東京の伝統工芸品の魅力を伝える「東京手仕事」プロジェクトが、江戸時代から続く「遠州流茶道」とのお茶会を主催。今回特別に、東京の“いいもの”や“おでかけ”情報を発信する「東京女子部」の体験レポーター2人が参加してきました。心洗われるお茶会の様子と、伝統文化を支える美しい工芸品をご紹介します。
“だれもが楽しめる茶道”をめざして生まれた、遠州流の世界へいざ
一歩足を踏み入れた瞬間から
心地よい緊張感が・・・
東京女子部の体験レポーター、カオリさん(@chaorys)とアカネさん(@_.akanen._)が今回訪れたのは、東京・神楽坂にある「遠州茶道宗家」。遠州流とは、江戸時代初期に小堀遠州から始まった武家茶道の流派。千利休が無駄なものを一切そぎ落とした「わび・さび」の美意識を追求したのに対し、幅広くお茶を楽しんでもらいたいという思いから、美しさや明るさ・豊かさを加えた「綺麗さび」と呼ばれる“調和の美”を持つのが特徴なのだそう。玄関先や庭が掃き清められ、打ち水がされたら、お茶会の準備ができた証。門をくぐり抜けた瞬間から凛とした雰囲気が漂い、2人は思わず背筋が伸びた様子。
「東京の真ん中に、こんな素敵な場所があったなんて!」(カオリさん)
「緊張もするけれど、すごくワクワクしますね」(アカネさん)
お茶会の前に
身を清めて、心を整えて
玄関に入った瞬間に包まれる白檀(びゃくだん)の香りにうっとり。ここからお茶会のおもてなしは始まっています。到着したらまずは手を清め、ブラシで服のホコリを掃って、白い足袋か靴下に履き替えを。こうした一つひとつの工程に、身と心を清め、お茶会に向けての気持ち作るという意味があるのだとか。
「お香の香りに癒されました。心が洗われるようです」(アカネさん)
「千鳥のブラシがとてもかわいらしいですね。自宅でも使ってみたいです」(カオリさん)
応接室では、時計やアクセサリー・スマートフォンなどを置いて身支度を整えます。家具や小物入れなどの調度品にも、歴史やおもてなしの心を感じられました。続いて「香煎(こうせん)」と呼ばれる飲み物で口の中を清め、お茶会の亭主・小堀宗翔さんとご挨拶。「今日の香煎は、りんごの花の塩漬けにお湯を注いだものです。りんごの花も召し上がれますよ」と優しく説明してくれる小堀さんの笑顔に、2人の緊張もほぐれたよう。
「いい香り~。ホッと和みますね」(カオリさん)
「お茶の器の浮世絵も風情がありますね」(アカネさん)
いよいよお茶会の始まり。茶室の随所に“おもてなし”の心遣いが
掛け軸や道具に込められた
メッセージに思いを馳せて
身も心も整えられたら、隣接するお茶室へ案内されます。まずは床の間に一礼をして、掛け軸と季節のお花を拝見。さらにお点前をする場所に移動し、釜や釜を加熱するための風炉(ふろ)・水指(みずさし)などの道具の拝見へ。小堀さんから「掛け軸やお花・お道具は、亭主がおもてなしの意味を込めて選んだものです。どんな意味が込められているのかな・・・と想像しながら眺めてみましょう」と教えてもらい、2人は道具や工芸品をじっくりと見入っていました。
「ほかの季節に開かれるお茶会にも参加してみたくなります」(アカネさん)
「季節のお花だけでなく、お道具にもススキや月がデザインされていたりと、さまざまなところに四季が表現されているんですね」(カオリさん)
季節感あふれる和菓子を
目と舌で味わう
お菓子を先にいただいてから、口の中にほんのり甘さを残した状態でお抹茶をいただくのが茶道のルール。席に着いたところで、美しいお皿に盛られた季節のお菓子が運ばれてきました。この日のお菓子は、紅葉の始まりを表現した「紅葉きんとん」。楊枝で4つに切り分けてからいただきます。「今回はハートがあしらわれた銅製のお皿を使いました。ハートは“猪目(いのめ)”とも呼ばれイノシシの目の形が由来と言われていますが、イノシシには魔除けや子孫繁栄など、色々な意味が込められているんですよ」と小堀さん。
「和菓子の世界にも興味があったので、本格的なお茶会でいただけるなんて嬉しいです」(カオリさん)
「秋らしい色鮮やかな和菓子に目を奪われました。上品な甘さでとてもおいしいですね」(アカネさん)
視覚、味覚、嗅覚・・・
五感を研ぎ澄ませ一服のお茶を堪能
お菓子を食べ終えたら、小堀さんが2人のために心を込めてお茶を点てます。「先にお茶をいただく方は“お先にいただきます”と一礼をしましょう。最後の方は“お相伴いたします”とお隣の方にご挨拶しましょう」と教えてくれた小堀さん。今回いただいたお抹茶は、さわやかな苦味の中に奥深さを感じられるものだったそう。お茶を飲み干した後は、手にしっとりと馴染んだお茶碗を拝見しました。
「茶道でお茶碗を回すのは、大切なお茶碗の正面を汚さないという意味があったんですね。お茶碗を割ってしまわないように、身をかがめて拝見するということもはじめて知りました」(アカネさん)
「おいしい・・・! お茶を点てる所作の指先までが美しくて、思わず見惚れてしまいました」(カオリさん)
日常から離れ、心を静めて過ごしたひとときを回想
お茶会を終える頃には
心身ともにリフレッシュ
お茶会を終えて、小堀さんに案内されながら露地(茶庭)を散策。都心とは思えない静寂の中、小鳥のさえずりに耳を傾けたり、風が運ぶ緑の香り感じ取ったりしました。「今回は手仕事の伝統工芸品を随所に取り合わせてみました。お茶のような伝統文化には、同じく古くから受け継がれてきた工芸品は欠かせません。床の間の掛け軸には“千里同風”と書かれていました。もともとは世の中が平和であるようにという意味ですが、“千里離れた先まで手仕事の温もりや職人さんたちの想いを届けてほしい”というメッセージもあります」と小堀さん。
「とても立派なお庭に感動しました。こんなにゆったりとした時間を過ごすのはひさしぶりです」(カオリさん)
「このふかふかのクッションも伝統工芸の技で作られているのですね。モダンで私のおうちにも飾れそうです」(アカネさん)
今回の体験を通して、改めて日本の文化のよさを再認識したという2人。最後に小堀さんと縁側に腰かけ、お茶にまつわるあれこれや、伝統工芸品の手仕事の魅力などを談笑しながら、お茶会の余韻を楽しんでいました。
周囲の環境が目まぐるしく変化している今年は、心が落ち着かなかったり、揺らぎやすかったりする人も多いよう。茶道など日本の文化に触れたり、お気に入りの手仕事の工芸品を生活の中に取り入れたりすると、毎日が楽しく豊かに感じられるもの。あなたもそんな、日本が育んだ文化や伝統に触れてみませんか。
「子どもの頃にお茶を習っていましたが、本格的なお茶会ははじめてでした。すべての所作に意味や物語があることに感動しましたし、もう一度、茶道をやってみたくなりました。スマートフォンやPCなど便利なものから離れる時間も必要ですね」(アカネさん)
「私も今回のようなお茶会ははじめて参加しました。お茶のいただき方だけでなく、一つひとつの道具の名前や使い方など、丁寧に説明してくださったので興味を持ちました。とても素敵な時間を過ごすことができました」(カオリさん)
遠州流茶道(えんしゅうりゅうさどう)
- 小堀宗翔(こぼりそうしょう)
- 遠州茶道宗家13世家元、小堀宗実氏の次女。元ラクロス日本代表選手。経験を活かして茶道とスポーツの融合をテーマに幅広く活動中。
「茶道の基本ルールは、相手への思いやり。季節を感じながら、五感をフルに使って楽しむ茶道は、心を豊かにしてくれます。難しく考えずに、お茶の世界に触れていただけたら嬉しいです」
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催事データ
- イベント名
- 東京手仕事展「あたらしい暮らし、うつくしい暮らし」
- 概要
- 西武渋谷店では2020年11月23日(月・祝)まで、東京の伝統工芸の魅力を再発見する催事『東京手仕事展「あたらしい暮らし、うつくしい暮らし」』を開催中。職人を招いての11月のワークショップでは、自分だけのオリジナルグラスや錫食器づくりが体験できる。人数に限りがあるので、予約はお早めに! このほか会場には、今回のお茶会で使われた美しい伝統工芸品など、日常で使ってみたい商品がずらり。
- 開催日
- 2020/09/11(金)~2020/11/23(月・祝)
- 会場
- 西武渋谷店
東京都渋谷区宇田川町21-1 西武渋谷店 B館 1F 特別催事場(無印良品への連絡通路)
- アクセス
- JR「渋谷駅」ハチ公改札より徒歩3分、東京メトロ銀座線「渋谷駅」ハチ公前交差点改札より徒歩3分、東急東横線・田園都市線ほか「渋谷駅」地下通路(渋谷ちかみち)出口A6-3より徒歩1分、京王井の頭線「渋谷駅」中央口改札より徒歩3分
- 入場料
- 無料
※年齢性別問わず、どなたでもご入場いただけます。ただし一部の有料イベントを除きます
OZmallがプロデュースする「東京女子部」とは?
東京女子部は、東京を遊びつくす女性たちが集うInstagram上のおでかけ発信コミュニティ。「@tokyo_joshibu」「#東京女子部」で投稿された写真を公式アカウントで紹介していくほか、体験レポーターとして登録された方を試食会やトラベルツアーなど「OZmall」「OZmagazine」のイベントに特別招待! 詳しくは、東京女子部の特設ページをチェックしてみて。
Event organizer/公益財団法人東京都中小企業振興公社 城東支社 「東京手仕事」プロジェクト 普及促進事務局
Cosponsorship/遠州流茶道
Experiencer/カオリさん(@chaorys)、アカネさん(@_.akanen._)(東京女子部 体験レポーター)
Photo/KYOUKA MUNEMURA
Writing/MINORI KASAI
Director/MEGUMI OGUGRA