旬をおいしくいただくならば vol.005
【第1・第3火曜日21:00配信】
美しい四季に彩られたニッポン。“旬”がココロとカラダへ染み渡る。フードユニットつむぎやが、季節のお料理や食材をおいしくいただけるお店をご紹介。
更新日:2016/09/20
今回訪れたお店 ラ・ボラッチャ
街の風景として進化をし続けるトラットリア
近所においしくって賑わっているトラットリアがある。それだけで、ここはよい街だと思う。たまプラーザで小池兄弟がやっているイタリアンといえば、ラ・ボラッチャ。お兄さんでシェフの直樹さんと、弟のマネージャー兼ソムリエのチッチョさんがはじめたお店だ。
ラ・ボラッチャは、直樹さんがイタリアを訪ね歩く中で魅せられた、食の都エミリア・ロマーニャ州の郷土料理がメイン。豊富な手打ちパスタや金沢から直送される新鮮な魚介を使ったお料理を目当てに足繁く通うお客様も多い。
イタリアでは高級レストランである「リストランテ」に対して、大衆食堂が「トラットリア」。お二人は以前、恵比寿に店を構えていたが、より地元に近いたまプラーザに出店するにあたって、地元に根ざしたトラットリアをやりたかったのだそう。お店のインテリアや飾られている小物類も現地の息遣いが聞こえてきそうなものばかり。肩肘張らないカジュアルな雰囲気と、活気があって気分の高揚するカンジがたまらない。
取材というものはどうしてもお客様が入っていない時間帯にやらなければいけないものだけど、う〜ん、このお店に関しては、お客様がワイワイと賑わう、その姿を見ていただきたいというものだ。
この春ボラッチャは道路を挟んで反対側の敷地にピッツェリアをオープンさせた。直樹さんは日本のピッツァの草分け的存在のサルヴァトーレ・クオモ氏の元で、直接師事していたこともあり、ピッツァメニューに対するお客様からの要望も高かったという。
小皿料理スタイルのピッツェリアバールでそちらもたちまち人気店に。トラットリアの方でも夜の時間帯は、ピッツェリアで作ったピッツァもオーダーできるとのこと。今はピッツェリアを直樹さん、トラットリアはチッチョさんが切り盛りし、直樹さんの下で長年やっていた及川さんがシェフを務める。道路を挟んでの距離感もおもしろく、2店舗になって、たまプラーザ界隈での存在感は増すばかりだ。
さてそんなボラッチャのウリはなんといっても手打ちパスタ。定番と季節メニューあわせて常時12~13種類を揃える。
「うちの生パスタは兄のこだわりで、毎朝仕込んだ生地を、オーダーが入ってからすぐ伸ばして調理するので、プリプリもちもちの食感が楽しめます」
この日いただいたのはイタリア産のフレッシュポルチーニを使ったタリアテッレ。ポルチーニはかさの下の部分を焦げ付かせ気味によく加熱してあげることで豊かな香りを引き出す。ゆで汁を加えて乳化させてからも、パスタにうまみを移すために長めに加熱して仕上げた一品は、フレッシュポルチーニならではのジューシーなうまみが平打ちパスタにあわさって、秋のシアワセを感じずにいられない。
カルパッチョは、血合いのコクが強い、脂がのった秋のさんまを、ワイルドなセルパチコとフルーティーで甘みの強いトマトをあわせて調和させていた。いつもいただくたびに思うのだけど、どの料理も味付けのバランス感が素晴らしくって、ひと品ごとに感動がある。
そしてこの時期のドルチェといったらイタリア料理版のモンブラン「モンテビアンコ」。茨城産の和栗を丁寧に甘露煮し、アマレッティと呼ばれるリキュールを効かせたクッキー生地も手作り。和栗を贅沢にクリームで包み込みこんだその姿は、まさに秋のスペシャリテといったところ。リッチで大人の味わいでございました。
最後にチッチョさんに、冬にかけてのおすすめを伺った。
「もうちょっとで金沢の香箱蟹が解禁されるんです。その身や味噌などを殻に詰め込んで焼き上げる香箱蟹のグラタンは絶品。毎年楽しみにしてくれるファンの方も多いんですよ」
こ、こ、これは話を聞いているだけでよだれが・・・(失礼)。すぐさま再訪を誓ったのでありました。
トラットリア ラ・ボラッチャ
TEL:045-507-4601
神奈川県横浜市青葉区美しが丘1-10-9
営業時間: 11:30~14:00(LO) 17:30~22:00(LO)
定休日:木休
席数:24
アクセス:たまプラーザ駅徒歩3分
カード:可
予約:有
平均予算:夜4000円~7000円/昼1000円~2000円
喫煙種別:分煙(テラス席のみ喫煙)
つむぎや マツーラユタカ
つむぎや マツーラユタカ
物書き料理家。金子健一とともにフードユニット「つむぎや」として活動。雑誌、書籍、イベントなどで、和食ベースのオリジナル料理を提案。個人としてはライター業も。新刊「和食つまみ100」(主婦と生活社)が好評発売中。
WRITTING/YUTAKA MATSUURA PHOTO/KAZUHITO MIURA