オズマガジン編集長のトリメキカメラさんぽ 4歩目
オズマガジン編集長の古川が、写真に撮ることで日常のトキメキを記録する「トリメキ」さんぽを始めました。「トリメキ」というのは、カメラマンの川島小鳥さんが日常のキラキラしたものやことを撮影するオズマガジンの連載でした。その「トリメキ」を小鳥さんから引き継いで復活させたのがこの連載。編集長は、愛機の「OLYMPUS PEN E-PL8」(ブラック)を片手に、今日はどこで「よりみち」をしているのでしょうか?
更新日:2017/10/17
東京の駅の数は650以上。よりみちノート片手に予定のないさんぽへ出発
「予定を決めないさんぽ」と写真はとても相性がよくて、数ヶ月前からカメラを持つようになって増えたことは、まさにその「予定を決めないさんぽ」でした。
今年オズマガジン編集部みんなで作ったのが「よりみちノート」というよりみちをログするためのノート。ここには編集部が選んだ東京の30の駅の白地図と、その駅周辺でさんぽのきっかけとなるカフェなど、4カ所の編集部オススメポイントだけが載っています。それ以外、自分でなんでも自由に書き込めるフリースペースで構成された、いわゆるノートです。
なぜ雑誌編集者の僕たちがそんなノートを作ったのか? それはわたしたちは月刊で雑誌を作っていますが、どうしても「銀座」とか「横浜」とか、ある程度大きな駅の特集だけをせざるをえないことに少し違和感を覚えていたからです。東京には650を超える駅があるのにもかかわらず(知っていましたか?)、わたしたちがそこで日常的に降りる駅は、多くても10駅くらいでしかありません。じゃあそれ以外の640の駅はおもしろくないかと言ったら、そんなことは全然なくて、むしろそういう小さな駅にこそおもしろい「よりみち」はたくさんあるんじゃないか? ずっとそう思っていました。だからそれらの駅の地図をノートにして、そのエリアのよりみちは「あなた自身で」作っていってくださいと。そしてよかったらそれを共有して、東京の「よりみち」地図を一緒に作っていきましょうと、そういう思いでこのノートを始めました。
では、どうして「よりみち」なのか?
わたしたちは慌ただしい毎日を過ごしているうちに、「予定を決める」ことでその慌ただしさをマネジメントしています。そしてその予定をルーティンにすることで、日々の生活のリズムを作っています。毎日を快適に過ごすために、わたしたちはそれぞれのやり方で、無意識に自分の時間を区切っているのです。自分の周りを見ても、大人はみんなほんとうによく働いて、毎日頑張っています。
だからわたしたちは、せめてたまにはその「効率や無駄を省く」という価値観をひとやすみして、「よりみちする」ということを、雑誌のコンセプトにしています。
「予定を決めないさんぽ」。今日はPEN仲間でオリンパスの若尾さんを誘い出して、一緒に清澄白河を歩きました。清澄白河は最近はコーヒーの町として知られていますが、美術館があり、公園があり、古くからの工場がある、静かな下町です。
誰かと一緒にカメラを持って歩くと、その誰かのことが少し理解できる
かといって女性と町を歩くと言いながら予定がまるで決まっていないのも不安です。彼女はどんなことが好きなのか? どこに行きたいのか? そんな「とっかかり」をつかむために、僕はよりみちノートにポイントされている4つのスポットから人気のコーヒーロースターを選び、まずは今日のさんぽのリサーチをすることにしました。しかし・・・。
「わたし、コーヒーってあまり飲んだことないんです」
カウンターでオーダーをする瞬間の彼女のひとことで、さんぽのとっかかりを掴むつもりが一気にものすごい冷や汗が噴出です。そもそもコーヒーの町が売り物の清澄白河。誘い出す場所が間違っていたのか? オープンエアのお店の外の空は気持ちのいい秋空が広がって、これ以上ない絶好のさんぽ日和でしたが、急に心に暗雲が立ち込めはじめました。しかしそこに神のひと声。
「うちのラテはコーヒーが苦手な人も気に入っていただけますよ」
ポパイから出てきたような清澄白河シティボーイ風の男性が、カウンターで穏やかに笑って素敵な助け舟を出してくれました。
「あ、美味しい! とっても美味しいです」
ひとくち飲んだ若尾さんの顔が、外の秋空の太陽のように明るくなりました。カウンターを振り返ると、さっきの彼がにっこり笑ってこっちを見ています。
いつもは飲まないコーヒーを、いつもは来ない町のカフェでオススメされて飲む。目の前ですっかりリラックスした彼女が、トーストとコーヒーの写真を撮り始めました。カメラさんぽ、どうやらうまく流れに乗ったようです。僕はほっと胸をなでおろしました。
若尾さんはPENに単焦点レンズを装着していました。僕がつけているのは標準のズームレンズ。聞けば、いろいろ使ってみたけど、対象との距離を自分で調整できるのがおもしろく、自分に合っていると感じているそう。それから背景がぼやけやすいのも気に入っているポイントだとか。確かに写真を撮っていると、自分の流儀とか傾向が少しずつ固まってきます。そしてそれはもしかしたら、無意識的にカメラを使う人と世界の距離の取り方にも通じているかもしれないなぁと、真剣な彼女を見ながらそんなことをぼんやりと考えました。
ふたりでよりみちノートとオズマガジンのバックナンバーの下町特集を見ながら、ひとつだけポイントをノートにマーキング。若尾さんのリクエストは、チョコレートの専門店でした。ここから歩いて15分というところでしょうか。
「薬局の前って、どうしてあの遊園地にあるみたいなオモチャの乗り物があるんでしょうね? これ、20円ですって」
「あ、見てくださいあの人。頭にサムライのカツラ被ってます」
「わ! このメロンパンすごい。すごい食感です」
歩くスピードで町を見渡すと、町にはほんとうにたくさんの「おもしろいこと」が転がっていました。そしてその「おもしろいこと」に出会ったら立ち止まり、町の人に話しかけ、写真を撮ったりすることで、その解像度がどんどんあがっていきます。中にはますますピントが合わなくなっていくものもありますが、それはそれで楽しいのもまた事実。
僕たちは2人とも清澄白河のことをほとんど知らなかったけれど、それでも目にするものがどれも新鮮で、お互い楽しくて、目的のチョコレート屋さんに到着するまでに1時間以上かかりました。撮った写真は数知れず、手には予想外の買い物で荷物があふれています。予定や約束がないから、いくらでもよりみちできる。それはやっぱりものすごい豊かな気持ちでした。大げさに言うなら、目の前に広がっているなんてことのないいつもの午後の世界が、いつもよりキレイに見えるような。
それからそこで感じたのは、若尾さんがカメラを構えるタイミングと、僕がカメラを構える場所は、だいぶ違っているなぁということ。これは新しい発見でした。そしてそれは、いつもひとりでカメラさんぽしていたときには気づかないことでした。
「あぁ、この人はここで立ち止まるんだ」、「ここがキレイだと思ったんだ」って。それは相手を知ることに他なりませんでした。言葉で語るよりもっと饒舌に、写真はその人のまなざしを写します。だからきっと写真は、その人そのものなんだ。そう思いました。
そうやって若尾さんのことを今までより知れたことは、ほんとうに嬉しいことでした。
カメラの中にある写真のすべてが、今日の心の中の景色
ここが下町だから、みんなが親しく話しかけてくれた、ということも確かにあると思います。でもそれとは別に、僕たち2人がカメラを提げて歩いていたというのも、町の人との距離を縮めてくれました。
若尾さんと別れ、カフェに入って2杯目のコーヒーを飲みながら、僕はPENで今日撮った写真を見直しました。そこで僕は自分が思っていた以上に多くの写真を撮っていたことを知りました。同じシーンで何枚もシャッターを押していることも多く、デジタルカメラとフィルムカメラの差はここにあるかもな? と、ふと思いました。デジタルカメラはSDカードの容量がいっぱいにならない限り撮り続けられて、撮った写真もその場で確認できる。でもフィルムカメラで写真を撮るときは枚数が決まっているうえ、現像しないと確認ができない。僕は同じシーンの写真を消そうとして、思いとどまりました。たくさん撮ったってことは、たくさん興味を惹かれたということ。今日のカメラロールは、きっと今日の自分の感情の動きなんだ。
僕はその場でPENのWi-Fiとスマホを接続して、写真を転送しながら(メカに弱い僕でも簡単にできる)これをよりみちノートに貼ろうと思いました。そうだ。地図のある最初の見開きは自分の手書きでよりみちをログするページ。次のまっさらな見開きは、写真を貼ることにしよう。僕は最初のページを書き始めました。
冬が近づいた町はいつのまにか夕方の光でオレンジ色に染まっていて、ノートを書いたら僕はどこかでビールでも飲もうと思いました。
IN STYLE with OLYMPUS PEN E-PL8
いつもチェックしているPENのサイト「SWEET PHOTO」の中にあるこのページは、PENを持っている人はもちろん、まだ持っていない人にこそ見てほしいサイトです。スマートフォンでこれだけきれいな写真が簡単に撮れる時代に、あえてカメラを持ち歩くということ。写真を撮るツールとしてだけでカメラを捉えず、自分のスタイルとして捉えること。このサイトはそれを教えてくれます。よく雑誌の特集で「あの人のカバンの中身」という特集がありますよね? それを見るたびにスタイルのある人のカバンの中には、スタイルのあるモノが入っているなあと思うことがありますが、このページはそれに近い感覚をおぼえます。機能としてのPENのポテンシャルの高さはもう実感としてよくわかっていますが、自分がPENを持ち歩いている理由のもうひとつはこの「自分のスタイル」を表現してくれるものでもあるからだと思います。ぜひいちどチェックしてみてください。
みなさんの #トリメキ 投稿。今月の4枚
「みなさんの日常の中のトキメキを写真にして、#トリメキ をつけて投稿してください」と呼びかけたところ、本当にたくさんのすばらしい写真が集まりました。どうもありがとうございます。みなさん本当に写真が上手で僕なんて当然足元にも及びませんし、編集部でもセレクトが難しいほどの力作が揃いました。今回選ばせていただいた4名の方にはプレゼントをお送りさせていただきます。僕もがんばります。
みなさんも日常の中で撮影した #トリメキ写真を、インスタグラムでぜひアップしてみてください。#トリメキ をつけて投稿していただければと思います。引き続き投稿いただいた中から毎月4名の方の写真を編集部で選ばせていただき、こちらのページで紹介させていただきますね。紹介された方には、写真が楽しくなるグッズをプレゼント。11月の最終回はカメラもご用意しています。オリンパスの公式インスタグラムsweetphoto_olympusもフォローしてみてください。オリンパスのカメラで撮影された写真が投稿されています!
雑誌OZmagazineは、日々の小さなよりみち推奨中。今日を少し楽しくする、よりみちのきっかけを配信していきます。