夏のいちはらへ!小湊鐵道に乗ってアートの世界へ出発
緑の田園を走り抜けるクリーム×朱色の車両、森に囲まれたレトロな駅舎・・・。まるで絵本の世界のような風景が広がる小湊鐵道沿線。このエリアで開催予定の「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+」を目指して、のどかなアートさんぽに出かけてみませんか? 訪れる前にぜひ読んでもらいたい地域のストーリーと、見どころのアート作品をご紹介します。
更新日:2021/07/13
房総里山芸術祭
いちはらアート×ミックス2020+
小湊鐵道が走る千葉県市原市の里山を舞台とする芸術祭。総合ディレクターは新潟県「大地の芸術祭」も手がける北川フラムさん。2014年、17年に続く今回は国内外約70組の作家の作品を小湊鐵道駅舎や周辺エリアで展示する。開催期間やイベントなどは随時発表されるので、詳しい開催情報は公式ウェブサイトで確認を。
TEL.0436-50-1160
会場/小湊鐵道を軸とした周辺エリア(五井、牛久、高滝、平三、里見、月崎・田淵、月出、白鳥、養老渓谷)
チケット/作品鑑賞パスポート3000円(前売り2500円)
舞台となる小湊鐵道は地域のストーリーが満載
BACK STORY 01
3回目を迎えるいちはらアート×ミックス。
時とともにはぐくまれた関係性のこと
地域に長く存在し、人々とかかわり続けるアートだからこそなし得るものがある。そんなアートの力を感じるのが木村崇人《森ラジオ ステーション×森遊会》だ。
テーマは“森と人をつなぐ場所”。鐵道保線員詰所だった小屋に山野草を植え、森の音を伝えるラジオや風見鶏、光の柱を設置した作品で、いちはらアート×ミックス初回の2014年に制作された。
会期終了後も維持管理しようと、地域の有志が保存会を立ち上げ、今も大切に守られている。「保存会の名前は『森遊会』。名付け親は木村さんです。毎月の定例会では彼やサポーターを交えて草刈りなどメンテナンスを実施。談笑もしながら楽しくね」と会長の田村孝之さん。緑の苔や野草が覆うこの場所に癒しを感じるのは、彼らの愛情まで伝わるからかもしれない。
木村さんは「森遊会」の活動も作品の一部と考え、2017年から作品名にその名を加えている。また毎週末の来場者対応も「森遊会」が担当。「草だらけの廃墟だった姿も知っているから、多くの人が訪れてくれるのが嬉しくて。ここで出会って結婚されたご夫婦もおられるんですよ」。
“森と人をつなぐ場所”として作られたここは今、人と人とをもつなぐ場所へと育っている。
ジョアン・カポーテ
《Nostalgias》
上総川間駅前のスーツケースとレンガでできた巨大な壁。のどかな景色をどこか異国のように変容させる恒久作品には全国から募集した約80のスーツケースが使われている
レオニート・チシコフ
《村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら》
上総村上駅のホームに設置されたロシア在住の作家・レオニート・チシコフの作品。スーツケースに手をかけ、ベンチにうつむいて座る宇宙飛行士が描かれている
レオニート・チシコフ
《三又宇宙基地》
こちらもロシアの作家・レオニート・チシコフの作品で、8駅舎で展開する《7つの月を探す旅》シリーズの1つ。上総三又駅にあるこのロケットは上ることもできる
BACK STORY 02
小湊鐵道の小さな車両は無形の温かさをも運んでいました
週末にアート×ミックスを訪れて小湊鐵道に乗るならぜひ「房総里山トロッコ」を選ぼう。窓のない車両は開放感満点だし、地域の温かさも感じられるから。
まず上総牛久駅で出会えるのは「出張牛久商店街」。大学で都市計画を学んだ小深山徹さんが地元商店街を活性化しようと2018年から始めた活動だ。和菓子店の大福や精肉店のコロッケなど商店街の商品をお盆に詰め、列車の乗客に販売。「町にお客さんが来ないなら駅に乗り込もうと。各店主もこの活動のために新商品やコラボ商品を考えてくれて、今では毎週土・日の販売が定着しています」と小深山さん。
さらに里見駅では、10年以上にわたり活動を続ける地元ボランティア団体「喜動房倶楽部」がお出迎え。下りのトロッコ列車の停車時刻にはホームで手作り弁当、コーヒーなどを販売。週末限定の駅喫茶や駅前の産直品販売所も運営する。「お客様との会話を心がけていて、なかには毎年来られる方も。最近はチバニアンにちなんだ『ニアンもち』や夏のかき氷も人気ですよ」と会長の松本正雄さん。発車時に手を振ってくれる姿にも心がじんわり。
美しい里山と刺激的なアート、そして地域の温かさに触れ、きっと忘れられない旅になる。
KOSUGE1-16
《Heigh-Ho》
高滝湖のほとりに佇む、現代アートを中心にした市原湖畔美術館の入口のある作品。2人組アートユニット KOSUGE1-16による《Heigh-Ho》は肺胞がモチーフになっている
竹腰耕平
《市原の木》
養老渓谷駅から徒歩圏内の旧朝生原小学校跡地に展示されている竹腰耕平の作品。2019年の台風で倒れた樹齢約150年のイチョウの根を地域の人々と掘り出して再生した
小沢敦志
《地熱の扉》
いちはらクオードの森の入口付近に設置された幅約7m×高さ約3mの巨大な鉄のアート作品。市内で集めた鉄廃材を鍛造し、人工物と自然物、過去と未来の境に立つ巨大な鉄扉に再構成
里山や廃校など舞台となる会場からもさまざまなストーリーが伝わる注目の3エリア
[平三エリア]
2016年に閉校した旧平三小学校で12の作品を展開している平三エリア。空間ごと取り込んだスケールの大きなアートを楽しめる
キム・テボン
《ドリームキャッチャー》
宇宙船のような鏡張り空間に入るとライトが点滅しヒーロー気分を味わる作品。空間ごとアートを体験して
栗真由美
《ビルズクラウド》
市原の家や建物を再現して作られた幻想的なインスタレーション。やさしく温かな灯りがじんと胸を打つ
[月出エリア]
山間の元小学校を芸術発信拠点・月出工舎とし、周辺の森や廃屋も表現の場に。14組の作家が滞在しこの地の素材で作品を制作
田中奈緒子
《未来の投影》
学校の机や椅子と壁で異空間を構成した作品。“場”自体も作品に取り込むそのスケールにも圧倒される
竹村京
《修復》
竹村京の作品は、壊れた日用品を蛍光絹糸の刺繍でよみがえらせた《修復》シリーズの中の1つ
[白鳥エリア]
旧白鳥保育所のほか、白鳥公民館、旧白鳥小学校で作品を展示。愛らしい子供たちの気配が伝わる旧白鳥保育所では、「女性作家のアトリエの風景」をテーマに女性作家の7作品が揃う
前田エマ
《エマらじお in いちはら》
旧白鳥保育所の作家選定の一部も行った前田エマが小さなラジオ局《エマらじお in いちはら》を開設。作家との公開収録も予定
高山夏希
《conjunction ー名詞から接続詞へー》
流木や砂で構成した高山夏希《conjunction ー名詞から接続詞へー》。教室からあふれ出すようなエネルギーに満ちた作品
アート以外にも!あわせて楽しみたい市原エリアの素敵スポット
グランピング施設
高滝湖グランピングリゾート
湖畔の元小学校を改装し4月にオープン。星空が眺められるクリアドームテントなど3種の快適なテントがあり、地元の新鮮な食材のBBQ も楽しめる。貸し切り風呂やペットと宿泊できるテントもあり。
タカタキコグランピングリゾート
TEL.047-701-8872
住所/千葉県市原市養老1012-1
定休日/なし
動物園
アニマルワンダーリゾウト
日本最多のゾウが暮らす「市原ぞうの国」と、動物たちと触れ合える「サユリワールド」が3月に名前も新たにリニューアル。新設の「エレファントスプラッシュ」で楽しげに水遊びするゾウの姿に心和む。
アニマルワンダーリゾウト
TEL.0436-88-3001
住所/千葉県市原市山小川937(市原ぞうの国)、771(サユリワールド)
営業時間/10:00~16:30
定休日/不定休
グランピング施設
The Bamboo Forest
「アニマルワンダーリゾウト」に隣接し、竹林の中で動物を近くに感じる非日常ステイができる。冷暖房完備のツリーハウスやテントが6棟あり、キリンと一緒に朝食を食べられる独自のオプションも。
ザ バンブーフォレスト
TEL.0436-63-6277
住所/千葉県市原市山小川790
PHOTO/AYA MORIMOTO TEXT/MIYO YOSHINAGA