OZmagazine編集長の「F太郎通信2017」4通目
オズマガジン編集長古川が、日々の中で感じたことを、読者のみなさんに手紙を書くようにつづったエッセイのようなものです。
更新日:2017/07/23
言葉という儚いのりものに乗って
こんにちは。2週間ぶりですね。いつの間にか夏も本番です。夏バテしていませんか? 本当に暑いですね。元気で過ごせていますように。
このコラムを2週間に1回書くようになって、まだお会いしたことのないみなさんのことをよく考えるようになりました。たぶんこの記事にはコメントが書けるから、みなさんと手紙を交換しているような気持ちになれるのだと思います。今まで僕らは情報を雑誌としてパッケージしてそれを書店さんに置いていただくことで、みなさんの手に届けていただいていました。その1冊には僕らが考えていることがまとめられていて、お金を出して買っていただいた人をがっかりさせないように、日々いい本を作ろうと努力してきたつもりです。もちろんその努力は今も続いています。そしてオズマガジンは僕らにとってなにより大切な思いのこめられたものになっていると思います。
でも一方でそれを作って本屋さんで待っているだけで、自分たちの仕事は終わったと思い込んでいたようなところも少しあるのかもしれないなというのが、ウェブサイトを作ってみたいま僕が思っていることです。ある意味においてはそれは少し傲慢だったかもしれないなあと。自分たちが作っているものを伝えようとする努力をしないで、買ってほしい方に「本屋さんに来てください」というのは、何のマニフェストも掲げずに政治家に立候補して、当選させてくださいと言っているようなものかもしれません。
本屋さんに行く人が年々少なくなっているということは、データがはっきりと表しています。悲しいことですが書店さんの数も、20年前から比べたら半数近くに減ってしまいました。人々が本を読む時間の代わりに手に入れた時間の使い方の代表は明らかにインターネットに触れている時間であり、スマートフォンの普及によってそれはもう決定的なものになりました。
そのような状況の中で僕ら雑誌ができることはなにか考えたときに、やるべきことははっきりしていました。インターネット上でもオズマガジンのことを「伝える」場所を作ることです。スマートフォンやパソコンの画面を通じてみなさんに語りかけることです。でも、今までの僕らは「作ること」が仕事だと思い込んでしまっていて、それに対する意識は少し弱かったのです。
逆説的な言い方になってしまうかもしれませんが、僕らは紙の雑誌にもこだわっているからこそ、紙以外の場所でも自分たちの考えていることをみなさんと共有したい。そしてより多くの人に、オズマガジンのことを知っていただきたい、そういうふうに考えています。
知っていただきたいというのは、このページのページビューがあがればいいということではありません。本がただたくさん売れればいいということでもありません。もちろんそのどちらも嬉しいことですし、それが僕たちの目指すことではありますけど、それは「結果的」にそうなるように努力するということです。
あくまでも僕らは、「よりみち」しながらゆっくり生きるという価値観を、雑誌やウェブサイト上でつながった方々と共有し、そのきっかけになりたい。それがいつも最初にあることで、だいたいほとんどすべてです。
なぜ僕らがそれをみなさんに伝えたいか。答えはシンプルです。僕たち自身が「よりみち」が大好きだからです。そして僕らはその「よりみち」の日々の中で、たくさんの人に出会い、たくさんの世界の美しさの気配にふれ、大げさに言えば生きることの喜びをずっと教えられ続けているからです。
そのことをもっとたくさんの人と共有して、誰かの「いい1日」のきっかけになれたら、そうしてみんなのいい1日が増えたら、わたしたちが住んでいる町も、国も、きっと世界だって、もっと今より笑顔の多い場所になるはずだと思うのです。大げさですけど、そういう未来にちょっとでも貢献できたら嬉しいと思って、僕たちはこうして毎日本を作り、ウェブサイトを運営しています。
先日嬉しいコメントをいただきました。ひとつひとつのコメントに返信ができたらいいのですが、そういう機能はついておりませんので、ここで紹介させていただきます(すべてのコメントに目を通しています。いつもありがとうございます)。ネガティブな意見やご要望なども時々いただきますが、そういったことも真摯に受け止めて、できることは改善しながら精進したいと思います。
「オズモールいつも使わせてもらっていますが、オズマガジンは買ったことがなかったので、今度本屋さんに行って買ってみようと思います」
これは、本当に嬉しいコメントでした。嬉しいポイントが3つもあります。まずはいつもオズモールを使ってくれていること。あまたあるサイトの中でオズモールを選んでくださっていることがとても嬉しい。それからもうひとつ。それは本屋さん以外の場所で僕らがオズマガジンのことを語りかけて、その方に本を買ってみようって思っていただけたこと。そして最後は本屋さんで買おうと思っていただけたこと。本屋さんにはオズマガジン以外にも本当に本当にたくさんのいい本が並んでいます。その本屋さんに、このサイトがきっかけで足を運んでくれたとしたら、それは本当に嬉しいことです。今日僕は本屋さんでPOPEYEの「カレー」特集を買いました。ほくほくです。
一方で本屋さんに忙しくて行けないという方もたくさんいらっしゃると思います。そこでオズマガジンに興味を持ってくださった方のために、定期購読のご案内もしています。サイト内の「オズマガジン最新情報」をチェックしてみてください。
「よりみちじかん」
ひらがなで書かれたこのサイトの名前は、オズマガジンの意思そのものです。
森の奥の畑で機械を使わずに土を耕すように、小さな編集部で作っている本であり、ウェブサイトです。頻繁に更新することもできませんし、最新や最旬のトピックスばかりが並んでいるわけではありませんが、ときどきこうやって会いにきていただけたら嬉しいです。いつでも「よりみち」のきっかけや「よりみち」そのものをご用意してお待ちしています。毎月12日発売のオズマガジンも、ぜひ機会があったら手に取っていただけたら嬉しいです。どのような形であれ。
では、また。まだまだこれから暑くなると思いますが、機嫌よく元気に過ごしていきましょう。また手紙を書きますね。
いい1日を。
雑誌OZmagazineは、日々の小さなよりみち推奨中。今日を少し楽しくする、よりみちのきっかけを配信していきます。