OZmagazine編集長の「F太郎通信2017」10通目

F太郎通信2017

オズマガジン編集長古川が、日々の中で感じたことを、読者のみなさんに手紙を書くようにつづったエッセイのようなものです。

更新日:2017/10/15

F太郎通信2017

長袖の薄いニットを着ました。秋ですね

 こんにちは。オズマガジン編集長の古川です。毎回言っているような気がしますが、2週間ってほんとうにあっという間ですね。お元気でしたか? 

 この記事が配信されるのが日曜日の夜ということもあって、「この文章を読むと週末も終わりだなぁと思う」というコメントをたくさんいただくようになりました。このまま日曜日の配信を続ければ、もしかしたらネットの世界のサザエさんのような記事になれるかもしれません。でも週末の夜に手紙をお届けしはじめてまだまだ10回。たかだか20週間です。季節でいうと2つの季節が巡っただけ。そう考えるとサザエさんはすごいですね。続けることはひとつの価値ということを証明しています。世界を長いスパンで捉えるか、短いスパンで捉えるか、その奥行きの焦点の合わせ方によって、日常はずいぶん違うものになっていくものです。

 手紙にも書きましたが、最近はみなさんが毎日どこでどんな風に過ごしているんだろうと考えるようになりました。もしかしたら僕らはどこかですれ違っているかもしれないし、ひょっとしたらこのあいだ電車で隣の席に座ったかもしれない。そう思うとネットの世界はお互いが見えないからこそ、想像力が大切だなって思います。

 今日はその想像力について少し書きたいと思います。

 あらためまして、いつも「よりみちじかん」に遊びにきてくださってありがとうございます。このページは、ネットの世界のスタンダードと比べると、更新は頻繁ではないし、すぐに役に立つことが載っているわけでもありません(僕のこの連載にいたっては、実用的に役に立つことはひとつも載っていません)。でも読んでいただいた方の中になにかが残るように、ひとつひとつの記事を、編集部のメンバーが時間をかけてていねいに作っています。情報が足りない、文章が長い、という方に対しては期待に添えなくて申し訳ないと思いますが、ウソをつかないように、これからもひとつひとつの記事を作っていこうと思います。

 僕たちが雑誌を作るうえで、それだけでなく日常を過ごすうえで大切にしている心持ちがあります。それは「機嫌よく」ということです。そしてこの「機嫌よく」ということは、「想像する」ということと、とても似ている言葉です。ジョン・レノンは僕たちにずっとずっとこう言っていました。

「想像してごらん?」

 僕たちは生身の人間ですから、体調が悪いこともあれば、生きていくことがうまくいかないこともあります。悲しい事件や予想もできない出来事がウソみたいに頻発する世界だし、まわりに目をやれば、あまり好きじゃない人や、意見のあわない上司だっていると思います。そういう意味では、僕たちが生きるこの世界というのは、自分でコントロールできることはほとんどないということを、わたしたちは生きる過程の中で経験として学んできました。自分の持ち物である(はずの)自分の感情でさえ、コントロールすることは本当に難しいということも。

 でも、たとえば東京都がオリンピックを前に対峙している課題を解決することも、中東でテロに加担する若者を止めることも、個人のチカラではほとんど不可能です。それでも、自分が思うようにいかないことに相対するときに、どう向き合っていくかという「心持ち」は、ある程度自分で変えていくことができるものだと思います。

 どうすればいいか? それは、相手のことを、世界のことを、想像するのです。

 たださっきも言ったように、その自分の感情をコントロールすることが、本当に難しいのも事実です。僕もつい自分の価値観や正義を信じるがあまり、それ以外の正義や価値観に対して寛容になれないことも場面としては少なくありません。特に編集長のような立場でいることは、たえず自分の考えを言語化し、旗に文字を書くように社内外に示し、それを伝えていくことがひとつの責務でもありますから、どうしても自分の正義を主張しすぎてしまうことがあります。

 そういうふうに正義を主張しなくてはならないときに、役に立つのが想像力です。僕がどうふるまったら、相手が気持ちいいだろう。どうしてこの人はこういう言い方をするんだろう。どうしてこの人はこうなんだろう。立ち止まって一回それを考えるのです。

 言いたいことや伝えたいことを口にするときに、強い口調で話すのか、笑顔を意識して話すのかで、相手に与える印象は全く変わってきます。意見の合わない人に自分の考えを主張をするときは、どうしても人は難しい顔をしてしまうものです。でも太宰治はこう言っていましたよ。「人は本当じゃないことを言うときは、必ず真面目な顔をする」。

 そういうときに思い出すと効果的なマジックワードが「機嫌よく」という言葉なのです。

 仕事において正義があることも、思いがあることも、まじめなことも、本当に必要な要素です。その正義をぶつけ合って、純度を増していく仕事もあるでしょう。だからどんどんぶつかり合うべきことはぶつかり合うべきです。最後の最後は信頼関係があれば、おそらくたいていのことは超えていけます。でも、それだけじゃなかなかうまくいかないことが多いのが現実ですね。だからそこにもうひとつ。笑顔やユーモアを加えていくのです。たったそれだけで、うまくいかないことがうまくいくことも、ずいぶんあると思います。

 今さら言うまでもないことですが、僕たちの仕事は本を作ることです。このサイトを制作することです。そして僕たちは自分の時間を使って、時には自分のお金を使って、ここに来てくださる方や本を買ってくださる方々に、それだけのものをお返しする立場です。

 僕らが難しい顔をして作ったものを、誰が嬉しい顔をして受け取ってくれるでしょうか?

 そう考えると、僕らが機嫌よく楽しくモノづくりすることは、自分たちだけの問題じゃなくて、もはや責任なんじゃないかとすら思います。だから今日も、今月も、僕たちは機嫌よく作っていこうと思います。オズマガジンを書店で見かけたら、ぜひ手に取っていただけたらと思います。オズモールで気になるプランがあったら、ぜひ予約してみてください。

 なかなか機嫌よくいることが難しい世界だし、タフな毎日です。そういう日々の中で、僕らがみなさんの毎日のそういう時間に、「よりみち」という価値観で役に立てたらと思います。

 朝晩はだいぶ冷え込むようになりました。どうか風邪などひかないようにして、機嫌よく笑って過ごしていきましょう。でも、笑えないときは無理に笑わなくてもいいと思います。そういうときはそういうときです。わたしたちはそんなに強くない。できるときに、できるだけ、今までより少しの想像力を持ってやっていきましょう。

 ではまた、2週間後にお会いしましょう。

雑誌OZmagazineは、日々の小さなよりみち推奨中。今日を少し楽しくする、よりみちのきっかけを配信していきます。

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※記事は2017年10月15日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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