FIREとは早期リタイアのこと。リタイア後は質素に暮らす
そもそも「FIRE」とはなんのこと?
「FIREとは『Financial Independence(経済的自立)、 Retire Early(早期退職)』のそれぞれの単語の頭文字を並べた造語です。もともとの英語の意味のとおり、FIREとは早期リタイアのことを言います。最初は欧米の若者の間でブームとなり、その後日本でも注目されるようになりました。なかには、30歳でFIREを達成したというSNSの投稿が話題となり、その体験を出版する人も出てきています」と佐藤さん。
では、早期リタイアとは具体的にどういう状態?
「大きな資産を築くことで、お金のために働くことから解放される生き方です。たいていは資産運用で若いうちに大きな資産を築いて、その配当収入で暮らすという形です。
その根底にある考え方が『4%ルール』といわれるものです。アメリカのトリニティ大学の調査によると、4%の利回りで退職金を運用していた人は、元本(=元手となるお金のこと)をほぼ減らさずに生活できているとの結果があります。
例えば、年間で300万円あれば生活できる場合、7500万円の金融資産を投資で築くことをめざします。7500万円の金融資産の配当収入を4%とすれば、年間300万円配当収入が得られるからです。この300万円の範囲内で暮らせば、築いた金融資産を取り崩すことなく、長期的に生活できます。リタイア後は仕事をせず豪遊するというより、質素な暮らしをしていくところも特徴的です」(佐藤さん)
FIRE実現後はライフワークとして仕事をする人も
オズモール読者のアンケートでは、FIREをめざしてみたいと思っている人は全体の30%弱という結果に。実際にめざしているのはどんな人が多いの?
「20、30代の独身の若者で、女性よりも男性に多いようです。FIREをめざしている人たちが、自身の投資の内容や途中経過に関する投稿をしているのを、SNSでたくさん見つけることができます。めざす動機としては、今やっている仕事の収入が低い、楽しさも充実も感じられない、そんな生活から抜け出したいという方が多いようです」と佐藤さん。
リタイアと言うと毎日が休みのような生活をイメージするけれど、FIREを実現した人はその後どんな生活をしているの?
「FIREという言葉がブームになる前から、私の周囲に実際にFIREを実現した人が何人かいます。その人たちは、投資というより事業で成功しているのですが、当初は悠々自適な生活をしていたものの、次第に生活が退屈になり、結局新しい事業を立ち上げ、今でも何かしらの仕事をしている人が多いです。
また、東日本大震災の被災地に移住し、ボランティアを本格的に始める人もいます。FIREを実現した人は、その後一生遊ぶというよりは、お金のためではなく、純粋にやりがいを感じられるライフワークとして、仕事などをしていることが多い印象です」(佐藤さん)
FIREをめざすメリットやデメリット
FIREをめざすメリットやデメリットは?
「FIREを実現しようと思えば、若いうちから支出を極力削減し、使えるお金は積極的に投資に回す必要があります。それにより、お金の管理する力が身につくのは大きなメリットと言えます。また、若いうちにめざす金融資産を決めることで、将来の人生設計をしっかり考えて生きていけるというのもメリットでしょう。
ただその反面として、無理な節約でストレスを抱えたり、日々の生活資金も投資に回してしまい、今現在の生活が破綻してしまうリスクもあります。また、特に若いうちは勉強や旅行、人脈づくりなど、自己投資での体験が自分自身の成長にとって大事な時期だと考えますが、そのようなお金も犠牲にしかねないリスクもあります」
佐藤さんによると、FIREをめざすことには、一長一短があるということ。
FIREをめざさなくても考え方は参考になるかも
FIREをめざすにはどれくらい投資が必要になるの?
「先ほどの例であげた7500万円の金融資産を年間4%の利回りでめざす場合、毎月10.8万円を30年間投資に回し続けなければなりません。
これを実践するには、若いうちから
1.お金についてある程度学んでいること
2.ある程度の給与の高い会社に勤務していること
3.FIRE実現後にどんな生活をしたいか明確で高いモチベーションがあること
という条件が満たされないと、実行するのは難しいでしょう」と佐藤さん。
なかなかハードルが高そうなFIRE。ちょっと自分には関係ないかもと思った人も多いのでは?
「FIREの実現が無理だからといって、FIREという考え方が自分には関係ないと考える必要もありません。
無駄な支出を削減し、余裕資金を投資に回すという基本は、FIREをめざさない人にとっても同じです。また、若いうちから人生設計を考え、なにかしら新しい行動を起こす姿勢もまたそうです。
充実した人生を歩むためにFIREが必要であれば、めざしてみるのもいいと思いますし、そうではなくても、ブームに乗っからず目的意識を持ち、FIREをめざしている人のお金の使い方や姿勢については、参考になる部分もあるかもしれません」(佐藤さん)
教えてくれた人
佐藤彰(さとうあきら)さん
佐藤彰コーチングFP事務所代表。
ファイナンシャルプランナー。金融機関からの独立を経て情報提供する必要性を実感し、現在は金融商品や保険を販売しない独立系のFPとして活動している。
【マネー特集】働く女性のお金のハナシ
先行き不透明な時代、多様化するライフスタイル。お金に関して、漠然とした不安は感じるけれど、分からないことだらけ。みんなどうしてるの? 気になるけれど、聞きづらい。情報も多すぎて、どれが私に合っている話なのか、見分けもつかない。そこでOZmallが女性たちに、これから先も“私らしく”過ごしていくために必要なお金の新常識を提案します。