【観劇がある1日】VOL3.ブロガー中島吹雪さん、オペラの魅力を教えて!
日常を忘れ、別世界に連れて行ってくれる観劇。会社帰りの気分転換、お友達との特別なおでかけ、母と娘の時間、記念日のデート・・・など、大切な時間をよりすてきに彩ってくれるはず。【観劇がある1日】では、観劇が大好きなオズモール読者をインタビューして、観劇の楽しみ方をお伝えします!
YUKI HORIE
更新日:2017/10/31
VOL3は、オペラが大好きなブロガー中島吹雪さんをインタビュー
中島吹雪さんのプロフィール
◆名前:中島吹雪(Opera Club Arioso)
◆ブログ名:「♪オペラの館へようこそ!」
◆職業:オペラ研究家
◆性別:女性
◆観劇頻度:月に1~2回
◆観劇のきっかけになった出来事:小学生のとき、ラジオでヴェルディの『運命の力』を聞いたこと
◆好きな演目BEST3:『仮面舞踏会』、『ドン・カルロス』、『アドリアーナ・ルクヴルール』
小学生のときに聞いたラジオがきっかけで、すっかりオペラの虜に。
オペラに魅了されたきっかけはなんですか?
小さい頃からクラシック音楽、特に声楽が好きだったこともあるのですが、小学生のときに病気のため寝ていたらNHKラジオでヴェルディの『運命の力』というオペラが放送されていたんです。それを、熱にうなされながら布団の中で聞いていました。イタリア語で意味も分からないけれど、3時間くらいのオペラを小学生が聞き通したんですよ?(笑) それだけ人を惹き付ける強烈なものがあったんだろうなと思います。ヴェルディの音楽は登場人物の感情表現がとても上手で、悲劇的であったり後悔に満ちていたり・・・そういう音楽表現が子供ながらにすごいな、と思ったんでしょうね。
それから初めて映像で観たのは、1959年にイタリア歌劇団が来日したときのテレビ放送です。音だけで聞くのとはまた違う感動がありました。そのあとは必死にテレビを追っかけたり、ラジオ放送をカセットテープへ録音したり(笑)。夜中にテレビを独占して『セビリアの理髪師』や『カルメン』、『アイーダ』などを一生懸命チェックしていました。ラジオは外国語で分からないけど、テレビなら日本語訳の字幕付きで理解できるので、特に『アイーダ』は最後の場面で涙を流しながら観てましたね。当時、周りにオペラが好きな子はいなくて。だから中学生のとき、オペラの話がしたくて音楽の先生のもとを訪ねたんですけど、先生も詳しくないから話に乗ってくれませんでした(笑)。
ご自分でも歌の経験があるのでしょうか。
子供ながらに素敵なアリア(=オペラの独唱曲)だなと思うと自分でも歌いたくなって、本屋さんへ楽譜を探しに行きました。イタリア語やドイツ語は読めないからカタカナで聞き取りながら歌って・・・でも最終的には日本語で歌うことで満足していましたけど(笑)。その後、小学生からピアノを習っていた延長で音楽の道へ進学しましたが、私は声楽科ではなく作曲科でした。だから、大学時代と卒業してしばらくの間は声楽の先生のもとで、あくまでも趣味として歌うことを楽しんでいました。
敷居が高いと思われがちなオペラですが、もっと身近に感じてくれたら嬉しいです。
あらためて、オペラとはどういうものでしょう。
基本的には全曲歌で構成されているのがオペラです。そこにセリフを加えたオペレッタができて、さらにダンスも取り入れているのがミュージカルと言っていいでしょうか。オペラでは原則としてマイクを使いません。一昔前まではオペラ=直立不動で歌うイメージでしたが、今は寝転んだり走ったりと動きをつけながら歌うこともあるんですよ。
外国語の上演が多くて難しいイメージですが・・・。
現在は、舞台の左右に日本語字幕が出ます。歌とセリフの言語が違う場合もあって、例えば日本で上演されるものならアリアはイタリア語、セリフは日本語になっている場合もあります。作曲者はその国の言葉のイントネーションに合わせて音の高低や長短を考えているので、他の言語にするとせっかくの旋律やリズムが壊れてしまうんですね。もちろん日本語で歌われることもありますが、本来は原語で聞くのが好ましいと思います。
敷居が高いと感じてしまうのはなぜでしょうか?
その理由のひとつに、まずはチケット代の高さがありますよね。海外の歌劇団による来日公演は、200~300人ものキャスト・スタッフたちの日本での滞在費や、舞台セットの運搬費などの関係で、チケットが非常に高額になってしまいます。でも、日本の歌劇団による公演ならもっと低価格で楽しめますよ。もうひとつは、まだ字幕上演がない時代に言葉の壁があったから、日本ではなかなか受け入れられなかったこと。そこからオペラ=敷居が高いという概念ができてしまったのではないでしょうか。日本ではあまり親しみがないけれど、イタリアへ行くとタクシーの運転手さんがオペラアリアを歌っていたり、酒場で乾杯のときに歌われたり、彼らにとっては日常の中にあるものなんです。
声は唯一生きている楽器。生だからこそ、最高の瞬間に出会えることが楽しみ!
印象に残っている公演ベスト3は?
ひとつめは、1967年イタリア歌劇団が来日したときにカルロ・ベルゴンツィというテノール歌手が、ヴェルディの『仮面舞踏会』を歌ったとき。私がイタリアオペラを生で観た最初の作品だと思うのですが、やっぱり本物はすごい!と思いました。発声が自然で柔軟で、美しい声に限りなく惹かれました。
ふたつめは、1967年世界的ワーグナー歌手であるビルギット・ニルソンというソプラノ歌手のリサイタルでのこと。私は壁に近い席だったのですが、ワーグナーの『タンホイザー』というオペラより「歌の殿堂」を歌ったとき、最初の発声の母音で壁が振動しているのが分かったんです。ホール中が共鳴して、ゾクゾクッとして体内の温度が上がっていくほど感動しました。「素敵だな」とか「いい声だったな」という瞬間はたくさんありますが、そこまでの体験は滅多にないので印象に残っています。
3つめは、1976年イタリア歌劇団来日公演、チレアの『アドリアーナ・ルクヴルール』。私が観ていた公演で、主役のソプラノ歌手がアリアを歌い終わった途端、舞台セットの裏へ隠れてしゃがみ込んでしまって。なんだろう?と思っていたら幕が閉まり、体調不良のため歌えなくなったというアナウンスが流れて代役の歌手が登場しました。声楽とはスリリングなもので、こうした事故が起こりやすいんです。そういった意味でもインパクトがありました。
あらためてオペラの魅力を教えてください。
ドラマティックなおもしろさがあると思います。例えばバッハの『カンタータ』のような曲は、それほど華々しい盛り上がりはないけれど、オペラアリアになると感情の露出がすごいんです。あとは何より、声を聴いていることが心地いい。他の楽器は機械だけど、声って唯一生きているものですよね。弦楽器なんかも湿度や環境によって音が変わりますが、声はもっと敏感で、空調が効きすぎていたり飛行機の気圧に影響されたりで体調をくずしちゃう歌手がいるくらい。生身の人間が全身全霊でベストを尽くすけれど、どうしても上手くいかないときもあって、だからこそ最高の瞬間に巡り合えるのが楽しみなんです。もちろん他の楽器も素晴らしいですが、私はオペラだからというよりも声そのものに興味があるんだと思います。
初心者でもオペラを楽しむコツはありますか?
特にオペラは、ギリシャ神話やキリスト教、ヨーロッパの歴史などを知らないと分かりにくい部分があるので、ある程度の予習をしてから観た方が楽しめると思います。例えば歌舞伎なら、日本人として歴史や文化の知識があるからこそ楽しめる部分がありますよね。あとはオペラで例を挙げるなら・・・『椿姫』は翻訳した日本人が付けたタイトルで、原題は『ラ・トラヴィアータ』というのですが、これは“道を踏み外した女”を意味します。だいぶ印象が違うでしょ?(笑) 一見きれいなお姫さまのお話かな?と思うけど、実際は高級娼婦の物語なんですね。主人公が作中、一カ月のうち5日間だけ赤い椿、それ以外は白い椿を身につけることで女性の体の変化を表し、お客様へ「今日は営業日ではありません」と情報提供していることが日本語タイトルの由来です。そういう情報を事前に知っておくだけでも違った角度から楽しめますよね。ぜひ自分の知識を増やす喜びを含めて、オペラを楽しんでいただきたいです。
普段、公演情報やチケットはどのように入手していますか?
劇場に置かれているチラシや音楽事務所のサイト、あとは一度オフィシャルを通してチケットを購入すると次回よりお知らせが来るので、そういうところからチェックしています。チケットは数カ月前から販売されますが、販売元によっては公演直前に、通常価格よりもお得な「エコノミー券」が発売されることもあるんですよ。
それでは最後に、オズモールのユーザーへメッセージをお願いします!
自分が知らない世界へ一歩足を踏み入れることで、可能性が無限に広がると思います。その方法は必ずしもオペラでなくてもいいけれど、もしもオペラの場合ならヨーロッパの歴史や文学にも興味を持つなど、あれも知りたい!これも知りたい!と興味が普遍的に広がっていきます。その足がかりとして、ぜひ一度オペラをご覧になってみてはいかがでしょうか。新しい世界を知るひとつの手段として楽しめますよ!
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「名作オペラ 観くらべ・聴きくらべ」Part.7
2017年11月12日(日)13:30~16:30 鎌倉芸術館
◆20世紀のオペラ
ドゥビュッシー『ペレアスとメリザンド』、ベルク『ヴォツェック』『ルル』
「名作オペラ 観くらべ・聴きくらべ」Part.5 in横須賀
2017年11月26日(日)13:30~16:30 横須賀まなびかん
◆ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』
講師:中島吹雪
料金:各1500円
お問い合わせ先:arioso@operaclub.jp
オペラのことを分かりやすく丁寧に教えてくださった中島吹雪さん。声の魅力や楽しみ方など、とても興味深いお話を聞かせていただきありがとうございました!
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