夏に食べたくなるスタミナグルメのひとつ“カレー”。昨今はスパイスカレーのブームもあり、多彩なお店が増加中。そんななか、都内各地で進む再開発の波を受けて、名物カレーの老舗店が一度閉店も、続々と移転オープン。今回は、そんな復活した名店のカレーをご紹介。昭和から根強いファンに支えられ、守られてきたカレーをぜひチェックしてみて。
【1】栄屋ミルクホール「カレーライス」(750円)
どこか懐かしさを感じる定番欧風カレー
昭和20年に甘味や軽食を扱う店として始まった「栄屋ミルクホール」は、次第にラーメンやカレーなどの食事がメインの大衆食堂になり30年。町の再開発をきっかけに移転し、2022年2月に再スタートした。ファンは地元のサラリーマンが中心だが、最近ではグループはもちろん、おひとり様の女性客も増えているという。お目当ては東京ラーメンの代表格と称される、鶏ガラベースのラーメンと、その鶏がらスープを使用した旨味たっぷりのカレーで、特にこの2つのセットが人気。
今回紹介するカレーは、どこか懐かしい“家カレー”のような素朴な見た目。シャキッとした玉ネギと豚肉というシンプルな具材で、子どもでも食べられる甘口で仕上げている。
「両親が作っていた味を受け継いでいるだけで、こだわりらしいこだわりはないんですよ。隠し味は入れずに、スパイスも少なくしています」とは、店主の高橋栄治さん。シンプルながらも味わい深いカレーは、ひと口食べるとホッとする味わい。性別や世代を超えてファンが多いのもうなづける。
DATA
住所/東京都千代田区神田多町2-2-2
電話番号/非公開
営業時間/11:00~14:00(13:50L.O.)、15:00~17:00(16:50L.O.)
定休日/土・日・祝
アクセス/東京メトロ銀座線「神田」駅から徒歩2分、JR各線「神田」駅から徒歩3分
【2】モンスナック新宿 野村ビル店「カツカレー」(900円)
著名人からも愛されるスープのような元祖サラサラカレー
昭和39年、新宿東口にある紀伊國屋書店の地下に誕生した「モンスナック新宿」。店内にはびっしりと著名人の色紙が飾られているこちらは、ビルの耐震工事に伴い2021年7月に閉店。その半年後、オフィスビルが立ち並ぶ西新宿に移転オープンした。「モンスナック」といえば、“サラサラ”“しゃばしゃば”と称されるスープのようなカレーが特徴的。野菜の甘みや酸味と肉の旨味が溶け込んだルーは、ポーク、チキン、ビーフの3種類がベース。なかでも「カツカレー」は特に人気で、サクサクの薄衣にスパイシーなポークカレーが絡み絶品。大きめの豚バラも入っているから見た目はガッツリだけれど、あっさりとした味わいのため、ペロリといただける。
「創業当時からの年配のお客様にも召し上がっていただける、もたれない、元祖サラサラカレーです。辛さは控えめなので、辛さが苦手な方もぜひ」とは、祖母である先代から店を受け継いだ店主の矢吹雄一郎さん。
以前の店舗を意識し、レンガを壁に配した昭和レトロな店内は、どこか落ち着く雰囲気。テイクアウトもできるが、ぜひ店舗でその雰囲気も楽しんでほしい。
DATA
住所/東京都新宿区西新宿1-26-2新宿野村ビル
電話番号/03-3346-3380
営業時間/11:00〜21:30 (21:00L.O.)、土曜日・日曜日・祝日11:00~20:30(20:00L.O.)
定休日/なし
アクセス/JR「新宿駅」南口より徒歩9分
【3】インドカレーフジヤ「チキン(Bランチ)」(950円)
独学で生み出した唯一無二のインドカレー
下駄屋やパンなどの軽食を扱うお店などを経て、インドカレー店になった「インドカレー フジヤ」。街の再開発によって約20年営業を続けてきた日本橋室町で営業を終了。その4カ月後の2022年3月末に日本橋小舟町に移転オープンした。1996年の開店当初は、パキスタンの人が作っていたカレー取り寄せし、販売。その後、自身でカレーを作るように。「彼らの味に近づけるように2年ほど試行錯誤して、店の味が完成しました。周りからは、日本風インドカレーと言われることが多いけど、パキスタン人の作ったカレーの味を目指しています」と、店主の佐藤元規さん。
玉ネギやトマト、フルーツ、ヨーグルトを煮込んだルーは、スパイスの余韻とフルーティーさのバランスが良く、レッドチリのあと引く辛さが癖になる。このルーをベースにした、チキンやビーフ、キーマ、野菜などのカレーがラインナップ。ライスとサラダが付いた「Aランチ」(800円〜)と、ライスとナン、サラダ、ゆで卵、豆のスープが付いた「Bランチ」(950円〜)の2種類から選べるのも嬉しい。日本人が作り上げた、本場の味わいをご賞味あれ。
DATA
住所/東京都中央区日本橋小舟町7-13 東海日本橋ハイツ 1F
電話番号/03-6206-2020
営業時間/11:00~15:00、土11:00~14:00
定休日/日・祝
アクセス/東京メトロ「人形町駅」より徒歩約5分
WRITING/MARIA KAWASHIMA PHOTO/KAZUHITO MIURA