古典落語はもちろん、新作落語でも観客を笑いの渦へと誘う昔昔亭A太郎。2020年5月にめでたく真打昇進を果たした彼の稽古の様子が、現在おうちでも動画で楽しめる。今回は、古典落語の中でも有名な「たらちね」「寿限無(じゅげむ)」「肥がめ」の3つをご紹介。キュートな笑顔で癒されるファンも多い昔昔亭A太郎の噺で、思わずくすっと笑えるほっこり時間を過ごして。
2020年5月に真打昇進。昔昔亭A太郎の魅力とは?
古典も新作も魅せる、昔昔亭A太郎(せきせきていえーたろう)
1978年6月8日生まれ、京都府京都市出身。お笑い番組を作りたいとテレビ番組制作会社に入社したものの、寄席で師匠・昔昔亭桃太郎の落語に出会い、会社を辞めて弟子入り。2006年2月に入門、2010年2月に二ツ目昇進、2020年5月に真打昇進を果たした。前座の頃は新作落語が中心であったが、二ツ目になり古典落語にも本格的に取り組むようになり、今では古典・新作の両方で魅了している。2015年12月、第1回渋谷らくご特別賞(奇妙な二ツ目賞)を受賞。タップダンスや日本舞踊にも挑戦するなど多才。
高身長と整った顔立ちで、一度見たら忘れられないイケメン落語家。寄席に訪れるファンの中には、思わず笑うのも忘れて見とれてしまう人もいるのだそう。頭にすっと入ってくる渋くて甘い声質と話術、ときにこぼれる笑顔、そして漂う色気で観客を一瞬で虜にする。親しみやすく飾らない人柄も魅力のひとつ。古典でも新作でも観客を笑いへと誘う、昔昔亭A太郎の噺をご堪能あれ。
気軽に落語を楽しもう!昔昔亭A太郎の落語稽古をおうちで鑑賞
稽古その1「たらちね」
「たらちね」は、「ざーくざくのばーりばり・・ちんちろりんのさーくさく」の軽快なフレーズで知られる江戸落語の演目のひとつ。しがない長屋暮らしの八五郎が、大家の紹介で由緒ある武家に生まれた器量よしの女性を嫁にもらう。ところが、彼女の言葉づかいがあまりにも丁寧なために、夫婦の会話にミスマッチが生じるという滑稽噺。
編集部Oの見どころポイント
【1】八五郎が嫁に名前を聞く場面
名前だけではなく、生まれまでを説明する嫁。あまりにも丁寧すぎて理解できない八五郎は、それがすべて長い名前だと思い込んでしまう。
【2】会話を諦めて紙に書いてもらう場面
達筆な字で名前を紙に書いてもらった八五郎だが、それを読むうちにだんだんとお経を唱えているかのように変化していく。
【3】音楽スタジオでの稽古
初めての稽古撮影ということで、少し緊張気味のA太郎さん。どうやら音楽スタジオを借りたようで、鏡越しにドラムが映っているのにほっこりしました。A太郎さんの声はよく通って聞きやすいので、落語デビューにもおすすめです。
稽古その2「寿限無(じゅげむ)」
早口言葉や言葉遊びとしても有名な、古典落語の演目のひとつ「寿限無(じゅげむ)」。基本的には前座噺とされ、若手が演じることが多いのだとか。住職に縁起のいい言葉をたくさん教えてもらったとある夫婦が、子供の幸せを願ってそれを全部つなげて1つの名前にしてしまう。子供が成長し学校に通い始めると、名前が長すぎて会話をするのにも一苦労。言葉のリズム感を楽しむことのできるおなじみの噺。
編集部Oの見どころポイント
【1】愛猫が登場?!
動画の最初に愛猫の鳴き声が聞こえてきます。まるでかまってほしいと言っているようで、とてもかわいらしいです。
【2】長すぎる名前
噺の中に何度も出てくる、寿限無から始まる長い名前。みなさんも噛まないで言えるか、ぜひ挑戦してみてください。
「寿限無(じゅげむ)、寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの、長久命の長助」
稽古その3「肥がめ」
「肥がめ」は、「家見舞い」とも呼ばれる古典落語の演目のひとつ。義理と人情に厚い江戸っ子の兄弟分2人が、兄貴分の新築祝いにわずかな持ち金五十銭で買えたのは、肥がめ。もらった兄貴分は喜んで、家で食事をしていけと誘うが・・・。女性には敬遠されがちな汚いオチが待っているけれど、くすっと笑えるシーンが数多くある演目。
編集部Oの見どころポイント
【1】兄弟分と店主のかけ合い場面
新築祝いにいろいろな商品を勧めてくる店主。しかし手持ちの五十銭では買えないものばかり。兄弟分たちの表情はみるみる曇る。
【2】愛嬌のある立ち回り
新築祝いに五十銭使いきったものの、兄貴分から銭湯代の一円を受け取ったり、銭湯に行ったと思ったら一瞬にして戻ってくるなどの、思わず突っ込みたくなるシーンが満載。
【3】少しお疲れ気味?!
真打昇進の披露パーティが中止になってしまい、同日3本目の撮影ということもあって、少し元気がないA太郎さん。いちばん最後には猫にも相手にされないと嘆いていて、つい応援したくなります。
【特集】笑いのツボ満載!気軽でたのしい、ハマル落語
若者の間で、空前の落語ブーム到来!と騒がれている近年。それならどんなものか聞いてみたいけど、なんとなく敷居が高そう・・・と思っている人も多いのでは? でも大丈夫、予備知識は不要です。頭を空っぽにしてぼーっと噺に耳を傾けていると、いつの間にかクスっと笑えたり、お腹がよじれるほど大笑いしたり、身を乗り出して夢中になっている自分に気付くはず。今まで経験したことのない新たな世界に、即ハマること間違いなし。
WRITING/MEGUMI OGURA