「貯蓄」は当面の生活資金とリスク予備資金の準備に
そもそもお金を貯めたり増やしたりする主な方法には、おもに「貯蓄」「保険」「投資」の3種類があると、氏家さん。
「それぞれの長所と短所を理解して上手に使い分けると、リスクを抑えた資産形成がしやすくなります。貯蓄・保険・投資のそれぞれの長所と短所を図に示しました」(氏家さん)
まず最も身近に感じる人が多い貯蓄はどのような特徴があるの?
「貯蓄は、いつでも出し入れしやすく元本保証で、『流動性』と『安全性』に優れています。そのため、急なお金が必要になったときにもすぐに活用できるため、日常生活費のほか、病気や失業など万が一のために備えておくお金も貯蓄が向いています。
一方で、超低金利が続いて収益性には劣るため、資産のほとんどを預金口座においておいても一向にお金は増えません。そこで、余裕資金や老後資金については、保険や投資を織り交ぜていくことを考えます」と氏家さん。
「投資」は余裕資金と老後資金準備、「保険」は控除の枠にメリットあり
最近話題の投資はどう考えればよい?
「投資は増える可能性に期待ができるものの、元本割れの可能性が伴います。安全性に欠けるものの収益性が期待できる投資は、安全性と流動性に優れた貯蓄と、強みや弱みをお互い補完しあう関係にあることがわかります。投資は、当面使う予定のない余裕資金や老後資金準備に向いています」(氏家さん)
では保険は何のために必要なの?
「ここでいう保険とは、終身保険や学資保険、個人年金保険のような貯蓄性のある保険を指していて、保障目的だけで加入する掛け捨ての保険や、運用のリスクを伴う外貨建て保険や変額保険等のことではありません。
貯蓄性の保険の特徴は、もともと『安全性』と『収益性』にあります。加入時に約束した予定利率で運用され、貯蓄よりも高い利回りで確実に運用されることから、保険はかつて運用の手段としてよく活用されていました。残念ながら、近年は日本円建ての保険の予定利率はかなり低下していますが、加入する保険をよく吟味して、生命保険料控除の枠を有効活用すれば、メリットはあるでしょう」と氏家さん。
生命保険料控除ってどのくらいお得なの?
「例えば、終身保険の保険料を年間8万円支払うと、4万円の所得控除が利用できます。所得税率が15%の人の場合、6000円の所得税と4000円の住民税が減らせることになるため、合計1万円の節税になります」
※生命保険料控除の詳細は国税庁ホームページでご確認ください
最低限の貯蓄が前提。目的別の積み立てを組み合わせ
3つそれぞれの特徴はわかったけれど、実際どのように生活に組み込めばいいの?
「長期的な資産形成には、積み立てが便利です。貯蓄は財形貯蓄や銀行の自動積み立て、保険は終身保険や学資保険、個人年金保険等の保険料を毎月払い、投資はiDeCoやつみたてNISAなどの非課税口座を使って投資信託の積み立てを活用しましょう。これらの方法を組み合わせると、手間をかけずに目的別にお金を積み立てすることができます」と氏家さん。
ではどれくらいのバランスで考えていけばよい?
「また、新入社員のようにこれからお金を貯め始める世代は、まずは貯蓄に注力しましょう。ひとり暮らしの場合、少なくとも50万円貯まるまでは、保険や投資を始める必要はありません。50万円は何とか3カ月生活できる金額です。失業給付が出るまでの生活資金や、遠方の実家に移動する交通費としても活用できます。
すでに家族がいる場合には、できれば6カ月分の生活費は預貯金で欲しいところ。生活規模も大きくなっていると思うので、150万円~200万円程度はリスク予備資金として預貯金で確保しておきましょう。
教育資金は学資保険かつみたてNISA、近い将来住宅を購入する予定がある人は元本確保重視で財形貯蓄や銀行の自動積み立て、老後資金はiDeCoやつみたてNISAを活用しましょう。こうした積み立ての仕組みを作ると、何年後にいくら貯まるかがイメージしやすく、生活設計が立てやすくなります。まだの方は仕組みづくりを始めてみましょう」(氏家さん)
教えてくれた人
氏家祥美(うじいえよしみ)さん
ハートマネー代表。
ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。家計の見直し相談や講演活動を通じて、お金の基礎知識を伝えている。お金だけじゃない『幸福度の高い家計づくり』を総合的にサポートしている。zoomなどを使ったオンラインでの家計相談も受付中。
【マネー特集】働く女性のお金のハナシ
先行き不透明な時代、多様化するライフスタイル。お金に関して、漠然とした不安は感じるけれど、分からないことだらけ。みんなどうしてるの? 気になるけれど、聞きづらい。情報も多すぎて、どれが私に合っている話なのか、見分けもつかない。そこでOZmallが女性たちに、これから先も“私らしく”過ごしていくために必要なお金の新常識を提案します。