「サントリー登美の丘ワイナリー」で、100年以上の歴史と100年後の未来をつなぐワインづくりを体感

「サントリー登美の丘ワイナリー」で、100年以上の歴史と100年後の未来をつなぐワインづくりを体感

更新日:2023/10/06

甲府駅から車で約30分、標高400~600mに位置する「サントリー登美の丘ワイナリー」。ブドウ栽培に適した環境に恵まれたこの場所では、“良いワインはよいぶどうから”を合言葉に、100年以上前からブドウの栽培、醸造、瓶詰まで一貫したワインづくりを行っています。見晴らしの良い丘一面にさまざまなブドウが実る秋のワイナリーを、オズモール編集部が訪れてきました。

日本ワインを牽引する存在として、2022年にリニューアル

サントリー登美の丘ワイナリーは1909年の開園から2023年で114年目、常に進化を続けながらワインづくりに取り組んでいます。
まずはセミナールームで、サントリー株式会社ワインカンパニー ワイナリーワイン事業部の松本典之さんから、ワイナリーの歴史や日本ワイン市場の現状、ワインづくりやブドウ栽培における挑戦的な取り組みなどについてレクチャーを受けました。

2022年9月には「FROM FARM 水と、土と、人と」という新たなコンセプトの元、全面リニューアル。気候や風土、地域の人々など、ワインづくりを取り巻くすべての環境を“テロワール”としてとらえ、訪れる人が栽培家、醸造家たちの思いに触れ、体感できる施設に生まれ変わりました。

ブドウ栽培に最適な自然環境に恵まれたワイナリー

目の前には雄大な富士山、眼下には甲府盆地が広がる「登って美しい丘」の光景からその名が付いた登美の丘は、山梨県内でも雨量が少ない、日照時間が長い、昼夜の気温差が10度以上ある日が多いなど、ブドウ栽培にとって理想的な場所。ここでは100年以上前から、そんな登美の丘ならではの特徴を生かしたワインづくりが行われてきました。

広大な敷地の内、ブドウ畑が占める面積は約25ha。畑は微妙な日照時間や標高差、地形、土壌などさまざまな条件に合わせて50区画に分けられ、11品種のブドウがそれぞれに適した方法で栽培されています。

登美の丘の風土や、変化する気候条件に合わせた畑づくり

私たちが訪れた9月は収穫期真っ盛り。たわわに実ったブドウ畑を見学することができました。
ブドウ栽培に携わる人々はひたむきにブドウと向き合い、それぞれのブドウに合わせた畑づくりを行っています。例えば、「メルロ」や「マスカット・ベーリーA」に適しているのはヨーロッパで主流の「垣根仕立て」と呼ばれる方法。短い年数で収穫できる、ブドウの味わいが凝縮されるなどの特徴があるそうです。

畑の根元は草でいっぱい。これはあえて畑を耕さず、自然に生えている草花と共にブドウを育てる「草生栽培」を行っているのだとか。これによって、雨が降っても土が流れにくくなる、草花の根が土壌の栄養を集めてくれるなど、ブドウの木にとってさまざまなメリットがあるといいます。

また、温暖化によってワインが着色しづらい、ブドウの糖度が上がりにくいなどの影響を及ぼしていることから、4月頃に芽吹いた枝を切断し、その次に芽吹く脇芽を育てる「副梢(ふくしょう)栽培」にも取り組んでいます。これによってブドウの収穫時期を通常の9月から11月頃まで(約40日間)遅らせることが可能だそう。

繊細なブドウのきめ細やかな手入れはすべて人の目と手で

収穫前の畑では、余分な葉を取り除く作業が行われていました。葉を繁らせたままにしておくと、ブドウの房が絡んだり、風通しが悪くなったりしてしまうのだとか。一方で、葉には強い日差しから房を守る役割もあるため、陽が当たる方向に合わせて適度に残すことも必要です。
それと同時に、一つひとつブドウの房をチェックしながら未熟な果実を取り除き、収穫までになるべく均一に育つように手を入れていきます。

約25haの畑に植えられたブドウの木は約20万本で、枝の剪定から収穫まで、すべての工程が手作業。ブドウがストレスなく育つよう、手間と愛情を込めて栽培されているのです。

世界に誇るワインを生み出した、日本の固有ブドウ品種「甲州」

栽培するブドウの中でも、最も広い面積で栽培されている白ブドウ品種は、日本固有品種「甲州」。枝が伸びる勢い(樹勢)が強い甲州は、昔ながらの「棚仕立て」と呼ばれる方法が適しているそう。

柑橘のような爽やかな香りと上品な味わいを持つ甲州を使ったワインは、国内外で高く評価されています。2023年6月には、イギリスのワイン専門誌「デキャンター」が主催する世界最大級のワイン品評会「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード2023」において、サントリー登美の丘ワイナリーでつくられた「登美の丘 甲州 2021」が、日本から出品されたワインの中で最高位のプラチナ賞を受賞するなど、世界中で注目を浴びています。

ワインが眠る熟成庫で、ワインづくりの未来に思いを馳せる

風格がある石造りの建物は、「CELLER」と呼ばれるワインの熟成庫。こちらでは発酵したての若いワインをフレンチオーク材の樽に詰めて「樽熟庫」で熟成させます。樽の中で呼吸しながらゆっくり熟成したワインには樽の香りが付いて、深みのある味わいに変化していきます。
ワインによっては樽で熟成させた後、「瓶熟庫」で飲み頃を迎えるまでさらに熟成させます。ひんやりとした洞窟のような空間にボトルが並ぶ姿は圧巻。

瓶熟庫にはこれまでにつくられたすべてのワインが並んでいました。中には、1978年に日本で初めて成功したという「貴腐ワイン」のボトルも! これらは100年先を見据え、将来ワインづくりに携わる人々の参考資料として残しているのだそう。

希少な貴腐ワインや限定ワインもテイスティングできる!

見学後は、ショップに併設されている有料テイスティングカウンターへ。こちらでは希少な貴腐ワインや世界的な賞を受賞したワインなど、常時20種類前後のワインが試飲できます。専用カードにチャージをして試飲用ワインサーバーで、自由に試飲することも可能。
晴れた日にはショップの前に広がる「富士見テラス」で富士山やブドウ畑を眺めながらのテイスティングもおすすめ。つくり手の思いに触れた後で味わうワインは、いっそうおいしく感じられます。

お気に入りの1本を見つけたらショップで購入できるのも、ワイナリーならではの魅力。ショップには、ワイナリーと公式オンラインストアでしか購入できない「SUNTORY FROM FARM ワインのみらい」シリーズのほか、デキャンター・ワールド・ワイン・アワードや日本ワインコンクールなどで賞を受賞したワインも並んでいました。

日本ワインの魅力に触れることができる3種のワイナリーツアーを開催

■FROM FARM ワイナリーツアー
ブドウ畑や熟成庫を見学しながら、登美の丘ワイナリーのブドウやワインづくりのこだわりについてたっぷりと紹介。希少な「貴腐ワイン」を含む4種類のワインテイスティング付き。
開催日:金・土・日・祝日
所要時間:約100分
参加費:5000円

■ワイン熟成庫ツアー
歴代のワインたちが眠る熟成庫を見学しながら、ワインづくりについて学ぶツアー。歴史を感じる熟成庫の中で赤・白2種類のワインをテイスティングできる。
開催日:水を除く毎日
所要時間:約50分
参加費:2000円

■甲州ぶどう畑 散策ツアー
日本固有品種「甲州」のブドウ畑を散策しながら、ブドウづくりのこだわりを紹介。見学後は、畑の中でワインのテイスティングが楽しめる。
開催日:火・水を除く毎日
所要時間:約30分
参加費:1000円

サントリー登美の丘ワイナリー

SPOT DATA

スポット名
サントリー登美の丘ワイナリー
電話番号
TEL.0551-28-7311(9:30~16:30)
住所
山梨県甲斐市大垈2786
営業時間
10:00~17:00(最終入場16:30)
定休日
水・年末年始・その他臨時休業あり
交通アクセス
JR甲府駅よりタクシーで約30分
※金・土・日・祝日は甲府駅より無料シャトルバスが運行中
ホームページ
サントリー登美の丘ワイナリー

【特集】飲んだら幸せ!OSAKE JIKAN

【特集】飲んだら幸せ!OSAKE JIKAN

今日は誰となにを飲む? 気の合う仲間と盛り上がったり、料理との組み合わせに感動したり、旅先で現地のお酒を試してみたり・・・。編集部が楽しい“OSAKE JIKAN”を紹介します。

PHOTO/MANABU SANO WRITING/MINORI KASAI

※記事は2023年10月6日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります