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定年が70歳になるって本当?4月に改正された高年齢者雇用安定法についてわかりやすくFPが解説

更新日:2021/06/06

老後資金を考える際に、何歳まで働くかは大きなポイントに。そんななか、定年が70歳になるかもしれないというニュースを聞いたことがある人もいるのでは? 実際延長になるの? そして私たちの生活には影響があるの? ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんにわかりやすく解説してもらいました。

高年齢者雇用安定法の改正でなにが変わるの?

高年齢者雇用安定法の改正でなにが変わるの?

「老後資金のためにも長く働きたいけれど、何歳まで働き続けられるか心配という人もいるでしょう。そんな人には『高年齢者雇用安定法(高年齢者の雇用の安定等に関する法律)』が2021年4月に改正されたニュースは朗報かもしれません」と氏家さん。

そもそも高年齢者雇用安定法とはどういう法律なの?
「この法律は前回2013年の改正で、65歳定年制を定めました。定年を60歳未満とすることを禁止し、65歳まで雇用を確保する措置を事業主に対して義務付け、2025年までに完全移行することを定めています。今回、2021年4月に施行された改正法では、これをさらに一歩進めて『70歳までの就業確保』を事業主に対して努力義務としています」(氏家さん)

定年が伸びるの?70歳までの就業確保の努力義務とは

定年が伸びるの?70歳までの就業確保の努力義務とは

70歳までの就業確保の努力義務となると、私たちの定年が70歳まで伸びるの?
「今回の改正の対象となっているのは、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、65歳までの継続雇用制度を導入している事業主。定年引上げを含む5つの努力義務が与えられ、事業主がどれかひとつを選択できるようになっています。

(1)70歳までの定年引上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度、再雇用制度、勤務延長制度の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a)事業主が自ら実施する社会貢献事業
b)事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

つまり、70歳まで定年を引き上げる企業もあれば、一度65歳で定年した後に短時間労働者として働く契約を結ぶことや、退職後は個人事業主となって会社から仕事の一部を請け負い出来高払いで収入を得ること等も選択肢となります。もちろん、従業員とよく話し合い、本人が希望しなければ働き続ける必要はありません」(氏家さん)

企業にとっては労働力の確保という利点がある一方で、人件費が経営の重荷になる可能性もあるこの制度。だからこそ、企業側にとっても選択肢が与えられていることや、あくまでも罰則の無い努力義務であることを知っておいた方がよいとのこと。

高齢者も働く世の中に。私たちはどうするべき?

高齢者も働く世の中に。私たちはどうするべき?

なぜこのような改正法になったの?
「70歳までの雇用を確保しようという流れの背景には、年金財源の厳しさがあると考えられます。日本は世界でも有数の長寿国ですが、少子化が進んで労働力が不足しており、年金制度の支え手が不足しています。
現状日本の年金受給開始年齢は原則65歳からですが、ドイツやフランス、アメリカなどのように、近い将来、年金受給開始年齢を67歳まで引き上げることを決定して制度移行を進めている国もあります。平均寿命が延びている以上、この日本でも、高齢者がより長く働いて世の中を支え、年金受け取り開始が遅くなる将来をイメージしておいた方がいいでしょう」と氏家さん。

では実際に年金受け取り開始が遅くなる場合、私たちはどうすればいい?
「現実的に考えて、勤務先の企業に体力が無ければ、定年延長の制度化は難しいでしょう。短時間勤務となっても65歳以降も雇用継続できたらラッキーくらいに考えて、自分でも第2の仕事を切り開く準備をしておくことをおすすめします。好きなことを極める、副業できるスキルを身につけるなどしておくと、本業の稼ぎが減っても第2の仕事が収入を補ってくれるでしょう。老後に向けた資産運用と合わせて、こうした準備もしておくと、老後不安が和らぎます」(氏家さん)

教えてくれた人

氏家祥美(うじいえよしみ)さん

ハートマネー代表。
ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。家計の見直し相談や講演活動を通じて、お金の基礎知識を伝えている。お金だけじゃない『幸福度の高い家計づくり』を総合的にサポートしている。zoomなどを使ったオンラインでの家計相談も受付中。

【マネー特集】働く女性のお金のハナシ

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※記事は2021年6月6日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります