編集部の「いい1日」リポート VOL.007
この連載では、編集部員が見つけた「いい1日」のヒントをご紹介。特集のためのリサーチから、個人的な趣味の散歩、その他もろもろ、よりみちで出会ったことや感じたことをつづります。第7回は、タキセが「10年(以上)続くカフェ」を訪れるシリーズです。
更新日:2017/07/21
カフェと町、変わること変わらないこと
こんにちは。編集部のタキセです。自他ともに認めるオズマガジン編集部一の「カフェマニア」です。私タキセの担当回では、10年以上続くカフェの色あせない魅力を探っていこうと思っています。
三軒茶屋から東急世田谷線に揺られて3駅目の松陰神社前。駅前には商店街が広がっています。魚屋さんや肉屋さん、パン屋さんにおでん種の専門店など、昔ながらの商店に混じって、ここ数年でおしゃれな古本屋さんやパティスリーが続々とオープン、一躍注目の町になっています。
「café Lotta」は、松陰神社通り商店街がおしゃれエリアになるもっとずっと前、16年前にオープンしました。むしろ、この町が変わったのは、このカフェがきっかけだったとも言えるかもしれません。
壁紙とカフェオレボウルと角砂糖
私が最初に「café Lotta」を訪れたのは、もう10年以上前のことです。とある本の表紙になったラテアートのロッタちゃんにひと目ぼれしたからです。
「ティールームを詰め込んだ真っ白な小箱が、東京の片隅の商店街に届いた」。私のこのカフェの第一印象です。あえてポエム風に表現したくなるくらい夢心地でした。それから何度か足を運び、そしてつい先日訪れたときに改めて感じた印象も、実はそんなに変わりません(商店街はずいぶんとおしゃれに変わりましたが)。
なにかのものまねではないオリジナリティがすみずみまで行き渡り、それを丁寧に保っていれば、いつまでも新鮮さを失わないものです。ウィリアム・モリスの壁紙も、テーブルの上の角砂糖を入れたカフェオレボウルも、その角砂糖を包む薄い茶色い紙も、どれも一つひとつ選び抜かれていることがよくわかります。
荒波を乗り越えて航海を続ける
オープンから16年経っても、相変わらず魅力的な「café Lotta」ですが、実は今年の春、転機を迎えました。オーナーの桜井かおりさんがオープン当時に思い描いていた、誰もがいつでも気軽に立ち寄れる町の喫茶店という原点に立ち返り、おひとりで営業するスタイルに切り替えたためです。メニューはドリンクとケーキやトーストなどの軽食にシフトし、2階席もなくして席は1階のみになりました。
どんな人も、ものも、ことも、取り巻く状況は刻々と変わっていきます。小波も荒波も乗り越えて、長く長く航海を続けているカフェはすごい! ・・・この連載のテーマを「10年続くカフェ」に決めた時のことを、「café Lotta」のリニューアルを聞いてまた思い出しました。続くことは、当たり前ではありません。今日も店を開ける「café Lotta」に、すべてのカフェに、ありがとうを伝えたいです。
あの時と同じほんわか笑顔で
久しぶりにお目にかかったラテアートのロッタちゃんは、あの時と同じほんわか笑顔で、ほれ直しました。しかも、桜井さんが、私の前髪をイメージして、アレンジして描いてくださったスペシャルバージョン。もう、これだけでじゅうぶん、いい1日! できるなら10年後もまたここで、ロッタちゃんに会えたら、と願います。
あなたが10年後もまた行きたいと思うカフェはどこですか?
ではまた次回、このページで。別の編集部員がリポートをお届けしますので、お楽しみに。
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