「銀座の歩き方」特集のサイドストーリーその2
このページでは毎号のオズマガジン制作の編集後記のような、こぼれ話のような、誌面に載せきれなかったサイドストーリーを編集部員が少しずつご紹介しています。今回は、末っ子編集部員・クリヤマが、銀座特集の料理撮影の裏話をお届けします。
更新日:2017/09/20
発売中の銀座特集、撮影裏話をお届けします
毎年恒例となったオズマガジンの銀座特集がただいま発売中です。
前回の記事では、オズマガジン表紙スタッフの撮影の様子をお届けしたところ、みなさんの雑誌の表紙に関する感想や、ボツ表紙への感想をいただけてとても嬉しく思いました。
表紙撮影の記事に対するコメントの中で、ある方が「表紙の写真のようなカフェや喫茶店も、いつも見ている風景なのかもしれない」といったコメントを残してくださっていて、本当にそうだなあと思いました。
「出先で偶然見つけたお店が自分好みの素敵な雰囲気だった」とか、「いつもよりちょっと遠回りしてみたら素敵なよりみちスポットを見つけた」とか、きっとみなさまの日常にもそんな瞬間はあって、町にはそんな「おいしい~」という瞬間や「しあわせ~」というシーンがあふれていると思います。
ひとことで「インスタ映え」といってしまえばそれまでですが、でもその写真には、「おいしいという気持ち」や「偶然のよりみちの喜び」とか、「いい1日だなあと思う感覚」とかとか、そういう素敵なときめきが詰まっていると思うのです。
そんなわけで今日も写真を通してそんな気配みたいなものをお届けできていたら幸いです。
また中には、もっと泥臭い話も聞きたい! なんてコメントもいただき、ちょっとドキッとしたり・・・。もちろん楽しいことばかりではありませんが(笑)、今日も編集部は次の号「ひとり旅特集」とその次の号とその次の次の号と向き合いつつ、力と気持ちと知恵を合わせて、本を作っています。
そんな今日は、現在発売中の「銀座特集」の撮影について振り返りながらお話してみようと思います。つい前置きが長くなってしまいましたが、お付き合いいただけたら幸いです。
おいし美しスイーツ撮影は早朝に・・・
ちょうどこの銀座号を作っていたのはお盆休みを目前にした夏の日。
わたしの担当した銀座のフルーツトピックスのページでは、最近注目の集まるフルーツをふんだんに使った見目麗しいスイーツの数々をご紹介しています。中でも今年の2大ニュースは、老舗「銀座千疋屋 銀座本店 フルーツパーラー」のリニューアルと、「資生堂パーラー サロン・ド・カフェ」の新メニューの登場! 誌面の巻頭特集として、2店舗をはじめとする実力派の名店に、取材させていただきました。
メニューと店内の撮影、そして作り手にじっくりと話を伺うということで、取材はお店の営業時間前やアイドルタイムが大半。今回の資生堂パーラーさんの撮影には、朝の8時にお邪魔させていただきました。
スタッフは、パフェと会話を始めるほどにパフェを愛するフォトグラファー・米山典子さんと、幼き頃は銀座が庭だったと豪語するライター・船橋麻貴さん。この日は女子率高めの布陣でした。
緊張感の漂う、パフェの登場!
まず登場したのは、この秋登場する新たなパフェ「シャインマスカットと3種の葡萄パフェ」。つやつやでぷっくりとした実がぎっしり並ぶ姿に、わたしを含むスタッフ3名は思わず感嘆・・・! 一瞬、仕事をすっかり忘れ、甘いものに目がないときめき女子になってしまいました。
でも次の瞬間からは、米山さんがプロの顔に。パフェがいちばん美しく見える角度、光と影、色味、カトラリーやテーブルクロスなどその他の要素・・・、すべてに気を配り調整しながら、撮影が進みます。シェフと広報担当さん、わたしたちスタッフが見守るなか、シャッター音が響きます。(わたしの場合、この瞬間に思わずお腹が鳴ってしまうのも、緊張の種のひとつです。内臓にもプロ意識を持たせたいものです・・・!)
すこし無口で職人気質な印象を受ける飲料長の橋本さんは、米山さんの写真をパッと見た後に「パフェを作るまでがわたしの仕事。写真はその道のプロに任せます」とひと言。なんてかっこいいんだ!と、惚れてしまいそうなセリフでした。
橋本さんはパフェの食べ方についても、「おすすめの食べ方は特に決めていません。全部混ぜて食べる方もいれば、上から順に食べる方も。それぞれの好きな食べ方で、楽しく召し上がっていただければ、それがいちばんおいしいんです」とおっしゃっていて、「こだわり抜いて情熱を注ぎ作り上げ、そしてその先は受け手にゆだねる」という姿勢に感動しました。
(でも庶民のわたしは、美しすぎるパフェを前に、美しく食べなくては失礼にあたる!などと謎の意気込みを持ってしまいましたが・・・!)
楽しむ気持ちがいちばんのおいしさの秘訣
続いて登場したのが今年の新メニュー「フルーツサンドウィッチ」。トーストしてさっくりとした食感に仕上がったレーズントーストに、口当たり軽やかなクリームと7種類のフルーツがきゅっとサンドされた1品は、見た目もかわいくとてもフォトジェニック。
撮影後には、今度はこのサンドウィッチの生みの親・総料理長の井上さんが挨拶に来てくださいました。ちょうど新商品の試作をするのだということで、その手には希少なため1本500円以上するという某高級バナナが!(非常に食べたかったですが、そんなおこがましいことは言いだせず指をくわえて見つめていました)
次のフルーツサンドはバナナを使おうかと、相性のいいパンを探し求める日々だそうで、「白パンかなあ、いや、あれもいいなあ・・・」なんて、うきうきイマジネーションを膨らませる様子に立ち会わせていただきました。
お店のオープンの前に早朝から、撮影のための準備に、今後のメニューの構想と、日頃目にしている通常営業の時間以外にあるストーリーを改めて目にし、感謝と尊敬が膨らんだ瞬間でした。
なお、朝8時からの撮影に向かうだけで早起きした達成感を得ていたわたしは(編集部は通常は9時半始業)、撮影後、眠そうな自分の顔に喝を入れ直したのは言うまでもありません。
素敵な瞬間はそこかしこにあるのかもしれません
この日資生堂パーラーさんにお邪魔して感じたのは、うきうき楽しそうに遊び心を持って作る姿勢や、情熱をかけてこだわり抜く心、そんな尊敬できる素敵な思いを持つ人たちが作るからこそ、そのメニューがわたしたちを惹きつけるのだなあ、ということ。
それから、夢中になっている人は強い!ということ。たとえ朝が早かろうと、夜が遅かろうと、時間をすっかり忘れていいものを作ろうという気持ちは、どんな職業でも同じなのかもしれません。
それはもちろん、わたしたち本のつくり手にも言えることだなあと思います。仕事には難しいこともいろいろありますが、「いち女子として、本当においしくて素敵で感動した瞬間」を、お届けしたいなと改めて思いました。(そんなこの日のスタッフ女子3人組のときめきと食欲、フルーツ愛の詰まったページ、ぜひご覧いただけたら幸いです)
と、そんなわけで今日も、編集部は冒頭に書かせていただいたような、町中にある日々の胸のときめきを探して、外に繰り出します(または見つけてきたそんな瞬間を、言葉と写真にするべく考え抜きます)。
少し泥臭い(?)話もするならば、ときめきについて考えすぎて寝食を忘れたり、打ち合わせがヒートアップして夜が深くなったり、フクヘンと意見が合わずに睨み合ったり(さっき)、そんな日々ですが(笑)、
きっと次号も、おいしくて楽しいよりみちをたくさんお届けできると思います。楽しみにしていていただけたら幸いです。
それでは今日も1日機嫌よく、どうぞ素敵な1日をお過ごしください。また来週もこのページでは、ちょっとした息抜きになるような裏話や本の見どころを編集部員がご紹介しますので、お楽しみに。
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