今、ますますおいしくなる日本ワインの中で、最も活況のある地と言われているのが長野県の東御市(とうみし)。そんな東御で生まれるワイン11種類を、地元で人気の2人のシェフのお料理に合わせていただく「TOMI WINE FESTA 2024 SPECIAL DINNER “tsunagu”」に編集部が参加してきました。
日本を代表するワインの銘醸地・東御市
長野県の東部、西に上田市、東に小諸市という場所に位置する東御市は2004年に小県郡東部町と北佐久郡北御牧村が合併して誕生した人口3万人ほどの町。晴天率の高さや、昼夜の寒暖差の大きさなど、ワイン用ブドウの栽培に恵まれた環境をもつ産地として注目されています。
そんな東御市に初めてワイナリーができたのは2003年。エッセイスト・画家としても知られる玉村豊男さんが「ヴィラデストワイナリー」をオープンさせました。2008年には長野県初のワイン特区に認定され、2010年には「リュードヴァン」、「はすみふぁーむ&ワイナリー」が相次いで設立。
その後も県外からワイン造りを志す人が続々と集まり、2014年には「ドメーヌナカジマ」が誕生。以降、毎年のように新しいワイナリーが誕生し、ここ20年の間に14軒ものワイナリーが生まれ、今や日本ワインを牽引する地となりました。
東御ワインフェスタ、新たな2つの試み
そんな東御で生まれるワインや地元の料理がいただけるのが東御ワインフェスタ。10回目の開催となった今回、リニューアルをし、東御を代表するイタリア料理「ノンナジーニャ」の五十嵐孝平シェフ、フランス料理「sens」の名取誠司シェフによる全7皿のコース料理に、東御市のワイン11種類を着席でいただけるディナーイベントを初開催。
2024年5月12日(日)に、東御市の湯楽里館ワイン&ビアミュージアムにて開かれた「TOMI WINE FESTA 2024 SPECIAL DINNER “tsunagu”」に参加してきました。“tsunagu”というテーマには、ワインの造り手と料理人、食材の生産者と料理、それを味わうお客様を繋ぐこと。そしてそれを未来の子供たちの世代まで繋いでいけるような東御でしかできないディナーができたらという想いが込められています。
17品種のブドウから造られたオリジナルワイン
もう1つの新しい取り組みが、東御ワインフェスタ2024オリジナルワイン「Assemblage 2023」。今回のイベントのために東御市内の19生産者からシャルドネ、巨峰、ソーヴィニヨンブランなど17品種ものブドウを集め、Aperture Farm and Wineryにて醸造したというロゼワイン。
色鮮やかな美しいエチケットを手掛けた東御市在住のアーティストSarryさんも会場に駆け付け、「ワインを試飲したときに感じた、優しくて丸い平和なイメージを描きました」と言うワインは、お花のようなアロマがふわりと香り、17もの品種が見事に調和した唯一無二の味わいでした。今後毎年、醸造するワイナリーが変わるそうなので、来年以降もお楽しみに。
生産者がサーブをし、直接会話ができるという特別感
地元の食材を使った料理が続々と提供され、佐久市産の信州サーモンに合わせたのは、ヴィラデストワイナリーの「ヴィニュロンズリザーブ シャルドネV.V. 2022」
代表の小西超さんが「ヴィラデストのオーナーの玉村豊男が32年前に東御に移り住み、1992年に東御に初めてワイン用ブドウの樹を植えました。そのシャルドネと、私がこの東御に移り住んできた2000年に植えた古木のシャルドネだけを使ったヴィラデストを代表するワインです」と話す、まさに“東御ワインの原点”ともいえる1杯は、香り豊かでリッチなボリュームがあり、余韻がいつまでも続く素晴らしい白ワインでした。
そんなワインをテーブルをまわってサーブをしてくれるのは、なんと、ワインの造り手たち。直接お話をお聞きできる夢のようなひとときに、どのテーブルもまるでファンサービスさながらの光景と笑顔が溢れます。
地元の豊かな食材と造り手たちの想いをともに
メインディッシュは、地元のシェフたちから絶大な人気を集める東御市産のブランド牛・信州峯村牛のロースト。それに合わせたワインは、ドメーヌナカジマ「カベルネフラン2022」とAperture Farm and Winery「Ignore them 2022」
「東御に来て最初に植えたのがカベルネフラン。1番自信を持ってお出しできるのが、このカベルネフランです」とドメーヌナカジマの中島豊さん。
今回のディナーの実行委員でもあり、2022年にワイナリーを設立したAperture Farm and Wineryの田辺良さんは「メルロで作ったトップキュヴェをお出ししています。それまでは委託醸造でワインを造っていたのが、この年に自分のワイナリーができて、チャレンジをしながら自分の造りを通したワイン」と、各造り手が想いのこもった渾身の1本を用意していることに、東御の造り手たちのこのディナーにかける熱量が伝わってきました。
シェフから見た東御の食とワイン文化の広がり
料理だけでなく、チーズやパン、コーヒーも東御産と東御の食の豊かさを存分に堪能。五十嵐シェフからは「僕は生まれも育ちも東御で、合併前の東部町の頃から比べると本当に変わった。昔は国道沿いにドライブインがあるくらいで上田市と小諸市の間の通過都市だったんです(笑)。そんな町にこれほどのワインの造り手や名取シェフのような方が県外から来てくれて、東御の食文化が毎年、毎年、徐々に広がっているのを実感しています」とずっとこの地を見てきたからこそのお言葉。
対する名取シェフは「目指しているのは、どこでも食べられるんじゃなくて、ここに来て、この地元の食材を出して、それと合うワインを楽しめることができる店。そして、東御がわざわざ来ていただくような町になっていったら」と語ってくださりました。
東御を日本一のワイン産地に
そんな夢のような時間も終わりに近づき、「この東御の土地というのは、日本でも1番いいクオリティのワインが生産できる場所だと自分たちでも思っていますので、みんなで協力して、東御を日本一のワインの生産地にしていけるようこれからも頑張ります」と会を締めくくったのは、実行委員を務めたcave hatanoの波田野信孝さん。
造り手たちのひと言ひと言から、東御がワインの町となっていく様子を垣間見たような気持ちになりました。1軒もワイナリーがなかった町に20年で14軒のワイナリーができて、実力派の造り手が揃い、素晴らしいワインが今続々と生まれている。
そして、そんな東御のワインと食材を、食べ手に、未来に繋ぐこんなスペシャルなディナーが開催されて…いったい10年後、20年後の東御はどんなに素晴らしい世界になっているのだろうと期待せずにはいられない会でした。これからもますます東御から目が離せません。
TOMI WINE FESTA 2024
SPECIAL DINNER “tsunagu”
ーMENUー
[Dish1]
東御市 宮野さんと小林さんのアスパラガス3種 野沢菜の粒マスタードソース
[Wine]
ツイヂラボ「ぺてぃわん 2022」
NAKADA WINES「note 2022」
[Dish2]
飯田市座光寺の鮎のベニエ 肝のソースと山菜
[Wine]
Aperture Farm and Winery「Assemblage 2023」(東御ワインフェスタ2024オリジナルワイン)
Stardust Vineyard「Beyond the Milky way 2022」
[Dish3]
佐久市産 信州サーモンのタルタル仕立て 東御市 のららぼ農園のホウレン草と大根葉のムース
アトリエ・ド・フロマージュの生チーズとcave hatanoワインヴィネガー添え
[Wine]
Villa D’est Winery「ヴィニュロンズリザーブ シャルドネV.V. 2022」
Domaine murayama「Le Petit chaperon rouge 2022」
[Dish4]
東御市 太陽と大地の酒米ととや原ファームの信州黄金シャモのリゾット
[Wine]
cave hatano「Grand Chardonnay 2019」
はすみふぁーむ&ワイナリー「千曲川ワインバレーシリーズ ピノ・ノワール 2015」
[Dish5]
東御市 牧舎みねむら ランプ芯のロースト 赤ワインソース 地元野菜のローストを添えて
[Wine]
Domaine Nakajima「カベルネフラン2022」
Aperture Farm and Winery「Ignore them 2022」
[Cheese]
アトリエ・ド・フロマージュ 5種のチーズ(ブルーチーズ、ウォッシュ・オ・カルヴァドス、軽井沢チーズ、カマンベール、ココン)
[Wine]
Rue de Vin「Vin doux “Koco” 2022」
[Dessert]
東御市産胡桃のブランマンジェ 蕎麦茶のムース
[Bread]
ターブルヒュッテ バゲッド、パンとお菓子 クリシェ cliché フォカッチャ・カンパーニュ
[Drink]
&espressoのカフェ、御菓子処花岡 くるみの初恋・くるみキャラメル
【特集】飲んだら幸せ!OSAKE JIKAN
今日は誰となにを飲む? 気の合う仲間と盛り上がったり、料理との組み合わせに感動したり、旅先で現地のお酒を試してみたり・・・。編集部が楽しい“OSAKE JIKAN”を紹介します。
PHOTO/TAKASHI GOMI TEXT/CHIFUYU MATSUSHIMA(OZmall)