お仕事エンターテインメント映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』で、ヒロイン久瑠美を演じる波瑠さんとその上司・小塚を演じる西島秀俊さんにインタビュー。真っ直ぐに自分の思いを伝える波瑠さん。その話を微笑ましく聞きながら、ときにユーモアを交え、ときに真摯に答える西島さん。お2人の会話はまるで映画の中の久瑠美と小塚のよう!
仕事がうまくいかないときにする、波瑠&西島の同じ行動とは?
ヒロイン・久瑠美は社会に出たとたん「地方勤務」「遠距離恋愛」「やりたくない仕事」が重なり、すっかり心が折れてしまいます。お2人は、仕事で心が折れたときはどのように乗り越えてきましたか?
波瑠:心が折れたとき・・・私、「疲れた」とか「大変」では折れないんですよね
西島:そうですね。そういうことでは波瑠ちゃんは折れないですよね。
波瑠:でも、期待に応えられるかな、できるかな、そういう不安が体調にも一緒に出てしまうと折れますね。そのときは考えすぎず、目の前のことに集中します。新人の頃はお仕事もなかったしオーディションも落ちてばかりでしたが「次のオーディションがんばろう!」と思っていたし、それでも不安なときは映画を毎日観ていました。前向きなモチベーションを保てれば、いい方向に向かっていましたね。
西島:僕も仕事でうまくいかない時期は長かったので、映画館はよく行きました。映画館って不思議な空間で、1人だけど1人じゃないし、暗いから落ち着く。知らない人と一緒に笑ったり、共感したり。それがいいんですよね。
おふたりが「仕事が楽しい!」と思う、魔法のような瞬間はどんなときですか?
西島:僕の場合は、撮影中に明らかに現場の空気が変わった瞬間。監督のカットがかかってもしばらく誰も口を聞けないくらい全員で集中しているとき。それは本当に楽しいし、感動がありますね。
波瑠:私はずっとこのお仕事を「楽しむ余裕なんてないな」と思っていたので、「楽しむ」ことは優先してなかった気がします。でも今回、明るく前向きになれるこの作品出られたことで観た方に「元気が出ました」と言ってもらえてやっと腑に落ちたんですね。単純ですけど、誰かが喜んでくれることでお仕事って楽しめるんだなと。
波瑠をイメージして書かれたヒロイン
「最初のころの久瑠美はなんて生意気なのだろう!って思いました」
原作小説を書かれた小森陽一さんは波瑠さんをイメージして、名前にも波瑠の漢字を盛り込んだヒロイン・波平久瑠美を作り出しました。
波瑠:こんなことは初めてで。うれしいですし、光栄です。でも台本を読んだとき、最初のころの久瑠美がなんて生意気なんだろう! 私ってこんな感じに見えるのか、って思いました(笑)
西島:昔、波瑠ちゃんが生意気な役をやっていたのを観たのかな?
波瑠:確かに素直なヒロインの隣にいる「派手な友達」の役は多かったかも(笑)
実際の波瑠さんと久瑠美は似ていますか?
波瑠:私は久瑠美みたいな自信がないです。「自分にならできるのに!」という気持ちがあまりないですし、久瑠美のそういうしっかりした部分は見習いたいです。その一方で久瑠美は彼氏と一緒にいたいと同じ会社に就職するんです。就職試験は受けたことないですけど、例えば「友達が行くからその学校を選ぶ」ことも私ならしないし、 そこも久瑠美とは違いますね。
笑顔の魔法にかかっていたのは実は西島秀俊?
「小塚をぶっきらぼうで失礼に演じたつもりが笑ってた」
これまでにさまざまな役を演じて来ている西島さんがこんなに笑っている作品は新鮮です。
西島:笑う役もこれまで結構ありましたよ。「とと姉ちゃん」(ヒロインの父親役)とか。
波瑠:・・・すぐ死んじゃいましたけどね。
西島:1週間(5話目)でね(笑)
まだ、ほかにもありますよ。「あすなろ白書」(財閥の御曹司役)も悩んではいたけど笑顔の役でした。青春を楽しんで途中で死ぬ役でしたけど。そう考えると、小塚みたいな役は珍しいかもしれません。でも今回は、笑顔で小塚を演じる気はなくて、ぶっきらぼうで失礼な小塚を演じたんですけど、出来上がりを見たらめちゃめちゃ笑ってたんです。(波瑠さんに)あれは、監督が笑顔のカットだけ選んだんじゃないですかね。
波瑠:いや笑っていましたよ。「西島さんて、よく笑う方なのだな」と思いました。
西島:そうですか。
波瑠:思い返すと、台本には確かに小塚の笑顔を強調した描写はないんです。でも、西島さんが演じる「笑顔の小塚」に説得力があったのですよね。
西島:現場が楽しかったんでしょうね。岡山天音くんとか深見元基くんとか、共演の俳優さんたちがおもしろい人ばかりでしたしね。
がんばった自分を笑顔にする魔法スイーツは?波瑠「和菓子派なので」西島「秋ですから」
波瑠:(少し考えて)羊羹ですね。
西島:いいと思います。落ち着きますね。
西島:僕は、秋は「モンブラン」です。
波瑠: モンブランもいろいろありますよね。栗がゴロンとあってほしいですか? なくてもいい人ですか?
西島:分ける必要はないです。全部「モンブラン」だし、いろんなモンブランがあっていいんですよ。
波瑠:(笑)
最後に。お互いを遊園地のアトラクションに例えると?
波瑠:西島さんは「観覧車」ですね。そこに絶対あってほしいシンボル。映画『オズランド』に映ってる観覧車もそうですが、見守られている気がします。どっしりそこにいてくれているのが現場の西島さんと重なるかなと。
西島:(笑顔)うれしい。ありがとうございます。
波瑠ちゃんは・・・水がザバーンッてなる「スプラッシュ系」の乗り物かな。
波瑠:!?
西島:波瑠ちゃんと撮影していても、一緒に取材受けていても飽きないし、常に新鮮。スプラッシュ系のアトラクションで、毎回驚くってわかっているのに「おお!」ってなるじゃないですか。波瑠ちゃんからは毎回意外な面が出てくるし、とんでもないところから球が飛んで・・・(波瑠さんの顔色を伺いながら)俺、他の取材では褒めてもいるからね。いや、これも褒めてるんだけど。
波瑠:私のこと、よく見てらっしゃいますね(笑顔)。
PROFILE
- 波瑠(はる)
- 1991年東京生まれ。2006年ドラマ「対岸の彼女」(WOWOW)でデビュー。2012年まで「Seventeen」の専属モデルを務めた。2015年、NHK連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインを演じお茶の間の顔に。出演映画に『恋空』(07)、『マリア様が見てる』(10)『コーヒーが冷めないうちに』ほか。
- 西島秀俊(にしじま・ひでとし)
- 1971年東京生まれ。1994年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。ドラマ、映画、CMで活躍。ドラマ「ダブルフェイス」(12/TBS&WOWOW)、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16)、映画『劇場版MOZU』(15)など。今年出演の映画は今作のほか『散り椿』『人魚の眠る家』。来年は『空母いぶき』の公開が控える。
映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』
【あらすじ】
東京生まれ東京育ちの波平久瑠美は、こよなく都会を愛し、彼氏のトシ君を愛し、自分の今の生活に満足していた。就職先も「トシ君といつも一緒にいたいから」という理由だけで同じ超一流ホテルチェーンに。ところが、配属先は系列会社が経営する熊本県のローカル遊園地「グリーンランド」! 都会を離れ、彼氏とも遠距離になり、職場の制服はダサい上に希望した企画の仕事はさせてもらえず、園内のゴミ拾いばかり。泣きべそをかきながらトシ君に電話しても相手にしてくれない。久瑠美にとって最悪の社会人生活が始まった・・・。
- 監督
- 波多野貴文
- 脚本
- 吉田恵里香
- 原作
- 小森陽一「オズの世界」(集英社文庫刊)
- 出演
- 波瑠、西島秀俊、岡山天音、深水元基、戸田昌宏、朝倉えりか、久保酎吉、コング桑田、中村倫也、濱田マリ、橋本愛、柄本明
- 配給
- HIGH BROW CINEMA、ファントムフィルム
- 上映時間
- 1時間45分
- 公開
- 10月26日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
- ホームページ
- 映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』公式HP
©小森陽一/集英社©2018 映画「オズランド」製作委員会
WRITING/YUKO YASUDA