。新たな発見がきっとあるはず。
【fumigrafico】自家培養酵母だけで作るダイナミックで自由なパンたち
店主の個性がにじみ出る唯一無二のサワードゥ
カリスマ的な人気を集めた催事と予約販売のみのベーカリーが、2021年夏に実店舗をオープン。店主の堀内文さん、実はグラフィックデザイナーでパンは趣味で焼いていたため、ベーカリーでの修行経験はゼロ。にもかかわらず文さんのパンは姿も味も堂々たる存在感で、食べた後も小麦の余韻が長く続く忘れ難いおいしさ。
「インスタを英語で始めたくてテーマをパンにしたところ、世界のベーカーさんとつながることができました。発酵の見極めや温度管理など日本のパン作りとは違うことを知り、ますますパン作りが楽しく、自由に作るようになったんです」と文さん。パン作りのメソッドは完全自己流だが“おいしいパン”というゴールに到達すればいい。どこにもない自分らしいパンが焼ければいいということで、サワードゥにたどり着いた。サワードゥとは小麦で起こした自家培養酵母のことで、小麦の風味をしっかりと引き出せる。酵母から生まれる乳酸菌由来の酸味も特徴だが、文さんのサワードゥは強すぎず心地よいと感じるほどよさ。それがパンのうまみの奥行きをぐっと深めているのだ。まさに唯一無二の型にはまらないダイナミックなパンは世界のベーカーと共鳴したfumigraficoだけの味。
fumigrafico
住所/東京都渋谷区元代々木町9-6
営業時間/15:00~20:00
定休日/日・月・木曜
アクセス/代々木公園駅より徒歩4分
【パン屋塩見】都会のど真ん中で楽しむ薪窯で焼いたモチモチ食パン
この皮のクリスピー感はクセになる炎と麦の傑作
「薪窯で焼くことを、諦めるという選択肢はなかった」と話す店主・塩見聡史さん。沖縄の「宗像堂」で石窯と薪の魅力に目覚め、東京の「ルヴァン」でパン作りの技をさらに磨いたのち、新宿駅から徒歩10分という都心の真ん中で、薪窯で焼くパンを実現させた。
「薪窯ができる場所をいろいろな街で探しましたが、たどり着いたのがここ。扱うパンは2種だけですが、いいパンさえ焼ければ好きな人が訪れてくれるのは、都心だからこそ。薪窯は自由に温度が設定できるわけではないし、1段しかないのでたくさん焼けず効率も悪い。でも、朝も暗いうちから火をおこし、ぱちぱちと薪がはぜる音を聞きながらパン生地の発酵も窯の状態も最高潮に引き上げていくのがたまらなく楽しいんです」と笑う。
農家さんから麦を仕入れ、みずから臼で挽き、全粒粉で酵母を起こして石窯で焼く。まるで昔話のような作り方だが、驚くほど麦を感じるパンに衝撃を受けるはず。薪を焚いて熱をたたえた石窯は、一気に水分を飛ばすが焦げずに香ばしい皮を生み出してくれる。バリッと分厚い皮はクリスピーで、食パンはもっちり弾力のある密度を感じる食べ応え。力強い麦のうまみに圧倒される、炎と麦のエネルギーが感じられるパンなのだ。
パン屋塩見
住所/東京都渋谷区代々木3-9-5
営業時間/12:00~18:00(売り切れしだい終了)
定休日/水・木・第1、3火曜
席数/2+外ベンチ
アクセス/南新宿駅より徒歩5分
【365日】移転OPEN!パン以外の提案でさらに広がる“おいしい時間”
日本のパンの成熟を牽引する名店の新たな幕開け
2021年秋、旧店舗のお向かいに移転した365日。50種以上を揃える豊かなパンのラインナップはそのままにデリや自家焙煎コーヒー、調味料や野菜、肉や魚まで揃えるオールラウンドな店へとパワーアップした。
「1頭の子牛を育てる分の乳量しか搾らない牛乳、健やかに育てた野菜や米など、素晴らしい生産者さんを伝えたい。質のいいものを求める人たちのコンビニ的な存在にしたいですね」と話す代表の杉窪章匡さん。その哲学は365日のパンそのもの。それは、オール国産小麦で日本人の嗜好や食生活に合うものを、海外のコピーではなく、この土地で生まれた食材で作る日本のパン。例えば、発酵で生まれる味ではなく、国産小麦そのものの味を伝えるために発酵時間は短めに。加水100%のソンプルサンは極上のコシヒカリのようにもちっと甘く、和洋どんなおかずも受け止めてくれる。その土地の食文化に寄り添うパンは、日本のパンの成熟を感じさせるもの。先進的なベーカリーの進化は、まだまだ止まらない。
365日
住所/東京都渋谷区富ケ谷1-2-8
営業時間/7:00~19:00
定休日/なし
アクセス/代々木公園駅、または代々木八幡駅よりすぐ
※オズマガジン2022年2月号「東京パンさんぽ」の記事を一部転載
※掲載店舗などの情報は、取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HPにてご確認ください
オズマガジン2022年2月号は「東京パンさんぽ」特集
変わり続ける東京のパンの世界。今号では、今年のパンの潮流がわかるキーワードと共に、注目のベーカリーがある6つの町をご案内します。またさんぽmagazineでは人気の町「蔵前~浅草橋」を、歴史から最旬情報まで網羅。保存版の1冊。
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PHOTO/KYOKA MUNEMURA、HIROSHI SHIMIZU、AYA MORIMOTO、WRITING/KAORI MINETSUKI