信州の食文化に触れる旅
Vol.1 信州山ごはん編
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3000m級の山々が連なり、澄んだ空気と清らかな水に恵まれた信州。豊かな自然にはぐくまれたみずみずしい野菜や果物、保存の知恵から生まれた発酵食・・・。日本一の長寿県といわれる、信州の食文化の魅力を探ってみました。
更新日:2017/06/27
信州の風土から生まれた豊かな食文化
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南北に長い地形を持つ長野県。県北部で採れる米やキノコから、中部の高原野菜、南部の柚子、日本茶まで、日本で生産される農産物の多くが手に入るといわれる食の宝庫だ。なぜそんなに信州の食は豊かなのか、郷土料理研究家の横山タカ子さんにうかがった。「ひとつは、日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きい気候にあります。例えばナスやキュウリといった春植えの夏野菜は、遅霜に耐えるため、根を張る力が強くなります。そうしてより多くの養分を吸収することで、栄養価が高くなり、味が濃くなるのです。もうひとつは水。長野は四方を3000m級の山々に囲まれていて、清らかな水に恵まれています。野菜だって果物だって、水を吸わない作物はありませんよね。農作物だけでなく、郷土食である手打ちそばも水が必要だし、日本酒も大量の仕込み水を使う。水がいいから、おいしいものが揃っているんです」.
そんな信州の風土が生み出した食文化の中でも、古くから地域に根付き、今も受け継がれているのが「信州伝統野菜」。県で認定されているのは、なんと75品種も。道の駅やJA のショップなどに立ち寄って、ぜひ味わってみたい。
信州の食のキーワード
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山の農産物
山菜・野菜・果物など
「シナノゴールド」「秋映」といったリンゴをはじめ、辛みのある「ねずみ大根」といった伝統野菜など、長野県オリジナル品種も誕生している。タラの芽、コシアブラなど、春は多彩な山菜の宝庫。高原野菜やキノコは全国シェア上位。
起伏に富んだ地形に長い日照時間、昼夜の寒暖の差、豊かな自然環境に加えて、先人たちが積み重ねた知恵と工夫が、長寿県・信州の食文化を支えている。
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発酵食品
味噌・漬物・酒など
信州では古来から味噌作りが盛ん。「信州味噌」は米麹と大豆、塩を原料とする米味噌で、全国シェア1位を誇る。野沢菜に代表される漬物も多種多彩で、食事だけでなく毎日のお茶うけにも欠かせないもの。信州は発酵食王国なのだ。
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水
北アルプス、中央アルプスをはじめとする山々に四方を囲まれ、雪解け水が豊富であること、8つの一級水系の源流域であることから、多くの水資源に恵まれている信州。ミネラル分を多く含んだ名水も多い。
オリジナリティあふれる信州の食べもの
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そば
冷涼な山間地でも良質なそばの実が採れたことから、古くから信州で食べられてきた郷土食。ビタミンB1やルチンを含む健康食でもある。
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わさび
北アルプス山麓の雪解け水が伏流水となって湧き出る安曇野が名産地。夏でも16℃以下と冷たく清涼な湧き水が、風味のよいわさびを育てる。
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野沢菜漬け
約250年前、野沢温泉村の住職が京都から持ち帰った種が始まりといわれる野沢菜。浅漬けから本漬け、あめ色になった古漬けまで楽しめる。
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はちみつ
はちみつの女王と呼ばれる。アカシヤをはじめ、リンゴ、そば、栗とさまざまな花が咲く信州では、花ごとに異なる風味のはちみつが味わえる。
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おやき
小麦粉の生地で、旬の野菜やキノコなどの具材を丸く包んだ素朴な郷土食。蒸かし、灰焼き、揚げ焼きなど、地域によって調理法もさまざま。
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信州サーモン
育てやすく肉質がよいニジマスと、病気に強いブラウントラウトの掛け合わせで誕生した魚。紅色の肉が美しく、刺身や燻製に最適。
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日本酒・ワイン・シードル
信州は酒米の産地で、蔵元数は全国2位を誇る。寒暖の差と長い日照時間により、ワイン用ブドウの栽培も盛ん。シードルの醸造元も増加中。
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この夏は、世界級リゾート・山の信州へ
日本を代表する山々が連なる3つのアルプスを有する長野は、世界に誇る山岳高原リゾート。9月末まで「信州デスティネーションキャンペーン」を実施中で、県内全域の施設などで、さまざまなイベントやお得なプランが設定される。この夏は、満天の星を見たり、登山やカヌーなどをしたり、大自然に癒されながら、風土が生んだおいしいものを味わう信州旅へ。
※写真は開田高原(木曽町)
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「信州山ごはん&地酒」
を堪能できるお店へ
山国ゆえに、そこにあるもの、そこにしかないものを、大切に、そして多彩に工夫して食べている信州の人たち。「信州山ごはん」を食べられるお店で、そのおいしさを味わうだけではなく、“食”の背景にある自然や文化を感じてみませんか。(写真は「蓼科高原 オーベルジュ シャレーグリンデル」)
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おいしい日本旅
信州の食文化に触れる旅 Vol.2 松本さんぽ編
広い長野県の中でも歴史文化を感じる城下町・松本。蔵造りの建物が残る情緒ある町並みを歩き、信州の食文化に触れることができる。松本界隈の信州山ごはんが味わえるお店や温泉宿を紹介。
PHOTO/AYUMI OOSAKI WRITING/MARIKO TSUKADA