「週末ひとり旅」特集の中のこと2
このページでは毎号のオズマガジン制作の編集後記のような、こぼれ話のような、誌面に載せきれなかったサイドストーリーを編集部員が少しずつご紹介しています。今回は、末っ子編集部員・クリヤマが、撮影の裏話をお届けします。
更新日:2017/10/18
発売中の週末ひとり旅特集、裏話をお届けします
こんにちは。東京は急に冷え込み、毎日の服装選びが難しい今日この頃です。雨降りも続いた静かな秋ですが、そんなときにもぜひ楽しんでいただきたい特集「週末ひとり旅」が、先週発売になりました。特集のダイジェストはこちら。写真を見て、つかの間でも旅に出た気持ちになっていただけたら嬉しいです。
今日は今回の特集を作るにあたって私が訪れた鳥取のことを、特集のサイドストーリーとしてつづっていこうと思います。ちょうど先週やここ数日と同じような、静かな雨が降っていた日のできごとです。
いい1日をくれる町の物語を届ける
まずは少しだけ、編集部が日頃考えていることについてお話します。オズマガジンは、「いい1日を」という合言葉のもと、1日が楽しく過ごせるお出かけのヒントをご紹介するのはもちろんなのですが、その心は、「日常にある物語」を届けられたらという思いで毎月の雑誌作りに取り組んでいます。
(そんな思いの部分はちょうど先週、フクヘンのイノウエの谷根千リポートでもちょっぴりお話していますので、もしよろしければ合わせてこちらもお楽しみください)
毎月取材に伺う町にはたっくさんの素敵なお店があり、そのみなさんがそれぞれ思いを持ってごはんやおやつを作っていたり、毎日わたしたちを笑顔で迎えてくれていたり、しています。ページの都合上1枚の写真のみで小さくご紹介する場合でも、もっともっと伝えたいことがたくさんあるのに! ページがどれだけあっても足りない~なんて悲鳴をあげています。
と、そんなわけで、わたしたちが目にし、大切にしたいと思っている日常の物語のことを少しだけでも感じてもらえたらと毎月お届けしているのが、雑誌というよりも写真集や単行本を読むように楽しんでいただきたい物語のページです。いつものにぎやかなページとは少し趣の異なるページになるよう心掛けていて、今まではひとつのお店や、町、人にフォーカスし、じっくりとそれぞれの思いをお伝えしてきました。
今月は鳥取に行ってきました
今月は「週末ひとり旅」特集というテーマに合わせ、“ひとりで旅に出ること”について考えてみようとページを作りました。一緒にページを作っていただいたのは、写真家の中川正子さん。東京を拠点に活躍されていましたが、ご出産後岡山に拠点を移し、なおバリバリと各地を飛び回る素敵な女性です。
日頃の撮影のお仕事では遠方を訪れることの多い中川さんですが、今回の取材ではプライベートで訪れたかったという、鳥取県松崎にあるカフェ・ショップ「HAKUSEN」へ向かいました。誌面では、実際に岡山から少し遠くの鳥取へふらりと旅に出て、コーヒーを1杯。そのあいだに見た景色や、感じた思いをつづっていただいています。
今回の企画は中川さんのプライベート旅ということで、旅のあいだは基本的にひとり行動。わたしは東京のオフィスから、中川さんはご自宅のある岡山から、それぞれのペースでお店を目指し現地(お店)で一瞬だけ合流、そしてまたそれぞれの旅路へという行程です。サイドストーリーということで、ここでは私、編集クリヤマ視点での旅を少しだけ、お送りしようと思います。
旅にハプニングはつきもの
撮影当日はあいにくの雨。訪れる予定の「HAKUSEN」は、お店の目の前に東郷池(またの名を東郷湖)という大きな池があり、窓の外には本当に美しい水面がどこまでも続いているようなお店です。前からこの日と決めていたせっかくの撮影が・・・。朝、わたしは絶望的な気持ちでした。が、お店で迎えてくれたスタッフさんのひとことで、この迷いは去っていくのでした。
「おふたりはとってもラッキーですね。このお店が本当に素敵なのは、こういう静かな雨が降る日なんです。湖と空の境目が白っぽくなって、幻想的ですよ、ほら」
そういわれて望んだ窓からは、本当に美しい景色が広がっていました。雨が落ちるたび波紋が広がる水面は白いレースのようで、その先に続くうっすら白い空は霞んで、まるで映画のワンシーンに迷い込んでしまったかのようでした。
と、感動したのもつかの間、今度は中川さんを乗せた電車が急な事故により大幅に遅延したとの連絡が・・・。詳しくはぜひ誌面のエッセイを読んでいただきたいのですが、持ち前の明るさとバランス感覚のよさで旅を楽しむ中川さんの裏で、ビビリのわたしの心臓はドッキンドッキン鳴っていました・・・。
落ち着かなくては!と思いつつも焦るわたしに、スタッフの小島さんは
「せっかくだからゆっくり過ごしたらってことかもしれませんね。コーヒーでもいかがですか?」なんて声をかけてくれました。お言葉に甘えてコーヒーをいただきながら湖を見つめるひととき。すーっと心が穏やかになっていくのを自分でも感じました。中川さんの到着を落ち着いた笑顔で迎えられたのは、このひとりの時間がくれた魔法だったかもしれません。
出会いが教えてくれること
今回のわたしの旅は仕事なので、もちろん完全なひとり旅とはきっと心境が異なりますが、旅には不安や心配、そして今回のような予期せぬハプニングが待っていることも少なくありません。
(ちなみに余談ですが私はこの撮影の前日がお休みだったので、ひとりで前日入りし初めての鳥取砂丘を訪れる予定でしたが、計画不足とハプニングで失敗。でもそのかわりに鳥取駅周辺をあてもなく歩いていたら、とってもおいしいかき氷や、買いたかった本に出会えました。また今度砂丘を訪れようと、もう一度鳥取を訪れる理由ができたということにしておきましょう)。
どこに行く、なにを食べる、誰に会う、そういった選択すべてを、自分で考えて決める。そこにはその瞬間は失敗かも、なんて後悔が残ることもあるかもしれませんが、失敗に見えたちょっとの遠回りも、偶然のよりみちも、きっとひとりだからこそできること。
その回り道でしか見ることのできない景色や、それを通してでしか感じることのできない気持ちが、そこにはきっとあるはずです。気まぐれさんぽ、予定変更、万歳です。ひとりなら気負わずになんだってできちゃうのだと思います。
そんな気持ちを教えてくれるような、実際の旅の思い出を綴った中川さんのエッセイと写真はぜひ、誌面でお楽しみいただけたら嬉しいです。そしてみなさんが雑誌を片手に出かけたどこか遠い旅先で、小さなハプニングがくれるあたたかな出会いが待っていますように。
それでは今日もお付き合いいただきありがとうございました。また来週も、編集部員が今回の特集の見どころをご紹介します。お楽しみに。
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