編集部の「いい1日」リポート

編集部の「いい1日」リポート VOL.019

更新日:2017/10/27

この連載では、編集部員が見つけた「いい1日」のヒントをご紹介していきます。特集のためのリサーチから、個人的な趣味の散歩、その他もろもろ、よりみちで出会ったことや感じたことをつづります。アート好きな編集部員スドウは、今回ちょっと遠くの美術館を訪れました。

台風なんてなんのその
そこにかわいいがある限り

こんにちは。わたくしスドウの回では趣味である美術館・展覧会の鑑賞レポートをしておりますが、実はもうひとつ大好きなものがあります。

それはずばり「かわいいもの」。バッジやマグカップなどの雑貨、カラフルな柄のメモ帳やふせんなどの文房具、素敵な装丁の本などなど・・・。「かわいい」にもいろいろありますが、その中でも特に弱いのが、ゆる~いキャラクターです。

台風接近中の土曜日の夕方。そんな「かわいい」にまんまとつられた私はひとり浦賀駅に立っていました。

晴れた日の横須賀美術館の様子。海の目の前に位置し、眺望抜群です。残念ながら私が訪れた際は悪天候のためこの絶景は見られませんでした。晴れの日の再訪を決意

14時過ぎからの小旅行
行くか、行かないか

自称「休日スロースターター」な私はこの日もお昼過ぎから行動開始。東京駅で用事を済ませたときには既に14時過ぎでした。

せっかく東京駅にいるのだから、徒歩5分の三菱一号館美術館へ行こうかしら。そう思いながらも踏み切れないわけは、ずっと気になっている展覧会があと2週間ほどで終わってしまうから。

場所は横須賀美術館。イラストレーションから絵本、雑貨、舞台芸術まで幅広く手がけるユニット「tupera tupera」の展覧会が行われているのです。彼らの代表作『かおノート』は皆さんもご覧になったことがあるはずです。

調べてみると最寄り駅まで1時間ちょっと。美術館は18時まで開館しているので鑑賞時間的には問題なさそうですが、往復3時間をかけて美術館だけってちょっともったいない気もします。

ウジウジ悩み続ける私の背中を押したのは、「来場は15時以降がおすすめ」という横須賀美術館ホームページの言葉。さらに「今日は雨だから人が少なくゆっくり見れた」という情報をインスタグラムでゲット。連日大盛況な人気展覧会、観に行くなら今日しかない!と、14時半スタートの小旅行を決意したのでした。

品川まで出て京急に乗り替え、川崎、横浜、上大岡、金沢文庫・・・。そうしてやっと、終点浦賀に到着です。この時点で既に16時過ぎ。横須賀美術館は浦賀駅からさらにバスで15分ほどかかります。

※横須賀美術館の最寄り駅は京急線馬堀海岸駅ですが、私はバスの時間が合う浦賀駅(馬堀海岸駅のひとつ先)で降りました。馬堀海岸駅からは「観音崎」行きバスで10分、「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前」下車徒歩2分です

人気絵本『しろくまのパンツ』に登場するしろくまさん。ちゃんとパンツを履いています。展示室内は基本的に撮影できませんが、エントランスは撮影OK

かわいさと楽しさが押し寄せる
至福の展示空間

バスを降りて(バスも終点!)5分ほど歩き、ついに横須賀美術館へ到着です。中に入ると巨大なしろくまさんがお出迎え。まぁるいフォルムとちょっとオトボケな表情。「そうです、このかわいさを求めて私はここまで来たのです!」と、内心大興奮。絶妙なかわいさに思わず顔がほころびます。

展示はtupera tuperaが手がけた絵本の原画が中心。初期作品から最新作までを年代順に追っていく構成です。

絵本だからといってあなどるなかれ。作品の多くは切り絵で作られていて、さまざまな質感、柄の紙が一つひとつきれいに切って貼られています。

原画のそばには必ず絵本が置いてあるので、絵本を読んだことがない人でも安心。かくいう私も絵本をきちんと読んだことはなかったので、絵本と原画、どちらもじっくり鑑賞しながら展示を見ていきます。

いちばん感動した場面がクリアファイルに! 嬉しくて即購入。

オトナゴコロにもじんわり響く
夢にあふれた絵本の世界

こんなにたくさん絵本を読むのは久しぶりで、やさしい世界観に心がじんわりほぐれていきます。その中でも特に感動したのが、ワニの少年が船に乗って不思議な旅をする『ワニーニの冒険』。

ある島で、ワニーニは地面に描かれた4色の不思議な線を発見します。どこまでも続く線の正体は、色鉛筆の足を持つ馬の足跡だったのです。

私も子供の頃は不思議な動物を考えて遊んだなぁと懐かしく思う一方、自由で夢にあふれた想像力を持ち続けているtupera tuperaのおふたりに感動。思わず原画を前に泣きそうになってしまいました。

ほかにもワニーニは、ぷかぷかと空を浮かぶ気球男爵と空中散歩を楽しんだり(男爵の靴の中に入れてもらったので、足の匂いが辛かったみたいですが)と、大人もワクワクする展開が続きます。

愉快で夢にあふれたtupera tuperaの世界にどっぷり浸り、「ここまで来てよかった~」とにんまりしながら展示室を進みます。

『パンダ銭湯』の展示の様子。絵本の世界がそっくりそのまま美術館内に出現。パンダと一緒にお湯に浸かって写真が撮れます。閉館間際だったからか、たまたま人がおらず銭湯をひとり占め!

パンダ以外立ち入り禁止!
秘密のパンダ銭湯に潜入

そして今回の展覧会の中でも大人気な展示が、この「パンダ銭湯」。同名の絵本の世界観をそのまま再現した空間に心が躍ります。

嬉しいことに、このエリアは写真撮影OK。サングラスを外し、お耳の黒メイクを落としてスッキリしたパンダたち(実は真っ白・・・!)と一緒に記念撮影ができるのです。

浴場のタイル絵にもパンダが描かれていたり、洗い場には「ささのかほりリンス」、入口で売られている人気ドリンクは「竹林牛乳」と「サササイダー」など、細かいところまで作り込まれていて、絵本の世界に紛れ込んだ気分。

人気者のパンダが実は作られたかわいさだったという設定に思わずニヤリ。tupera tuperaが大人にも人気な理由は、ただかわいいだけじゃなく、毒っ気やシュールさがスパイスのようにピリッと利いているからなのかもしれません。

展覧会後のお楽しみ、グッズ売り場も本展は見逃せません。図録やクリアファイル、バッグなどの定番商品から、マスキングテープやパンダ銭湯グッズなど盛りだくさん! こちらは購入したグッズのほんの1部。もりもりお買い物してしまいました

思い切って出かけてみると
予想以上にいい1日(になるかも)

かわいい展覧会グッズもたっぷりお買い物し、ホクホクで帰路につきます。バス停まで歩き、バスに乗り込み、そこから電車で1時間ちょっと。やっと東京に到着です。

ここまで読んで、なんて非効率的な旅!と思った方もいらっしゃるでしょう。確かにおっしゃる通りです。

もっと早く起きていれば、浦賀の歴史的スポットや横須賀のレトロな喫茶店(本当はずっと行きたいと思っているお店がありました)にも行くことができ、より充実した1日になったと思います。

ですが、京急線で知らない駅をたくさん通過していく旅っぽさにワクワクしたこと。バスの中で見た、降りて行ったお友達にいつまでも手を振るおばあちゃんにほっこりしたこと。さびれたカラオケスナックの看板の書体がレトロでカッコ良かったこと。

今日は往復3時間以上をかけて美術館にしか行けませんでしたが、思い出は美術館以外にもたくさん持ち帰ることができました。

私たちはついつい、効率のよさを考えがちですが、こんな行き当たりばったりなお出かけでも、どこにも行かないよりはよっぽどいい1日になることも多々あります。ぜひ皆さんも迷ったときは、思い切って外に出かけてみてください。

とはいえ、本当は早起きできればいちばんなんですけどね・・・。

今日もお付き合いいただきありがとうございます。
それでは皆さん、いい1日を。

INFORMATION

11/3(祝)は横須賀美術館の無料観覧日のため、大変な混雑が予想されるそうです。混雑緩和のためパンダ銭湯での撮影はできないそうなので、浴槽に入って写真を撮りたい方は別日にお出かけを(会期~11/5(日))

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※記事は2017年10月27日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります