銀座物語02
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老舗店や高級ブランドショップが建ち並ぶ銀座。一流たちが集まってくるこの街には、いつの世も人々を癒す老舗喫茶店がいっぱい。今回は、喫茶店に魅せられた東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんの銀座物語。
更新日:2017/03/18
“クラシカル”が心地いい銀座ウエストへ/東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さん
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静けさと品性が交差する銀座の喫茶店
高層ビルが建ち並ぶ外堀通りを歩くと見えてくる「銀座ウエスト 本店」。ここは、70年もの間、銀座の歴史を静かに見守ってきた喫茶室だ。そんなお店の古めかしい扉を開けると、真っ白な壁とテーブルクロス、美しく生けられた草花、背筋のピンと伸びたスタッフさんがお出迎え。その姿は、思い描いた“昭和レトロ”ともちょっと違う、まさに“洗練”という言葉がしっくりくる。
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「ホテルのラウンジのように落ち着いたこの空間。どこを探してもここにしかないんですよね」と笑顔を向けてくれたのは、1700軒以上もの喫茶店に足を運ぶ、東京喫茶店研究所二代目所長の難波里奈さん。喫茶店に魅せられて十数年、長年通う「銀座ウエスト 本店」への憧れと愛情は、銀座の名高い喫茶店の中でもいちだんと強い。
「にぎやかすぎるお客さんもいないし、みなさん思い思いの時間を静かに過ごしている。学生の頃は、そういう雰囲気に緊張しつつも背伸びして訪れていました。だけど大人になるにつれて、この静寂と品性こそがお店の秩序に関わっているとわかってきて。それがなんだか銀座っぽくて心地いい。それに気づいたとき、もっともっと好きになっていました」
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難波さんがいつもオーダーするのは、ケーキセット(1296円)。スタッフさんが運んできてくれる20種類ほどのケーキをひとつ選ぶスタイルだ。コーヒーはおかわり自由で、銀座の街にいることさえ忘れてのんびり過ごしてしまいたくなる。
「季節のフルーツを使ったショートケーキか、生クリームとカスタードクリームが半々に入ったハーフシューをだいたい選びます。味はもちろんおいしいんですけど、ルックスもかわいくてつい(笑)。あと、クリームソーダ―(1188円)も大好き。こちらのものは、グリーンじゃなくて透明なんですよ。最初に運ばれて来た時、クラシカルな店内の雰囲気にピッタリで“完璧!”と、思ったくらい感動でした。シロップで甘みを自分の好みに調整できるのもいいんですよね」
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コーヒーを飲みほすか、ほさないかという絶妙のタイミングで、「おかわりされますか?」とスタッフさんから声をかけられる。値段はそれなりだけど、銀座の街らしい細やかなサービスは健在だ。
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ハイカラで“いいもの”を残す街
開店扉が鎮座する銀座トリコロール本店や、コーヒー通がこぞって通うカフェ・ド・ランブルなど、昭和の面影を色濃く残す老舗喫茶店が点在するここ銀座。誰かをそっと連れてきたくなるお店がたくさんあるそう。
「私の勝手なイメージですけど、ほかの街に比べて落ち付いた雰囲気のお店が多いような気がしますね。内装だけでなく家具ひとつとっても、上品で洗練されているものが置いてあると思います。メニューもそうで、銀座がいちばんハイカラとされていた古き良き時代に、当時のトップレベルだったものが現在にも守られ続けているんじゃないかと。今見ても食べても素敵、おいしいって思うものが、銀座の喫茶店にはたくさんあります」
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品格ある街、そしてそこを歩く人にも見合うようにと、自身が元気なときに銀座に訪れるという難波さん。この街で喫茶店を楽しむコツは?
「銀座の1丁目から7丁目までには、たくさん喫茶店があるんです。だからお買い物の間に喫茶店でごはんを食べたり、お茶したり、お友達とおしゃべりしたり・・・、喫茶店のはしごがおすすめです。半日お買い物をしていたら3軒くらいは楽しめると思いますよ。名店が勢揃いしてますが、なかでも銀座ウエストさんは、ゆったりした雰囲気なので友達と来ても過ごしやすい。帰り際に焼菓子なども買えるので、自分へのご褒美や友達への手土産としても喜ばれますし、わたしにとっても特別な存在です」
銀座で見つけたとっておきの喫茶店。そういう場所が街にひとつでもあれば、銀座のさんぽがもっと身近で楽しいものになるはず。
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東京喫茶店研究所二代目所長 難波里奈さん
東京都出身。都内で働く会社員でありながら、終業後や休日に喫茶店に足を運ぶ生粋の喫茶店ラバー。喫茶店に魅せられ、これまでに訪れた軒数は、1700軒以上、延べ8000軒以上に及ぶ。著書に『純喫茶コレクション』(PARCO出版)、『純喫茶へ、1000軒』(アスペクト)、『純喫茶、あの味』(イースト・プレス)がある。2017年夏に新刊の出版も予定。
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SHOP DATA__銀座ウエスト 本店
1947(昭和22)年の創業以来、街内外の人に愛され続ける老舗店。ケーキセット1296円は、いちばん人気のシュークリームやショートケーキなど、常時20種類の中らからケーキを選べるほか、おかわり自由のコーヒーも付く。店内に流れるLPレコードのクラシックに耳を傾て、とことんのんびり過ごしたい。
TEL:03-3571-1554
住所:東京都中央区銀座7-3-6
営業時間:9:00~23:00 土・日・祝11:00~20:00
無休
アクセス: 東京メトロ銀座線ほか「銀座駅」C2出口より徒歩5分
PHOTO/NORIKO YONEYAMA WRITING/MAKI FUNABASHI 撮影協力/銀座ウエスト 本店