落語家・柳亭小痴楽  9月真打昇進に向けてインタビュー

落語のススメと真打昇進への意気込みをインタビュー!落語家・柳亭小痴楽

更新日:2019/06/05

今年9月に真打昇進を控えている落語家・柳亭小痴楽さんにインタビュー。今最も勢いのある若手落語家のひとりで、等身大の親しみやすいキャラクターでもあるため、若い世代から中心に絶大な注目を浴びている。今回は、まだ落語をあまり知らない方に向けて、楽しみ方を含めお話を聞いてみました。

舞台『翔べないスペースマンと危険なシナリオ~ギャグマゲドンmission~』

父・五代目 柳亭痴楽の存在と影響

――落語家になろうと思ったのは何歳くらいのときですか?そのきっかけがあれば教えてください。

15歳のとき。中学三年の終わり頃に、自分の部屋のデッキで「THE BLUE HEARTS」を聴こうと思って電源を押したら、三味線の音が流れてきて。「あ、親父の商売か。聴いてみよう」と思って聴いたのが八代目 春風亭 柳枝師匠の『花色木綿』(古典落語の演目のひとつ。別名『出来心』)でした。その一席で、もう「これやりたい!!」になりました。
でも、親父の恐さ、親に対する気恥ずかしさから一年間、言い出せなくて・・・。それから高校一年の二学期の終わりに留年が決まって、そんなことならばと親父に相談したのがはじまりです。

―― 落語を聴いたことがない若い世代に、落語を初めて聴く、またはおすすめの場所や方法があれば教えてください。

お金もかからず、いつでもだったらインターネット動画もいっぱいあるだろうけど、それよりも最初は生のライブ! なんでも良いから“生”に足を向けてほしいです。
やっぱり映像や音源ではわからない顔の動きや空気感、臨場感、その場の芸に触れてからじゃないと伝えきれない楽しさ、ハラハラさがあります。
ですので寄席でも良いです。寄席は安い入場料で色んな人が観られます。ただ全体の流れがあるので、少し難しく感じてしまうかも・・・。
いちばんのオススメは、落語を知っている人がいれば、知り合いの紹介。自分の好きな人の好きなものなら触れやすいでしょ! なにも予備知識がない状態で、色んな人の落語を聴いてみたいとなると、渋谷の「ユーロスペース」で毎月5日間やっている「渋谷らくご(シブラク)」という落語会がおすすめです。僕も出させてもらっています。こちらはどの日に行っても必ず「おもしろい!」と思える落語家が出ていると思いますよ。

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落語の聴き方のススメ いっぱい笑ってほしい

――落語を聴きに行くときは、会場ではどのように聴いてくれると嬉しいですか?

おもしろければ、いっぱい笑ってほしいです! おもしろくなくても笑っててほしいです(笑)。服装になにかとかはありません。お客さんへのお願いは、公演中にしゃべらない、携帯を鳴らさない、これだけですかね。


――古典落語を得意としている小痴楽さんですが、初心者にぜひ聞いてほしい落語の演目などを教えてください。

わかりやすいというのがなにかは、人それぞれ好みがあると思います。起承転結がわかりやすく、大きな筋書きがちゃんとあるのも良いですが、個人的に好きなのは『一目上がり』『道灌』『子ほめ』(注1)のような初歩的ですが、地味なのかなぁと思われる噺が好きです。落語の良いところは、なんでもないような日常の空間の切り取りなので、そういうなんでもない噺がお気に入りです。
ほかだと、『妾馬』(注2)という滑稽ですが良いストーリーの噺、『粗忽長屋』(注3)みたいな、まさか! と思える落語らしいシュールさ、こういったお噺もオススメです。

(注1)
『一目上がり』・・・別名「七福神」。無知な男の厚顔ぶりを笑う噺で、最後はとんとんと調子よくオチがつく「とんとん落ち」という形が特徴
『道灌(どうかん)』・・・歴史好きにもオススメの前座噺。八っつぁんと隠居の世間話から戦国初期の有名な風流武将、太田道灌の「山吹の里」のエピソードが語られる
『子ほめ』・・・代表的な前座噺のひとつ。お世辞を言ってゴチになろうとする八五郎の奮闘劇

(注2)『妾馬(めかうま)』・・・無教養な町人の八五郎と殿様との、とんちんかんなやりとりが笑いを誘う

(注3)『粗忽長屋(そこつながや)』・・・おっちょこちょい(粗忽者)が、なにかやろうとして失敗する「粗忽噺」のひとつ。とてもおかしなオチはもはや哲学

――小痴楽さんはその日の演目をどのように決めていらっしゃいますか

ネタ選びのセンスがないので、なんとも言いにくいのですが・・・。どうしても、自分が演りたいネタだったり、あとは自分なりに空気を考えて決めていますね。

――落語家の方は持ちネタをいくつくらい持っているのでしょうか?

こればかりは人によりけりです。考え方は人それぞれ。私は14年間の修行で90席程度です。正直これは、とても少ない方です。ただ、私個人としては、「とにかく色んな噺をたくさん」というタイプではないためあまり増やせていませんね。

舞台『翔べないスペースマンと危険なシナリオ~ギャグマゲドンmission~』

将来は今以上に落語を好きになっていたい

――今マイブームとして、ハマっていることを教えてください

特にマイブームとか流行ってるっていうのはないですが、昔から本が好きで読書ですかね。作家さんで、個人的にブームになっているのは、外国だと今さらですが、アガサ・クリスティさん。日本人作家さんですと、朝井リョウさんです。最近、友達に勧められて、人生初のエッセイとして向田邦子さんの本を読んでいます。

――2019年9月より真打にご昇進されますが、今の気持ちとこんな落語家になりたいという目標を教えてください。

正直プレッシャーもあります。でも、なんだかんだ楽しくバタバタな毎日なので気負いは少ない気が。楽観的なので(笑)。将来はわかりませんが、今以上に落語を好きになっていたいです。高座に上がっただけで、お客さんが「今日来たんだ!」って笑ってくれるような、親近感のある芸人になりたいですね。

9月真打に向けて忙しいスケジュールの中、落語家としてもこれからの意気込みと覚悟を持っている小痴楽さん。今はもっと落語の場数と、さらなる上達に磨きをかけていきたいという。まだ落語へ行ったことがない、興味があるけどどうしたらいいの? という方に、ぜひ一度小痴楽さんの落語から元気をもらって。

【OZプランでお得に予約!】<OZ独占販売>東寄席 季節の料理と日本酒を楽しむ落語会 柳亭小痴楽独演会

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7/8(月)新橋演舞場の地下食堂「東」で柳亭小痴楽独演会を開催。この日は、毎日飲めるほどすっきりとした味わいと辛口が病みつきになる、新潟の蔵元「麒麟山」とともに落語が楽しめる。お酒は、「伝統辛口」「KIRINZAN KAGAYAKI」や純米吟醸から季節限定品など、麒麟山の中から代表的な名酒が味わえ、この夏にふさわしい新しい日本酒の飲み方まで、提案してくれるそう。また、新橋料亭街で育まれた新橋演舞場地下にある「東」の料理は、テレビ番組で“日本一おいしい食事が楽しめる劇場”として紹介されたほど。料理と日本酒を楽しみ始めたころに落語会がスタート。リラックスムードの中で落語二席が聴ける。おいしいものを食べて飲んで、大いに笑って、元気をいっぱいチャージして。

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PROFILE

柳亭小痴楽(りゅうていこちらく)
五代目 柳亭痴楽を父にもつ、今最も勢いある若手落語家。今年9月に真打昇進を控えている。落語芸術協会の若手落語家講談師11人によるユニット「成金」を結成し、現在も活動中。2011年2月、「第22回 北とぴあ若手落語家競演会」奨励賞を受賞。ラジオや舞台など幅広い活躍に注目が集まる。
2019/08/08(木)銀座 博品館劇場にて公演予定!

「歌舞伎座ギャラリー」をご紹介

歌舞伎座タワー5階に位置する歌舞伎座ギャラリーでは、歌舞伎の舞台で使用する大道具・小道具などに実際に触れられる。馬や駕籠、舟などに乗ったり、舞台そのままの雰囲気が間近で体験できるスポット。もちろん写真撮影もOK。落語や歌舞伎俳優のトークショーなど、さまざまなイベントも開かれているので注目したい。歌舞伎観劇以外にも、食事や買い物ついでに訪れてみて。

営業時間10:00~17:30(最終入館17:00)
休刊日 不定休 ※HPなどでご確認ください
一般 600円
小・中学生 500円
小学生未満 無料

PHOTO/KAZUHITO MIURA

※記事は2019年6月5日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります