オズマガジン編集長のトリメキカメラさんぽ 3歩目
オズマガジン編集長の古川が、写真に撮ることで日常のトキメキを記録する「トリメキ」さんぽを始めました。「トリメキ」というのは、カメラマンの川島小鳥さんが日常のキラキラしたものやことを撮影するオズマガジンの連載でした。その「トリメキ」を小鳥さんから引き継いで復活させたのがこの連載。編集長は、愛機の「OLYMPUS PEN E-PL8」(ブラック)を片手に、今日はどこで「よりみち」をしているのでしょうか?
更新日:2017/09/19
モネが咲かせられなかった青い睡蓮に会いに
こんにちは。1ヶ月ぶりです。先月カメラを持って鵠沼海岸を散歩したときはまだ明らかに夏でしたが、今年は残暑がほとんどなく、9月の声を聞いた瞬間に東京は秋の装いです。お元気ですか? このページでみなさんの日常のトキメキを撮影して、#トリメキ で共有してくださいとお誘いしたところ、ほんとうにたくさんの写真がインスタグラムに上がり続けています。そしてみなさん写真が上手で本当に参考になります。自分の写真を見るたびにここにアップすることをためらいますが、めげてばかりでは上手くならないので、今日もカメラをカバンにしまって出かけようと思います。
でもそうすると、日常がいつもよりキレイに見えてきて、いつのまにか自分が世界のキレイなところを探していることに気がつきます。それがカメラを持つようになって僕がいちばん感じていることです。カメラは写真を撮るためだけのものじゃないのかもしれませんね。そしてもうひとつカメラが僕たちにくれるものがありました。今日はそのことを書こうと思います。
高知県の東部。北川村という小さな村に「モネの庭」という庭があります。言わずと知れた印象派の巨匠であるモネの晩年の作品の多くは、庭の睡蓮を書いたものでした。そのモネが描いた睡蓮の庭の世界が、そのままと言っていいほど忠実にこの庭には再現されています。この庭は、モネを多数所蔵するフランスの本家モネ財団が世界で唯一公認しており「モネがジヴェルニーに作り出した庭の精神を完全に表現している」とまで言わしめました。そのくらい美しい庭なのです。
睡蓮という花は午前中に咲き、午後にはだんだんその花を閉じていきます。僕は高知市内を朝早く出発して、10時過ぎにはモネの庭に到着(高知市内からは車で1時間と少しというところでしょうか)しました。もちろん写真を撮るためです。
しかし細い道を抜けてその睡蓮が咲く花の庭に着いた時には、そこにはすでに数人の先客が長いレンズをつけたカメラで睡蓮の写真を撮っていました。聞けば今の季節は、生前のモネがジヴェルニーで咲かせることのできなかった青い睡蓮が、沼の中で咲いているということでした。
僕は彼らの邪魔をしないように少し離れたところからカメラを構えました。でもどうしてもやはり先客の位置が写真のベストなポジションのようです。僕は少しずつ迷惑でない範囲でその距離を詰めながら撮影を続けていました。
「あ、すいません。どうぞ。僕はもう撮りましたから」
その若い男性は僕に気づくと、僕にベストポジションを譲ってくれました。僕は彼にお礼を言うと、彼はにこっと笑ってその場を離れて歩いていきました。それは花みたいにいい笑顔でした。
写真以外にカメラが僕たちにもたらしてくれるもの
庭を奥まで歩いていると、こんどは向こうから睡蓮の切り花を抱えた庭師がやってきました。立ち止まって「写真を撮ってもいいですか?」と尋ねると、彼は快くその花を見せてくれて、ていねいに説明までしてくれました。聞けばその花は押し花の先生のところに持っていくのだそうです。
写真を撮っているあいだ、僕はその庭師の方と睡蓮の花についてお話をすることができました。言葉の端々から彼がこの庭のことが好きなのだということが伝わってきました。そして手入れの行き届いたその庭の美しさは、そのような愛情や誇りによってなりたっているのだということがわかり、その庭を見る目が少しだけ変わったような気がします。
僕らは自分が目に見えているものがすべてだと思いがちです。でもその目の前のものはそのもののほんの一部分でしかないということを、僕たちはすぐに忘れてしまいます。この庭の美しさは、たゆみない努力によってもたらされた均衡なのです。
写真も今しか切りとることはできませんが、本当にいい写真はそこに映っていないものの気配をとじ込めることができているような気がします。もちろん今の僕にはそんな写真は撮れませんが、いつか撮れる日が来たらいいなと思います。
おそらく僕がスマートフォンのカメラを向けていたら、あるいはスマートフォンの画面を見ながら歩いていたら、その会話はなされなかったと思います。僕にボジションを気持ちよく譲ってくれたあの青年も、僕がカメラを持っていたからやさしく声をかけてくれたのではないでしょうか。
そう。カメラを持っていると、それがコミュニケーションの入口になることがとても多いのです。カメラをきっかけに会話が生まれる。カメラを持つことで、相手の気持ちを慮ることができる。助け合うこともできる。
もちろんすべてがそうじゃないということはわかっていますが、それでもそれは真理だと思います。カメラは写真を撮るためだけではなく、コミュニケーションのツールにもなるものなのです。
旅カメラで地方の日常の風景をとじ込める
モネの庭がある北川村は、歩きたくなる道がたくさんありました。
ここは日本有数の柚子の生産地で、町は色づく準備をした果実がたわわに実っています。この実たちもあと少しで真っ黄色になり、この村を明るく色づかせるでしょう。
「秋になると村が黄色くなって、柚子のいい匂いがしゆう」
村の方は土佐弁でそう教えてくれました。次はカメラを持って秋の村の風景を撮ってみたい。広角レンズを持って来よう。そんなふうに、旅とカメラはどんどん切り離せないものになっていきます。
アートフィルターを使ってみたり、絞りを優先にして奥ゆきを意識してぼかしてみたり、マクロレンズで対象に寄ってみたり。歩いているとどんどん写真が増えていきます。そして行く先々で声をかけられました。
「兄ちゃんなにしゆう?(なにしてるんだい?)」という具合に。
繰り返しになりますが、おそらく普通に歩いていたらさすがにそんな声をかけられることはまずないと思うのです。でも、カメラを持っているだけで、こんなに人や町との距離が縮まる。それは本当に楽しい新発見でした。
そもそも僕はひとり旅が大好きであちこち旅をしています。でも今まではあまり人と話すことも少なく、どちらかといえばひとりで静かに旅先での日々を過ごしていました。でも、PENを持つことでそれが少しだけ変わっていく予感がしています。
そこを歩き、その場所で誰かと言葉や気持ちを交換して、その先にある自分の写真がどんなものになっていくのか? スキルというよりも、そういう自分自身の変化が写真にどうなって現れていくのか? それがとても楽しみになってきました。次はどこに旅に出ましょうか。
また1カ月後にお会いしましょう。
SWEET PHOTOを使って写真加工を楽しんでみました
SWEET PHOTOのDeco Photoを使って写真加工をしてみました。操作性もよく、メカに弱い僕でもさくさく使えてとても楽しかったです。なにより嬉しかったのが写真に文字が載せられること。それから文字のフォントが本当にたくさんの中から選べること。
露出や明るさが思ったようにいかなかった写真にフィルターをかけて良い雰囲気にすることもできます。気づいたらいろいろな写真を加工していました。
#トリメキキャンペーン中なので、インスタで写真をシェアするのも楽しいですが、SWEET PHOTOのPhoto Galleryでは、写真を投稿できる他、投稿写真を観ることもできるのでレベルの高い皆さんの作品をチェックできます! 他にはブログの読み書きができるコンテンツもあるので、写真はSNSですぐにシェアして、その写真への思いはブログでていねいに語るなど使い分けてみても良いですね。
みなさんの #トリメキ 投稿。今月の4枚
「みなさんの日常の中のトキメキを写真にして、#トリメキ をつけて投稿してください」と呼びかけたところ、本当にたくさんのすばらしい写真が集まりました。どうもありがとうございます。みなさん本当に写真が上手で僕なんて当然足元にも及びませんし、編集部でもセレクトが難しいほどの力作が揃いました。今回選ばせていただいた4名の方にはプレゼントをお送りさせていただきます。僕もがんばります。
みなさんも日常の中で撮影した #トリメキ写真を、インスタグラムでぜひアップしてみてください。#トリメキ をつけて投稿していただければと思います。引き続き投稿いただいた中から毎月4名の方の写真を編集部で選ばせていただき、こちらのページで紹介させていただきますね。紹介された方には、写真が楽しくなるグッズをプレゼント。11月の最終回はカメラもご用意しています。オリンパスの公式インスタグラムsweetphoto_olympusもフォローしてみてください。オリンパスのカメラで撮影された写真が投稿されています!
雑誌OZmagazineは、日々の小さなよりみち推奨中。今日を少し楽しくする、よりみちのきっかけを配信していきます。