感動のミュージカル『にんじん』38年ぶりに再演!大竹しのぶさんインタビュー
この夏上演される注目のミュージカルといえば、大竹しのぶさんが主演する『にんじん』。実は同作、1979年にも大竹さんが主演し、音楽劇として初演された作品なのだ。歌にお芝居に、その抜群の表現力で観客の心に迫る大竹さんの舞台というだけでなく、38年の時を経て再び自身が主演を務めるというから、かなり興味深い! そこで、今回の再演のきっかけや作品についてなど、大竹さんにお話をうかがってきました。
Kaz.Sasaki
更新日:2017/07/06
『にんじん』とは、もとはフランスの作家、ジュール・ルナールの小説。フランスの片田舎の町で「まっ赤な髪で そばかすだらけ そうさぼくは みにくいにんじん!」と村人たちに歌われて仲間はずれにされ、両親からも“にんじん”と呼ばれる少年とその家族の物語。そんな“にんじん”を大竹しのぶさんが演じる。
もう一度トライしたいと思うほど忘れられない役、それが“にんじん”だった
――今回、38年ぶりに再演されることになったきっかけについて、お聞かせください。
私、今年還暦なんです。それで、お芝居の稽古場で「今までやってきた作品で、できることならもう一度トライしたい役はなあに?」という話があって。舞台をやっていると、もう一度やりたいっていう役が多いんですが、「『にんじん』は1回しかやっていないけど、すごく楽しかったです」と言ったことがきっかけでした。“にんじん”は忘れられない役だったし、今年だからこそできるっていうので、やらせていただくことになったんです。「アメリカの『ピーターパン』なんかは、キャシー・リグビーが60歳を過ぎてもやっているんだからできるわよ!」って言われて、「そうですか!?」ってその気になって(笑)。
――忘れられない役だという“にんじん”のどういうところが魅力ですか。
孤独で、愛されていないという悲しみとか、どうやって生きていったらいいんだろうってもがいている様子とか、そういうさまざまな感情が描写されているところです。そしてそれを、山本直純さんの美しい音楽にのせて叫び続けるというのが魅力です。上演時間は2時間ちょっとだったと思うんですが、その“にんじん”として生きる何時間かが楽しくて楽しくて。
前回の初演のときは、カーテンコールのときに5歳ぐらいの子どもがぱーっと駆けてきて、舞台に立ってる私に向かって「にんじん!」って。本当にそこに“にんじん”がいると錯覚して、「がんばれよ!」って言ってくれたのが忘れられなかったですね。そういうお子さんがいたことに本当に感動しました。あの、新鮮で清らかな感情を忘れないようにしようと思いました。
年齢を重ねたからこそ伝えられる大切なことを描きたい
――今回もその時の気持ちのまま挑まれるわけですね。
そうですね、「お母さん、なんでおばさんがいるの」って子どもに思われないように(笑)。でも、『ピーターパン』をキャシー・リグビーさんがやっているのを見ると、お若くはないけれどそのぶん不思議な深さというのがあったので、私もそこを描ければなと思っています。そこれを描けなければ意味がないと思うので。
演出家の栗山民也さんと話していたのは、作品の中で子どもが抱えている闇というのは現代にも通じるということでした。愛のない家庭にいなければいけない、そこで生きなければいけないという状況の中、子どもがそこにどうやって立ち向かっていくのかという。結局は自分で生きていく、心の“自立”ということになるんです。「お母さん、実はあなたを愛しているの」という甘い結末ではなく、みんな1人なんだ、それでも大人になっていく第一歩を踏み出すんだと。ファンタジーではないので、そういったことをお芝居として成立させていかなくちゃいけないと思っています。
――22歳のときと今では、気持ちになにか変化はありますか?
あんまり変わってないかもしれないですね。逆にあの頃の自分を思い出すことができるかもしれないですね。
――中山優馬さんがお兄さん役、秋元才加さんがお姉さん役ということについてはいかがでしょうか。
ふざけんな、って言われますよね(笑)。中山くんのファンの方なんかは、「どういうこと???」ってクエスチョンが100個ぐらいつきそうですよね。
――前回出演の舞台に引き続き、プライベートでも仲良しでいらっしゃるキムラ緑子さんとの共演については、いかがでしょうか。
2人とも(大竹さんとキムラさん)お芝居が好きだし、当たり前のことなのですが真面目に、きちんと芝居をしたいという思いを同じように持っているので、なんでも正直に言い合えますね。役者同士だと演技のことはなかなか言えないものだし、言ってはいけないことだと思うのですが、でも緑子ちゃんにはそういったことを気にせず話ができるのでラクですね。
観客の心に響く美しい音楽も見どころ
――山本直純さんの音楽についての魅力、歌が持っている力についてお聞かせください。
「真っ赤〜な髪で、そばか〜すだらけ」と劇中で何度か歌うのですが、耳に入ってきやすい、覚えやすい音楽なんです。私が覚えているのはもちろんなのですが、今回再演するというのを私の兄とか高校の同級生とかに言ったとき、みんなもその歌を覚えていてくれたんです。それだけ心に入ってきて印象づけられる、そして口ずさみやすい歌だったんだなって、あらためて思いました。
すごく悲しいときにきれいな音楽が流れてくるという、心と音楽が合っていて。音楽の力はやっぱりすごいなと思うんです。初演当時は気持ちだけで歌っていた部分もありますが、今回は音楽的なところももっと考えてやっていきたいですね。私はもう今回だけですが、また別の誰かが“にんじん”を演じて後につながっていくといいなと思っています。
――どんな人に見てもらいたいですか。
子どもが見てくれるといいなとは思いますね。それから大人のみなさんにも。家庭のことをあらためて見直してもらうきっかけになるといいですね。お父さんがいてお母さんがいて子どもがいて、お互い愛し合っているという。子どもが叫んでいるということを大人が気づくことができないことも多いだろうし、そのあたりが描けたらいいなと思っています。
――最後に、みなさんへのメッセージをお願いします。
心がシャキッとなるようなエネルギーをみなさんに渡したいなと思います。親子で来てくださるみなさんには、お子さんが大人になっても「あれ、楽しかったね」って言えるような、夏休みのいい思い出になるお芝居を作りたいと思っています。
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大人から子どもまで世代を問わず楽しめる作品だけに、ミュージカル好きはもちろん、初めての人も楽しめるはず。お芝居にも歌にも真摯に向き合う大竹しのぶさんの迫真の演技にもご注目を。物語の世界に引き込まれ、五感が刺激されること間違いなし。
■公演情報
ミュージカル「にんじん」
場所/新橋演舞場(東京都中央区銀座6-18-2)
期間/2017/8/1(火)~8/27(日)(昼の部:11:30~、夜の部:16:30~)
料金/1等席13000円、2等席8500円、3階A席5500円、3階B席3000円、桟敷席14000円 ※子ども料金あり(2階1等席ファミリーエリアで大人同伴の4歳~小学校6年生以下対象)=子ども6500円(大人13000円)
アクセス/都営大江戸線「築地市場駅」A3出口より徒歩3分、東京メトロ日比谷線・都営浅草線「東銀座駅」6出口より徒歩5分
<作品情報>
原案・原作/ジュール・ルナール
翻訳/大久保洋
劇作・脚本・作詞/山川啓介
演出/栗山民也
音楽/山本直純
出演/大竹しのぶ、中山優馬、秋元才加、中山義紘、真琴つばさ、今井清隆、宇梶剛士、キムラ緑子、ほか
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