日々ロケハンに出かけたり、個人的に旅をしたりしているOZの編集部にとっては、毎日が新しい発見や出会いに満ちた小さな旅。今回はライターNが、山陰のまん中にある、古来より山岳信仰を集めてきた鳥取県の名峰・大山とその周辺エリアへ。自然が織りなす風景を楽しみながら、おいしい空気でリフレッシュ。心身ともに癒される1泊2日の夏旅をしてきました
緑あふれる神秘の山・大山で日常を忘れる
美しくなだらかな山並みが富士山に似ていることから“伯耆(ほうき)富士”とも呼ばれる鳥取県の大山(だいせん)。標高は1729ⅿ。古くから霊山として信仰を集めてきた山陰を代表する名峰で、日本四名山のひとつです。一帯にはブナの森が広がり、自然も豊か。その自然と霊山の神聖な雰囲気が相まって、心も体も洗われるような気持ちよさにあふれています。屋外で過ごすのが気持ちいこれからの季節におすすめのエリア。今回は、そんな大山エリアを中心に1泊2日の旅へ。
大山の中腹では自然に包まれて過ごし、ふもとの町では山の眺めを楽しみながら美術館やパン屋さんめぐり。米子の市街地と島根県安来市にもよりみちして、山陰の定番グルメや観光名所も満喫してきました。東京から山陰地方の玄関口のひとつ、米子空港までは飛行機で1時間30分ほど。週末に気軽に行ける山陰は、日常から離れたリラックス旅をかなえてくれるはず。
1日目_自然を感じながら大山エリアをめぐる
地元のおいしい恵みをパンを味わう
まず向かったのは、大山のふもと、伯耆町(ほうきちょう)の「コウボパン 小さじいち」。「都会から離れて豊かな自然の中で暮らしたい」と、2006年に関西から大山に移住した西村さん夫妻が営むパン屋さんです。地元の契約農家による小麦を中心に、その日に使う分だけ石臼で自家製粉。レーズンなどで自家製酵母を仕込むときも、パンを作るときも、お店の地下に湧く大山の伏流水を使います。素材の持ち味を活かせるよう、基本材料は小麦粉、酵母、塩と、あえてシンプルに。パンに合わせて全粒粉の量を調整するなど、工夫を凝らしたパンは風味が高く、やさしい味わい。口に運んで噛みしめるたびに顔がにやけてしまうおいしさです。
パン工房の隣には、大山を望みながら過ごせるカフェも。おすすめは自家製酵母を料理に使った酵母プレート。酵母液で野菜をマリネにしたり、ドレッシングを作ったり。焼きたてパンとともに、酵母が生み出す豊かなうまみも味わってみてください。
山陰を愛した写真家・植田正治のミュージアムへ
おいしいパンでお腹がいっぱいになったら、次は「植田正治写真美術館」を訪問。植田正治は1913年に現在の鳥取県境港市に生まれた、山陰が誇る世界的な写真家。87歳で亡くなるまで、故郷を拠点に写真を撮り続けました。1階の展示室には、山陰の空や砂丘を背景に、被写体をオブジェのように配した“Ueda-cho(植田調)”と呼ばれる演出写真が多数展示されています。印象的だったのが、家族や近所の子供たちを被写体にした作品。遠近法を用いたり、影の位置にまでこだわったりと、緻密で斬新な構図の中に遊び心がちりばめられ、どれも楽しげ。被写体や山陰という土地へのあたたかな思いが伝わってきました。
こちらの美術館は、植田正治が大好きだった大山が裾野まで望める絶景スポットでもあります。2階にはその大山を館内から望めるスペースがあり、写真撮影もOK。ユニークな仕掛けもあって、写真を撮る楽しさも教えてもらった気分でした。
大山の中腹で日常を感じる思い思いのステイを
宿泊は大山の中腹に立つ別荘型ホテル「大山参道ホテル 頂」にて。「大山の日常を贅沢に体験できる場に」と、2019年11月、大山寺参道の入口に誕生しました。シックかつモダンな70㎡の客室は、ベッドルーム、大きなソファ、キッチンが備えられ、暮らす気分で過ごせる居心地のよさ。バルコニーに出れば、ブナの森の向こうに日本海を望む開放感あふれる風景が広がり、晴れていれば夕陽を見ることも。しかもバスルームやトイレからも自然が望め、心はゆるむばかり。気持ちのいい風景を日常的に見ている地元の人々がうらやましくなりました。
こちらでは精進料理、大山どり料理など地域の食材を盛り込んだ夕朝食を周囲の提携旅館で味わえる食事付きプランのほか、地元のスーパーなどで食材を調達して自分で調理することも可能。近くには銭湯価格で利用できる温泉施設もあります。現在、客室は建物4階をほぼ丸ごと利用した1部屋のみ、1日1組限定。今秋は3階に和モダンな内装の客室は1室できる予定で、こちらも4階と同じくフロア貸し切りで泊まれます。五感で大山のローカルを味わいながらプライベートなステイをぜひ。
2日目_大山で朝さんぽして、海鮮グルメと庭園鑑賞へ
清らかな空気と自然に包まれる朝のひとときを
2日目の朝は、「大山参道ホテル 頂」前からのびる参道を歩いて「大山寺」へ。参道は見上げるほどの上り勾配で、参道入口からその姿すら見えませんが、行ってよかったと思える、清らかな空気に満ちていました。開山1300年、古くから山岳信仰を集めた大山の修験の霊場であった「大山寺」。本尊は地蔵菩薩。木々に囲まれた境内にはかわいらしいお地蔵様の姿があり、神聖ながらもどこか和やかな雰囲気。深呼吸したくなる気持ちよさで、心穏やかに参拝ができました。「大山寺」では、事前に申し込んでおけば、重要文化財の「阿弥陀堂」で坐禅もできます。心を無にして自分と向き合う時間を体験してみるのもいいかもしれません。
併せてお参りしたいのが、「大山寺」の石段左手に鳥居が立つ、明治初頭の神仏分離令によって、大智明大権現の社殿を大山寺から分離した「大神山神社奥宮」。自然石を敷きつめた700mの参道もまた神秘的で、気分を落ち着かせてくれます。
地元の人も通う魚が評判のお店でランチ
日本海に面した山陰を訪れたなら、やっぱり食べたい新鮮な海の幸。そこで、大山を後にして向かったのは米子駅の近くの「和食旬鮮いけよし」。1925年の鮮魚店「池吉水産」の若き4代目が「おいしい魚を手頃に楽しんでほしい」との思いから開いた、昼のみ営業のお店です。
メニューは、店主がその日の朝に市場に出向き、買い付けてきた魚介類を使用した海鮮丼がメイン。なかでもおすすめは、「スペシャル丼(全部のせ)」。その日に仕入れた魚介類が10~15種類盛り込まれ、1杯目は海鮮丼で、2杯目は白ごまのペーストを和えた鯛をお茶漬けで提供してくれます。しかも、アジフライに加え、夏季は岩ガキが付くボリューム。鮮度が高くて質のいい、いろいろな種類の旬の海の幸を味わえるうえ、おなかもしっかり満たされ、満足感たっぷり。12時頃は近隣で働く人々で混み合うので、少し時間をずらして行きましょう!
新しい展示館にも注目の庭園が有名な美術館
ランチの後は、ひと足のばして島根県の安来市へ。大山とはひと味違う緑の美しさを楽しむため、日本庭園が有名な「足立美術館」を訪れました。こちらでは、館内を回遊しながら、趣の異なる多様な庭園を鑑賞できます。主庭の枯山水庭は、背後にそびえる勝山を借景に人工美を盛り込んだもの。樹木の位置はもちろん、その角度や高さも緻密に考えられています。専属の庭師が日々手入れをして、均等の取れた人工美を作り出しているそう。ほかにも窓枠を額に見立てた“生の額絵”、床の間をくり抜いた“生の掛軸”など、仕掛けもユニークな庭園が現れて、日本人としての美意識が高まった気分に。
2020年4月、館内に新設された「魯山人館」も見ごたえたっぷり。最新の技術を取り入れた展示室には、書家、陶芸家などマルチに活躍した北大路魯山人の作品が並び、斬新な感覚に驚いたり、感性の豊かさにときめいたり。さまざまな日本の美に刺激され、癒されるひとときになりました。
もやもやした日常をすっかり忘れさせてくれた、大山の雄姿や清々しい緑。思い切り深呼吸したり、ただただ緑を眺めたり。そんななにげないことも心地よく、心身ともにリラックス。米子で食べた海鮮丼のおいしさ、安来で出会った日本の美にも心が潤って、元気をたっぷりチャージできた1泊2日の旅でした。
大山の1泊2日の旅プラン&アクセス
■1日目
09:25頃 羽田空港発
10:50頃 米子空港着
12:00 コウボパン小さじいちでパンの昼食
13:30 植田正治写真美術館でアート鑑賞
15:00 大山参道ホテル頂にチェックイン
15:30 大山参道付近を散策
17:00 ホテルで夕食・宿泊
■2日目
09:00 大山寺を参拝し、座禅体験など朝さんぽ
12:00 和食旬鮮いけよしで海鮮丼の昼食
13:30 隣町の安来市の足立美術館でアート鑑賞
15:00頃 帰途に就く
■東京から大山町までのアクセス/東京から米子空港まで飛行機で約1時間30分。空港から徒歩8分の米子空港駅へ移動し、JR境港線で約25分、米子駅下車。JR山陰本線に乗り換え約25分、大山口駅下車。大山町内路線大山寺行きバスで約30分、終点下車
■大山エリアの移動のポイント/大山の中腹エリアは徒歩で移動できる
【米子空港・米子~伯耆町】米子空港駅よりJR境港線で約25分、米子駅下車。JR伯備線に乗り換え約15分の岸本駅。または約20分の伯耆溝口駅下車。駅から各スポットへの移動、スポット間の移動はタクシーが便利。または、米子駅から伯耆町までタクシーで約20~25分で移動する手段もあり
【伯耆町~大山町】タクシーで約15分
【米子空港~安来】米子空港駅よりJR境港線で約25分、米子駅下車。JR山陰本線に乗り換え約10分、安来駅下車
INFORMATION OZmall×クラブツーリズムの鳥取大山を巡るコラボツアーが誕生
- イベント名
- <OZmall×女性限定ひとり旅>心ゆるむ鳥取大山でデトックストリップ
- 豊かな自然に包まれた鳥取の大山で深呼吸。目にまぶしい緑や新鮮な空気を感じて過ごす休日を叶えるコラボプランでは、上記で紹介した植田正治写真美術館や大山寺ほか、とっとり花回廊を訪ねて、皆生温泉で宿泊。ベイサイドスクエア皆生ホテルでは、海を眺めつつ美肌温泉と新鮮な魚介グルメを堪能できるのがポイント。プランニングや手配、現地ではバス移動と気楽にひとり旅を楽しめるのでぜひチェックして!
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PR/(一社)中海・宍道湖・大山圏域観光局 PHOTO/AYA MORIMOTO WRITING/MIE NAKAMURA(JAM SESSION)