1877(明治10)年に誕生した日本初の民間のワイン醸造所「大日本山梨葡萄酒会社」を源流とするメルシャン。そんな日本ワインの聖地である「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」では、週末をメインにワインのプロが案内するワイナリーツアーを開催中。今回は、オズモール編集部が日本ワインの魅力に触れる「勝沼ディスカバリーツアー」に参加した様子をお届けします。
日本ワインが生まれた場所で、その歴史に触れる
今回、ツアーを案内してくれるホスピタリティ・マネージャーの生駒元(いこま げん)さんは、長年ワインの醸造や研究などに携わってきたシニア・ワインメーカー。まさにワインのプロです。
まずはワイン資料館でメルシャンの歴史を振り返ります。この資料館は1904年に建てられたもので、現存する「日本最古の木造ワイン醸造所」として2020年に日本遺産にも認定されたそう。
資料館のなかには、明治時代に実際にワイン造りに使われていた器具や、当時のワイン造りの様子がわかる貴重な資料などが展示されています。
「こちらの地下室は年間を通して15度前後、天然のワインクーラーなんです。2010年までは実際にワインの貯蔵庫として使っていました」と生駒さん。
ワイン用のぶどうは、生食用のぶどうよりも甘い!?
次に案内していただいたのは「祝村(いわいむら)ヴィンヤード」。ヴィンヤードとはぶどう畑のこと。こちらにはなんと、20種類のぶどうが植えられているそう。木の根元には「メルロー」「カべルネ・ソーヴィニヨン」などおなじみの品種名がずらり。よく見ると葉っぱの色や形、実のなり方が違うのがわかります。赤ワイン用の品種はすべての実にまんべんなく日光が当たるように葉が除かれているのに対して、白ワイン用品種は、酸味を生かすため、葉が残されているのも特徴的。
「よかったら食べてみてください」とすすめられるまま、口にしたカベルネ・フランの甘さにびっくり。
「生食用のぶどうの糖度は平均15~16度ですが、ワイン用のぶどうの糖度は22~23度。この糖度を酵母菌のはたらきによって二酸化炭素とアルコールに変えることで、ワインならではの酸味が残ります」
品種によって異なる個性を生かすため、さまざまな工夫が
次はいよいよワイン造りの現場へ! 温度管理された白ワインを発酵するステンレスタンクが並ぶ「Bセラー」や、フランス製の大きな樽が並ぶ「Fセラー」、大小さまざまな樽が並ぶ「Aセラー」など普段は入ることができない場所へ案内していただきます。メルシャンで年間650トンのワインを仕込んでいて、そのうち500トンはこちらのワイナリーで仕込んでいるそう。
編集部が訪れた日は、ぶどうを選別している様子を見学することができました。ベルトコンベヤーにのせられたぶどうを、ワインメーカーの皆さんが瞬時により分けていきます。
「シャトー・メルシャンのこだわりのひとつとして、ぶどうが持つ個性を生かすため、ぶどうをそれぞれの品種や産地ごとにランク分けし、そのランクに応じたワインを仕込んでいます。房の状態と粒、2段階でぶどうを選別するワイナリーは非常に少ないんですよ」
500樽のワインが眠る地下セラーへ
こちらの地下セラーには、500個の小さな樽が並びます。シャトー・メルシャンでは、日本らしい調和がとれたワインをつくるため、やわらかなバニラの香りがするフレンチオークの樽を使っているといいます。目指しているのは、自然と調和し、一つ一つが完全にバランスのとれた“日本庭園”のようなワインなのだそう。
「ここで白ワインは約6カ月、赤ワインは1年~1年半熟成させます。その間、樽の木目を通じてワインが蒸発してしまう“天使の分け前”が発生します。樽に空気の層ができると、ワインが酸化してしまうため、定期的に同じワインを足し、満量にする作業も大切です」
シャトー・メルシャンが誇る代表的なワイン4種をテイスティング
最後はお待ちかねのテイスティング。今回テイスティングしたのは「岩出甲州きいろ香 キュヴェ・ウエノ 2021」「北信シャルドネ キュヴェ・アキオ 2019」「穂坂マスカット・ベーリーA シングル・ヴィンヤード 栽培責任者 横内栄人 2018」「塩尻メルロー 2018」の4種類。ただ飲み比べるだけでなく、“グレープフルーツの香りを感じ取ろう”“バニラやアーモンドの香りを感じ取ろう”などそれぞれのワインの特徴に合わせたチャレンジが用意されているので、ワイン初心者でも楽しめます。
今回のツアーで印象的だったのが、シャトー・メルシャンではワイン造りの技術をおしげもなく公開しているということ。「自社だけでなく、日本全体でおいしいワインを造ることで、日本が世界中からワインの産地として認められることを目指しています」
日本ワインの新しい魅力に触れ、もっといろいろな日本ワインを飲んでみたくなりました。
ワインと相性抜群のペアリングランチも楽しめる
ワイナリーツアーの後は、事前に予約しておいた「ペアリングBOX」(1800円)でランチタイム。パテ・ド・カンパーニュやお魚のグリル、ラタトゥイユなど勝沼の「ビストロ・ミル・プランタン」特製のお料理はどれもワインにぴったり。ショップでは4種類のテイスティングセットが注文できるので(別料金)、ぜひペアリングを楽しみたいところ。
ワイナリーツアーやテイスティングセットで気に入ったワインはショップで購入できるほか、ほかにもワイナリー限定のワインが販売されているから、ぜひ覗いてみて。
ワイナリーツアーは要予約、ワインギャラリー・ショップ・資料館は予約なしでも楽しめます。
SPOT DATA
- スポット名
- シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー
- 電話番号
- 0553441011 0553441011
- 住所
-
山梨県甲州市勝沼町下岩崎1425-1
- 営業時間
- ワインギャラリー
・ワインショップ10:00~16:30
・テイスティングカウンター10:00~16:00(L.O.)
ワイン資料館 9:30~16:30
- 定休日
- 年末年始ほか、冬期をはじめ不定期に休業
- 交通アクセス
- <電車>JR勝沼ぶどう郷駅よりタクシーで約8分、塩山駅よりタクシーで約10分
<車>中央自動車道勝沼ICより約5分
- 勝沼ワイナリーツアー
- 問い合わせ・電話予約 TEL.0553-44-1011(受付9:30~16:30)
勝沼ワイナリーツアーの詳細・WEB予約はこちら
- ホームページ
- シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー
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